PAELLAS、「良い音」を追求したサウンドメイキングの裏側

ープロダクション面ではどんな音楽をリファレンスにしたんですか。

bisshi 僕らが100パーセント生バンドの音楽をリファレンスにすることって、たぶん最近は少なくなってきてるよね? 実際、いま欧米でヒットしているポップスを聴いてると、完全に生演奏の音楽ってほぼないような気がするし、僕らもそこに影響されてるんじゃないかな。

ー同時に今作はギターがかなりフィーチャーされてますよね。個人的に思ったのは、これはケヴィン・アブストラクトとかスティーヴ・レイシーといった昨今のソウル/R&Bの流れを踏まえたアプローチでもあるのかなと。

Ryosuke たしかに今作はギターに寄りましたね。前作はシンセサイザー主体だったけど、今回はギターがメインと言っていいと思う。実際、それは今のポップスの流れを汲んだところもあるし、もともと僕らが好きな感じでもあるかなと。

Anan ハーヴィー・サザーランド(Harvey Sutherland)にしても、オマー・アポロ(Omar Apollo)にしても、モーモー(MorMor)にしても、最近はギターでつくった曲をDAW上で構築していくソングライターが増えてますよね。個人的にもそういうアーティストがいいなと思ってたので、多分そこは今回のアルバムにもリンクしてます。特に「Ride」や「mellow yellow」にはその感覚が表れてるんじゃないかな。











ーちなみに、パエリアズのみなさんはスタジオでのセッションとDAW上での作業だと、どちらに時間をかけているのですか。

Ryosuke そこは説明がすごく難しいところですね。とりあえず僕とAnanのコンビでつくった曲に関していうと、半々かな。Ananの家にドラムがあるので、それに僕がマイクを立てて、Ananはそれにギターやシンセを合わせていくようなやり方なので。

Anan そこから構成を考えたり、新しいセクションを追加していく作業はDAW上でやるっていう。

ーいずれにしても、今回のアルバムは過去作と比べてもサウンドが一際リッチになりましたよね。曲や歌唱のムードとも相まって、グッと洗練された感じがするし、バンドの音楽的な進化を感じます。

Ryosuke 音をよくしていきたいという気持ちは常にあるんです。録り終わったあとにもっとよくしたいなって思うし。

Anan 僕は進化というよりも、毎回が変化でしかないと思ってて。過去作のアーカイブを聴き返せば、それもまたそれで発見があるし、とにかく毎回ちがうことをやりたいので、それに応じてエンジニアさんやレコーディングの場所、あるいは方法論を変えてみるっていう。とにかくそれの繰り返しですね。

ー今作のレコーディングにおいて最も重要だったポイントを挙げるとしたら、それは何になりますか。

Ryosuke いちばん大きかったのは、アナログ・テープで録ったことですね。もちろんアップデートされたところは他にもたくさんあるんですけど、それでも今回のポイントはそこだったと思う。ノイズなんかも含めて、アナログ・テープで録ることの良さってやっぱりあって。そのおかげで今回のアルバムでは生楽器を全面に出せたんじゃないかな。

Anan 単純にテープ録音はずっとやりたかったんです。アナログ・テープで録った音楽には好きなものがたくさんあるし、それが自分たちにもやれるのであれば、それをやらない手はないなって。

Ryosuke 実際、そのおかげでギターの空気感にも顕著に奥行きが出たので、ホントやってよかったと思います。もう、録ってる音をその場で聴いてる時点で気持ちよかったし、歌もぜんぜん変わったと思う。デジタルだと無駄だと思われていたところが、アナログだと無駄じゃなくなるというか。

ー歌い手としての手応えはいかがですか?

MATTON(Vo) すごくやりやすかったです、ようやく自分でも聴けるヴォーカルの質感にしてもらえたなって。

ーというのは?

MATTON あんまり好きじゃないんですよね、自分の声を聴くのが。こういうのってオケとか最終的なミックスなんかも含めたすべての兼ね合いだと思うんですけど、そのなかで自分の声の成分としてあまり好きになれないところが毎回でちゃってたんです。作品の出来とは別として、そういう個人的にいつも思うようにならなかったことが今回はなんとか出来たので、完成したものを自分で聴いてもあまりイヤな気持ちにならないかなって。

bisshi  今回はミックス段階での加工がうまくいったってこと?

MATTON いや、単純にローの部分をとにかく削りたかったんだよね。ふくよかに音の厚みをだそうとすると、ふつうはローを出すじゃないですか。でも、僕は自分の声のローがあまり好きじゃないので、今回は録る時点でそこをかなり削って、質感をカリッとさせたかったんです。そのほうが作品の雰囲気にも合ってると思ったし。

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