メジャーレーベルを待ち受ける5つの脅威

ユニバーサルミュージックグループのチェアマン兼CEO、ルシアン・グランジ(Photo by John Salangsang/Invision/AP/REX/Shutterstock)

2年前、ゴールドマンサックスが発表したレポートは、世界中の音楽業界人たちを大いに興奮させた。中でもとりわけ色めき立っていたのは、ユニバーサルミュージックグループ、ソニー・ミュージックエンターテインメント、ワーナー・ミュージック・グループという3大メジャーレーベルの株主たちだろう。

そのヘッドラインは極めてエキサイティングなものだった。ゴールドマンの市場予想レポートによると、レコード業界の総収益は2030年までに現在の倍以上になり、ストリーミングによる収益は年間280億ドルに達する見込みだという。

明るい展望を示したゴールドマンの同レポートは投資家たちの関心を集め、上昇を続けるユニバーサルミュージックグループの株価はさらに増した。その一方で、バブルの崩壊とナップスターがもたらした危機の数々を経験した音楽業界のベテランたちは、その楽観的な見方に疑問を投げかけている。(ゴールドマンによるレポートのタイトルは「Music In The Air(レコード業界の明るい未来)」というものだったが、ジョーク好きの同業者は筆者にこう言った。「Pie In The Sky(パイが飛び交うお祭り騒ぎ)の方が正しいな」

しかし現状は、ゴールドマンの予想がむしろ保守的すぎる可能性を示している。同レポートは2018年にレコード業界の収益は世界全体で181億ドル、ストリーミングによる収益は84億ドルに達すると予想していたが、実際の数字はそれ以上だった。その後IFPIが発表したデータによると、2018年のレコード業界の総収益は前年比9.7パーセント増の191億ドルであり、ストリーミングによる収益は89億ドルとなっている。

当然レコード業界は浮き足立っており、ユニバーサルミュージックグループは「すべてのレコード会社にとって過去最高の1年だった」と興奮気味に投稿した。しかしレコード業界は遠くない過去に味わった苦い経験からも、その前途にどういった危険性が潜んでいるのかを把握しておくべきだろう。

ビジネスの好調ぶりに色めき立つのは大いに結構だが、メジャーレーベル各社が考慮しておくべき5つの脅威を以下に列挙する。

1. ヨーロッパにおける収益増加ペースの低下

世界の音楽業界におけるセールスシートのスタンダード、IFPIの2019年度Global Music Reportに並んだ数字は一見ポジティヴなものばかりだが、ひとつだけ明らかにそうでないものがある。世界の経済を支えるヨーロッパにおいて、昨年のレコード業界の成長率は極めてゼロに近く、2018年度の収益は前年からわずか0.1パーセント増となっている。

これには大きく2つの要因がある。ひとつはドイツで続くCD売上の著しい減少、もうひとつは北欧におけるストリーミングサービスの飽和だ。世界第4位の市場規模を誇るドイツのレコード業界の収益は前年比9.9パーセント減となっており、CDやレコードの売上は毎年1億2700万ドルのペースで減少を続けている。ストリーミング市場は拡大しているものの、その収益は1億1300万ドルとなっており、CD売上の減少によるロスをカバーしきれていない。

イギリスにとっても楽観視できない1年だった。現地の業界団体BPIによると、英国におけるレコード業界の収益は前年比3.1パーセント増となっている。しかし英国では同期間のインフレ率がその数字を上回っているため(3.3パーセント増)、実質上イギリスのレコード業界はわずかに縮小していることになる。

一方スカンジナビア半島では、また別の課題が明らかになりつつある。スウェーデンにおける2018年の同業界の成長率は2.8パーセントにとどまっており、ノルウェーではそれ以下の1.7パーセント増となっている。両国とも音楽ソフト販売の大半をストリーミングが占めており、昨年はノルウェーでは90.5パーセント、スウェーデンでは89.4パーセントとなっている。同分野が飽和しつつあるそういった地域では、今後その他の部分を成長させていく必要がある。

ストリーミングのシェア拡大ペースの低下という点では、アメリカも例外ではない。2019年第1期、Spotifyが北米で新たに獲得したアクティブユーザーの数は80万人にとどまっている。2018年第1期に同社が350万人の新たなアクティブユーザーを獲得していることを考えれば、その減速ぶりは顕著だ。

Translated by Masaaki Yoshida

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