ベースはリズム楽器としてカウントされますが、打楽器と違って音価をコントロールすることができます。林立夫は細野晴臣のベースについてこんな発言をしています。
「個人的なことでいえば、ドラムっていう楽器にとって、ベーシストはとても大切なんです。ドラムってのは音符の長さを調節できないから、その長さを調節するのがベースなんです。その長さが、自分にとってすごく心地よい人が細野さんなんですよ」(『ロック画報』14 ブルース・インターアクションズ 2003年)
ドラムとベースが協力してリズムを組み立てていく際に、ベーシストの音価コントロールは非常に重要なものになります。「Evan Finds the Third Room」の2拍目はベースが休符ですが、ドラムはそこでスネアを叩いています。いわゆるバックビートです。「A」と「A’」において、ベースが1拍目の音価を弾き分けることにより、バックビートの聴こえ方が変わったように感じられます。「A’」のほうは音価の長いベースの音が消えるとともスネアが「タン!」と響くのでハッとさせられます。ベースの緊張感が緩和されて油断したところにスネアが現れるからドキッとします。膝カックンみたいなものです。ベースのミュートのタイミングが雑でバックビートをマスキングしてしまった場合、同様の効果を得ることはできません。
ベースにはドラムが奏でるリズムに陰影をつける照明係のような役割があります。
ローラ・リーはドラムの輝かせ方を心得たベーシストだといえましょう。
初回ということで力が入って長くなってしまいましたが、今後もリズムについてあれこれ述べていきたいと思います。タイトルは先述の「下半身モヤモヤ」からのいただきです。サブタイトルの「パンツの中の蟻を探して」という文言はJBの「I Got Ants In My Pants (And I Want To Dance)」という曲にひっかけています。パンツ(厳密にいうとズボン?)の中に蟻がいたらムズムズして動かずにはいられないはず。我々をムズムズさせる蟻の居所を探っていこうという企画になっています。
次回以降もお付き合いいただけると幸いです。
FUJI ROCK FESTIVAL’19期間:2019年7月26日(金)27日(土)28日(日)会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場※クルアンビンは7月28日(日)に出演オフィシャルサイト:http://www.fujirockfestival.com
鳥居真道
1987年生まれ。「トリプルファイヤー」のギタリストで、バンドの多くの楽曲で作曲を手がける。バンドでの活動に加え、他アーティストのレコーディングやライブへの参加および楽曲提供、リミックス、選曲/DJ、音楽メディアへの寄稿、トークイベントへの出演も。Twitter :
@mushitoka / @
TRIPLE_FIRE