実録犯罪ものが好きな人が集結するイベント「クライムコン」とは?

O.J.シンプソン事件の元担当検事、クリス・ダーデン氏も今年のクライムコンに登壇予定。(Photo by Nathan Congleton/NBC/NBCU Photo Bank/Getty Images)

実録犯罪ものを扱うメディアは対外的な運動にも積極的だ。ポッドキャスト「My Favorite Murder」は、警察によるレイプキット検査の常時実施を求めるNPO団体End the Backlogへの寄付をリスナーに呼びかけているし、「Crime Junkie」のアシュレー・フラワーズは、中央インディアナ犯罪撲滅団体の理事を務めている。「The Murder Squad」は、リスナーが未解決事件の解決にあたるというポッドキャストだ。

それらと同様に、6月7日から9日にかけて米ニューオリンズで開催される「クライムコン(CrimeCon)」も、ピエロのコスプレ姿の人々が集うどこぞのおどろおどろしいホラー祭りとは違う。

事実、イベントの創立者ケヴィン・バルフ氏はその手のコスプレを禁じ、イベント参加者が必要以上に血しぶきのグラフィックが描かれた看板など、グロいものを目にしないことを約束している。テーマのドラマ性を堪能するよりもむしろ、被害者のための教育、行動、正義を推進するのがこのイベントの目的だ。

幼いころから『全米警察24時コップス』や『デイトラインNBC』を見て育ったバルフ氏は、自ら経営する会社Red Seat Venturesを通じて2017年にクライムコンを立ち上げた。ちょうど『ザ・ジンクス』『殺人者への道』といったTV番組や、ポッドキャスト『Serial』など、犯罪をテーマにしたメディアが再び注目を集めた時期だった。

「結局のところ、こうしたストーリーは人間ドラマなんです。特にこの世界は、終わりのない物語にあふれている。人々は、そこに興味をそそられるんです」とバルフ氏は言う。だが、「専門家をお呼びする際は、単に事件について話すだけでは終わらないようにしています」とも付け加えた。

イベントでは、冤罪やNPOイノセンス・プロジェクトから、死刑判決はたまた検察官の1日の生活まで、幅広い話題を提供している。今年は3500人が参加する(バルフ氏は約8割が女性だと踏んでいる)ストーカーをテーマにしたパネルディスカッションを行う。司会を務めるのはストーカー規制法の支持者と、ポッドキャスト『Dirty John』やTVでおなじみのテラ・ニューウェル氏だ。彼女自身も、母親が結婚したソシオパスに襲われた経験を持つ。

全部で55のセッションには、社会正義研究の教授を交えたブラック・ダリア殺人事件の検証や、ポッドキャスト『Wine and Crime』の公開収録、25年前のO.J.シンプソン事件の元担当検事クリス・ダーデン氏を迎えての回想トークや、K-9のデモンストレーション、かの有名なゴールデンステート・キラーのポール・ホールズ刑事との犯罪現場の再現などが予定されている。

バルフ氏は、ストーカーのパネルディスカッションのようなセッションをもっと企画したいと考えている。いまでも心に残っているのは2018年のプログラムだ。その前年、インディアナ州のデルフィで起きた殺人事件で殺された。2人のティーンエイジャーの遺族がディスカッションに登壇して捜査について語り、情報提供を募った。結局いまも犯人は捕まっていない。「遺族はこう言いました……私たちは未解決のまま事件を終わらせたくない、何千人もの参加者のソーシャルメディアのアカウントを使って、(被害者の)名前が話題にのぼるようにし続けたいのだと」とバルフ氏。「もっとこういうことができれば、こうしたカンファレンスがいかに有用で、真の正義と遺族の心の整理をもたらすことができるのだとお分かりいただけるでしょう」

Translated by Akiko Kato

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