メジャーレーベルを待ち受ける5つの脅威

ユニバーサルミュージックグループのチェアマン兼CEO、ルシアン・グランジ(Photo by John Salangsang/Invision/AP/REX/Shutterstock)



4. ストリーミングサービスおける価格調整の動き

以前ローリングストーン誌は、過去数年におけるSpotifyの有料会員ごとの平均収益の著しい低下について報じた。実質的にSpotifyの平均サブスクリプション料が低下している要因のひとつには、インドネシアやインド、南米といった地域で市場に見合った価格に設定されていることが挙げられる。またファミリープランやバンドルディール、そして今や当たり前となった無料体験キャンペーン等、様々な割引サービスの普及もその一因となっている。

ワーナー・ミュージック・グループのCEO、ステファン・クーパーはこういったトレンドに対してはっきりと苦言を呈しており、以下のようなコメントを最近発表した。「ストリーミングサービスが提供するプレミアムという名を冠した無料サービス、抜け穴だらけのファミリープラン、その他様々なマーケティング戦略はアーティストの価値と利益を損なうものであり、当社は引き続き断固たる姿勢をとっていく」

しかし実際には、自社の財務面におけるリスク要因がそういった「断固たる態度」を取ることを躊躇させている。将来的にストリーミングサービスのひとつが市場において圧倒的な影響力を持つことになった場合(例:Amazonのジェフ・ベゾスがSpotifyを買収する)、同社は「価格やマージンに対する態度を軟化させざるを得なくなる可能性はある」と認めている。

ワーナーはこうも述べている。「ストリーミング市場が寡占状態にあるという現状は、私たちが音楽ソフトをデジタル配信する上で課す金額の決定について、各ストリーミングサービス会社が大きな影響力を持つ状況をもたらしている。音楽業界の構図は変わり続けており、AmazonやApple Music、Spotify、Tencent等の音楽コンテンツ販売のシェアが拡大を続けた場合、そういった企業が(各レコード会社が主張する)利益率について更なる譲歩を求めてくる可能性は否定できない」

5. 不可測の事態

今年2月、筆者は音楽業界における「嵐の到来」と銘打ち、差し迫ったユニバーサルミュージックグループの売却案について本誌で報じた。

メジャーレーベル3社の中でも最大規模のユニバーサルについては、現在複数の投資銀行がその市場価値について調査を行っており、その金額は前年度の減価償却前利益(EBITA)10億ドルの最大50倍(!)になるとも言われている。UMGのオーナーVivendi氏は、最大で同社株の50パーセントを2020年1月末までに売却する方針だ。UMGが自社株を高い投資尺度(25倍以上)で売却すれば、ライバル会社のメジャーレーベル2社の市場価値が即座に向上することになるため、それぞれのオーナー自身がUMGの株購入に乗り出す可能性もある。

現時点でまだ議論されていないことがひとつある。それはユニバーサルの株に買い手が付かなかった場合のことだ。ブルームバーグはその可能性を排除しておらず、UMG株の販売ペースは鈍く「あまりの高値に個人投資家たちは二の足を踏んでいる」としている。

もしUMGが自社株売却に失敗すれば、投資家たちはレコード業界をめぐる明るい見通しについて懐疑的になり、市場予想レポートは下方修正を求められるかもしれない。それはユニバーサルのライバルであるソニーとワーナー(およびSpotify)の株主たちにとっても好ましくない事態だ。

こういったシナリオは現在のレコード業界のポジティヴなムードに水を差すばかりか、市場における活気を一気にしぼませる可能性を孕んでいる。

・著者のTim Inghamは、Music Business Worldwideの創設者兼出版人。2015年より、世界中の音楽業界に最新情報、データ分析、求人情報を提供している。毎週ローリングストーン誌でコラムを連載中。

Translated by Masaaki Yoshida

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