メジャーレーベルを待ち受ける5つの脅威

2. アーティストの影響力の拡大、増大する契約金

先週レコード業界の人々を色めき立たせたニュースは他にもある。IFPIの統計によると、各レーベルのA&R業務への投資総額は2017年に41億ドルに達し、アーティスト関連のコスト(宣伝費を含む)の総額は58億ドルに上った。前者が28億ドル、後者が45億ドルであった2015年と比較すれば、数字は飛躍的に増加している。

ユニバーサル、ソニー、ワーナーの3社がこの事実をあまり歓迎しない理由は何か? 2017年のレコード業界の総収益のうち、アーティスト関連のコストは実に33.8パーセントを占めている。しかしIFPIによると、2015年の段階ではアーティスト関連のコストは総収益の27パーセントにとどまっていた。言い換えれば、レコード会社の収益のうちアーティストに費される額の割合が、2年前と比べて飛躍的に増加しているということだ。

もうひとつ重要な点について触れておく。筆者がIFPIに直接確認したところ、同社の統計におけるレーベルの「A&R」費用という項目には、新人アーティストに支払われる契約金と印税が含まれているという。つまり、新人アーティストに破格の条件が提示されることが稀ではなくなった現在、レーベルの収益に対するアーティスト関連コストの割合がいつになく高まっているということだ。

3. 違法ダウンロード

「過去5年間で、我々は音楽業界における違法ダウンロード問題をほぼ根絶しました」

ノルウェーのIFPI代表Marte Thorsbyが2015年に残したこの発言には、音楽業界における各方面から賛辞が送られた。彼女の言ったことは事実であり、Spotifyをはじめとする合法ストリーミングサービスの成長は、The Pirate Bayに代表される違法ダウンロードサイトの大半を葬った。しかし、最近では同じ分野で新たな問題が起きつつあり、その根絶には程遠いと言わざるを得ない。

違法ダウンロード市場の動向を監視するMUSOによると、2018年における違法ダウンロードサイトへのアクセス数は、世界中で実に1890億回を超えるという。同社のリサーチによると、そのうちの約60パーセントが、クラウドベースのサーバー上で映画やテレビ番組や音楽コンテンツを違法に公開しているウェブサイトにアクセスしているという。過去に長期に渡って音楽業界を脅かしたビットトレント系ダウンロードサイトへのアクセスは、そのうちのわずか13パーセントに過ぎない。

しかし、レコード業界は事態を楽観視している。MUSOによると、これら1890億件のうち音楽コンテンツを扱ったものは15.9パーセントにとどまっており、前年度34パーセント減という数字は、あらゆるコンテンツの中で最も顕著に改善傾向を示している。それでもなお、1890億件の15.9パーセント、つまり300億件の違法行為が見られるという状況は無視できないはずだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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