モー娘。ライブの舞台裏 スイッチャーが狙う「ベストな画」

モーニング娘。’19の小田さくら(中央)(©UP-FRONT PROMOTION)

20周年イヤーを駆け抜けてきたモーニング娘。’19が、令和初となるシングル「人生Blues / 青春Night」をリリースした。Rolling Stone Japan vol.06に掲載された特集「スタッフとメンバーが初めて明かすモーニング娘。’19 ライブの舞台裏」の中から、今回はスイッチャー担当・松永一正 (ヒビノビジュアル)氏の記事をお届けする。

モーニング娘。’19のコンサートに欠かせない大型ビジョンは、会場の奥までメンバーの熱いパフォーマンスを届けるためには欠かせない存在だ。スイッチャー松永氏の仕事は、ビデオカメラで撮影された映像をリアルタイムで切り替えること。ベストな画を届けるために、彼は綿密な準備をした上で現場に臨む。℃-uteやBerryz工房との仕事を経て、約1年前に前任者からバトンを受け取った氏に話を聞いた。

「カット割り」のプロセス

ー松永さんが担当している仕事の内容を教えてください。

モーニング娘。’19のコンサートには基本的に3カメがついていて、ステージ前に2台、客席後方に望遠のカメラが1台あります。僕の仕事としては、まずツアーが始まる前に行われるスタジオでのゲネプロを見て、そこで撮った映像を確認し見ながらカメラのカット割り、つまりこの場面ではどのカメラが誰を撮るのかといったことを1曲ごとに決めていきます。そして、本番ではそのプランにしたがって3つの映像をスイッチングして大型スクリーンに映し出します。さすがにカット割りは全部覚えられないので、事前にメモしたものを手元に置いています。本番をやってみて「これは無理やな」と感じたところは直すこともあります。武道館公演だと、カメラはさらに3台くらい追加されますね。

ー3台も増えると、やり方も大幅に変わりますか?

基本的にはホールツアーをまわっていた3人のカメラを使いますね。あと、武道館だとメンバーが一列に広がったりすることがあるので「これはこのカメラで撮らないと無理だね」みたいな話し合いをしながら修正していきます。

ー1曲分の構成を組むのにどれくらい時間がかかるんですか?

早くて20分くらい。考え込むと1時間では終わらないですね。

ー時間がかかるのはどういうときですか?

変なこだわりが出るときですかね(笑)。「この画だとあんまり面白くないかな」「この子は2カメじゃないと上手く撮れないから……」みたいな。

ーうまい具合にカメラを振り分けたいと。

そうですね。カメラマンも流れを覚えて撮りますからね。一応、僕のプランをプリントアウトしたものは置いてあるんですけど、カメラマンは凄いと思いますね。

ーメンバーの映し方に関しても指示を出しているんですか?

はい。アップはアップでも、画面のなかで斜にずらしたりとか。あとはフォーカスイン、アウト。バラードの曲はフォーカスをずらしておいて、ゆっくりフェードインとか。

ー楽曲によっては、細かくつなぎすぎると曲の雰囲気にあわなくなったりもしますよね。

そうですね。速い曲ならカットが多くてもいいと思うんですが、じっくり見せたい曲は長くします。僕の前任者は長く顔を見せるのを得意としていたようですが、僕は同じ人を映すとしてもアップのあとに違うカメラでルーズな絵を差して、もう一回アップに戻す……ということをよくやります。お客さんからしたらそういう画はいらないのかなと思ったりもするんですけど。

ースイッチングで苦労する点は?

やっぱりカット割りかな。これができたらほぼできたようなものなのですけど、この事前作業が一番大変です。

ー現場ではどうですか?

現場では一回やってしまえば……修正がでることもあるとしてもほぼできあがってはいるので、いつもツアー初日には完成形に持っていきたいと思ってます。一本目だからしょうがない、というのは嫌で。お客さんはそんなこと知らないですから。

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