星野源×トム・ミッシュ対談 音楽に正直であり続けるための方法

星野源とトム・ミッシュ。2019年5月28日、都内某所にて撮影。(Photo by Masato Moriyama)



これまで聴いた音楽から自然と出てくるものがオリジナリティ

トム:「Pop Virus」のビートは、本当にすごくカッコいいよね。プロダクションが丁寧で素晴らしかったし、何より音の選び方がいいなって思った。あと、ストリングスは生だよね? あの音の処理の仕方とか興味深いなって。何回も聴いちゃった。最初にも言ったけど、とにかくキャッチーでいいよね。メロディーが耳に残る。

星野:ありがとう。僕がトムの音楽を好きになったのは『Geography』の音が良かったのはもちろんなんだけど J・ディラやディアンジェロ、ケイトラナダ、RHファクターみたいな人たちの影響を感じさせつつ、自分の音に昇華しているそのトムのセンスが素晴らしいと思ったんだ。コードのチョイスとかメロディの切なさもツボにハマったし。トムみたいにビート・メイカーとギター・ヒーローを両方やってみせる人って僕はあんまり知らなくて。そういう新しい存在が、こういう音楽をやってるってところが僕はすごく好きだなって思った。

トム:すごく嬉しい。源が挙げてくれたアーティストはみんな大好きなんだ。僕はあんまり作詞に自信がなくて。自分のことをリリシストだとは思ってない。歌詞っていうよりはコードやメロディー、あるいはハーモニーにこそ、自分の感情が素直に出てると思うんだ。だから、自分はジャズが好きなんだと思うんだよね。言葉なしで感情が伝わる感じが。

星野:うん、すごくよくわかる。あ、あと、僕はトムの声が大好きだよ! 小さい頃に聴いたチェット・ベイカーを思い出して。

トム:あぁ、それは嬉しいな。僕もチェット・ベイカー大好きなんだよ。彼が今も生きてたらなぁ……。

星野:本当だね……。


Photo by Masato Moriyama

トム:源はライブで演奏していて特に楽しい曲とかはある?

星野:やっぱり「Pop Virus」はやってて、すごく楽しい。お客さんがみんな歌ってくれて。

トム:5万人が歌うんでしょ。すごいね。

星野:ふふふ(笑)。そういえば、さっきJ・ディラとかトムが好きなアーティストの話をしたけど。僕も彼らのことは大好きで。そういう人たちの音に影響を受けて、自分の作品にするときにトムが心がけていることってなに?

トム:うーん、そうだね。あんまり意識はしてないんだけど、音楽をたくさん聴くようにはしてるかな。音楽好きでいることが何より大事で。これまで聴いた音楽の中から自然と出てくるものがオリジナリティだと思う。プロダクションの新しいアイデアとか、新しい音探しとか、そういうものも全部音楽をたくさん聴くことから産まれてくるから。

星野:あぁ、そうだよね。めちゃくちゃわかる。

トム:それと何よりも大切なのは、好きなアーティストたちのやり方をただコピーするだけにならないように気をつけてる。ケイトラナダが楽曲で使ってるテクニックや要素を、そのまんまやったらそれは彼の曲になっちゃうから。例えば、僕はドラム・サンプルとかはケイトラナダが使ってるのと同じものを使うこともあるんだけど、自分の曲に入れるときは全部処理の仕方を変えていて。同じ音にならないようにしてるね。

星野:やっぱり真似はダメだよね。僕もそう思う。自分のフィルターを通して表現しないと。

トム:100%、同意するよ。


Photo by Masato Moriyama

星野:僕は去年、自分のオーディオ・セットを新調して。名盤と言われるレコードばっかり集めてたんだよね。音がいいから。

トム:そういう名盤って、なぜかデジタル・データより音がいいよね。理由はよくわからないんだけど(笑)。

星野:そうそう(笑)。でも、トムのアルバムをレコードで買って聴いたときに、なんていい音なんだろうって驚いたんだよね。プログラミングが中心の音楽で、こんなに生の暖かさと人間味とグルーヴが出るんだって。

トム:ありがとう。源が言ってくれたみたいにエレクトロ・ミュージックが持つ勢いみたいなものは保ちつつ、生楽器の音を活かすことは意識してるな。『Geography』では音に温かみを出すためにレコードやテープの音を再現するためのプラグインは使った。あと80年代の音楽をよく聴くんだけど、アナログ機材を使って録っているあの時代の音は参考にしたね。源はサウンドの研究とかしたりする?

星野:あ、そうそう。僕もね、『POP VIRUS』を作る時にはいろいろ研究した。なぜかミュージシャンの間だけに流通する、とあるソウルの名曲のパラ・データっていうのがあって。そのストリングス・パートだけを聴いて、研究したんだ。「スタジオの広さはどれくらいだろう?」とか想像して、それを参考にスタジオを選んだりした。

トム:すごくいいアイディアだと思う。ってことは『POP VIRUS』のサウンドはソウル・ミュージックのプロダクションの影響を受けているんだね。

星野:うん。日本のスタジオって音が響くところが多くて。ああいう昔のソウル・ミュージックみたいなタイトな音が録れないんだよね。だから、ドラムを録る時もすごく工夫して録ってた(笑)。

トム:あぁ、確かに。そういう音する。最近、イギリスで入ったスタジオにめちゃくちゃ音にこだわるエンジニアがいて。彼は7時間ぐらいマイクのセッティングに時間かけててさ。そのせいで、その日やろうと思ってたことがほとんどできなかったんだけど(笑)。サウンドはもう最高で。ディテールにこだわることって本当に大事だよね。

星野:うん。そういう音楽的な追求とか研究がすごく好きで。いっぱい時間をかけて録音したのが、あの『POP VIRUS』ってアルバムなんだ。

トム:源はラッセル・エレバードってエンジニアを知ってる? ディアンジェロとかRHファクターの作品をレコーディングした人なんだけど。彼はまだ現役でやってて、すごくいいんだよ。ストリングスの処理とかも最高で。気にいると思うなぁ。

星野:手がけた作品は聴いてると思うんだけど、知らなかった。調べてみる!

Translated by Kazumi Someya

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