内部崩壊が進む全米ライフル協会、40年共にしたPR会社から決別される

全米ライフル協会(NRA)の年次総会(上)を企画するなど、長年提携してきたPR会社と同協会が決別。(Photo by Erik S Lesser/EPA/REX/Shuttersto)

現地時間5月29日、米PR会社のAckerman McQueen社が全米ライフル協会(NRA)との40年にわたる業務提携の「解除通告」を通達した。

Ackerman McQueen社は長きにわたってNRAの公共イメージの構築につとめてきた。映画『ソイレント・グリーン』の俳優チャールトン・ヘストンを協会の栄誉会長に起用し、終末論的な色合いが濃いメッセージを打ち出し、趣向を凝らした年次総会を演出した。2016年にNRAのストリーミングサービス「NRATV」を立ち上げると、Ackerman McQueenの宣伝費用は4000万ドルに膨れ上がった。

NRA内部関係者は膨大な宣伝費や常識はずれなコンテンツ、例えばきかんしゃトーマスにKKK風のフードを被らせたフォトショップ画像などに怪訝な顔をした。

NRAは4月、Ackerman McQueen社を相手取り、財務記録の閲覧を求める裁判を起こした。すると年次総会で、NRAの栄誉会長でAckerman McQueen社の社員オリバー・ノース氏が、同協会のウェイン・ラピエールCEOの退任をもくろんだ。これを受けてNRAは再びAckerman社を訴え、同社が謀反をそそのかしたうえ、社外秘の書類を外部に漏洩したとして4000万ドルの損害賠償裁判を起こした。一方で、社外秘の書類によってBrewer法律事務所に対する目玉の飛び出るような顧問料や、ラピエールCEOの出張費や衣装代など金遣いの荒さが露見した。Ackerman McQueen社もすぐさま反訴し、NRAが契約に違反し、かつ違約金を支払わずして同社のPR業務をBrewer法律事務所に委託したとして、1億ドルの損害賠償請求を起こした。

ローリングストーン誌が入手した声明文によると、Ackerman McQueen社の言い分は「度重なるNRA側の不可解な行動」により、すでに「両当事者の業務提携契約は実質的に終了」しており、同社は業務提携を正式に「解除する通告」を送達したのだという。

Ackerman McQueen社は「NRA側が混乱状態である以上、協会側に使命を遂行しようという意思が感じられなくなった」と説明した。また「事実無根の訴訟で攻撃を受け、メディアに垂れ流された作り話で名誉を傷つけられた」と主張。さらに「密告や言いがかりで虚偽の主張をもっともらしく見せようという魂胆により、従業員のプライバシーが脅かされた」とも述べている。

声明はさらにこう続く。

「彼らは我々が震え上がると思ったのです。ですが我々は決して真実を恐れません。NRAは、法を遵守するアメリカ国民の人権を守る一大勢力でした。38年間、弊社は彼らとともに歩み……彼らの使命を果たそうとしてきました。NRAが今日直面している問題は自ら招いたものです。防ぐことができたはずなのに。防ぎきれなかったことが残念でなりません」

Translated by Akiko Kato

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