相次ぐアメリカ人観光客の不審死、ドミニカ共和国で何が起きているのか?

初期の検視報告を受けてドミニカ共和国国家警察が発表した声明によると、シュワップ・ウェルナーさん同様デイさんとホームズさんにも、肺水腫および呼吸不全がみられた。また2人のうち1人は、シュワップ・ウェルナーさんと同じように持病を抱えていたことも判明した。ホームズさんの検視結果によると、彼は心肥大、肝硬変を患っており、血圧の薬を服用していたという。また客室からはオキシコドンの瓶が発見された。

ドミニカ共和国のフランシスコ・ガルシア観光大臣は当初、これらの死に関連性はないと否定し、渡航しても危険はないと強調した。だがデイさんとホームズさんの死体発見後、死亡時に3人の観光客の肺に水が溜まっていたという検視結果をうけ、捜査官は3件に関連性がないかどうか調べている。

ウォレスさん、シュワップ・ウェルナーさん、デイさん、ホームズさんの死はすべて2カ月という期間で起きた。これに加え、昨年は少なくとも2人の観光客がドミニカ共和国で不審な死を遂げているとCBSニュースが報じている。いずれも、場所はバイーア プリンシペ系のホテルだった。イヴェット・モニーク・スポートさん(51歳)は2018年6月、プンタカナのバイーア プリンシペで心臓発作を起こして死亡。聞くところでは、彼女もまたミニバーを利用していたという。さらに昨年、デヴィッド・ハリソンさん(45歳)も、プンタカナのハードロック・ホテルに滞在中に心臓発作と肺水腫で死亡した。去る4月、ウォレスさんが亡くなったのとの同じホテルだ。

「訪れたときは円満な家族だったのに、帰国するときは遺族になってしまいました」と、妻のドーン・マッコイさんはメリーランドのニュース報道局WTOPに語った。「私は未亡人として、12歳の息子は父なし子として帰宅したのです」

またIWasPoisoned.com によると、3月以降ドミニカ共和国では、観光客が食中毒の症状を訴えるケースが70件近くにも上っていたという。そのうち半数以上が、プンタカナのハードロック・ホテル&カジノの宿泊客だった。

ホームズさんとデイさんが死亡したのと同じグランド バイーア プリンシペ ラ・ロマーナ リゾートに宿泊したコロラド州のカップルも、滞在後激しい不調を訴えた。2人は医者から「有機リン酸系中毒」、つまり一部殺虫剤で使われる化学物質の中毒にかかった可能性があると言われた、とCNN系列のKMGHに語った。

・ドミニカ共和国は安全なのか?

現在のところ、答えは暫定的にイエスといったところ。アメリカ国務省は去る4月、ドミニカ共和国への旅行者に対し、レベル2の渡航注意報を発令した(ちなみに渡航注意報は全部で4段階あり、レベル2は「警戒強化」)が、これは「武装強盗や殺人、性的暴行などの暴力犯罪」に対する警戒によるもので、疾病への危険からではないとみられる。

フランシスコ・ガルシア観光大臣はこれらの死亡事件を「個別の事件」として関連性はないと否定し、渡航しても安全だと強調した。安全保障の専門家もこの見方に賛同しているようだ。「ことさら危険な場所ではありません」と、安全保障団体インターナショナルSOSのディレクター、マシュー・ブラッドリー氏はタイムズ誌に語った。「ドミニカ共和国は安全な渡航先と考えていいでしょう」

ドミニカ共和国では観光業が非常に盛んで、毎年200万人近いアメリカ人が同地を訪れている。2014年の資料によると、観光業はGDPのおよそ17パーセントを占めている。

Translated by Akiko Kato

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