ゲームは世界をどう繋いでいるのか? HIROSHI(FIVE NEW OLD)・平岩康佑氏対談

左からHIROSHI(FIVE NEW OLD)、平岩康佑氏(Photo by Takuro Ueno)

ゲームがもたらす理想、ゲームが生む夢とはなんなのか? FIVE NEW OLD・HIROSHIがゲーム愛をひたすらばら撒いて進んで行く冒険連載。第2回は、日本のeスポーツ実況の第一人者、平岩康佑氏をゲストに迎え、「ゲーム」が世界をどう繋いでいるのかを語り合う対談を行った。

人種、平等性、仲間、想像力……現代におけるキーワードも多く飛び出しつつ、驚くほど急激なスピードで市場を拡大するeスポーツの魅力、そしてゲームがスポーツになっていくことの背景を学びながら、ゲームと音楽の向かう理想を探った。

ーHIROSHIくんのゲーム愛をひたすら掘って広げていく連載の第2回目です。

HIROSHI:はい! 今日も楽しみにしてきました!

ー今回は、「eスポーツ」を通して、現代のゲームがどういうふうに変貌しているのかを語れたらなと思っています。ということで、日本で初めてのeスポーツ専門の実況アナウンサーである平岩康佑さんをゲストに迎えました。

平岩康佑(以下、平岩):よろしくお願いします。元々は朝日放送でアナウンサーをやっていたんですが、今はeスポーツの大会で実況をやっております。よろしくお願いします!

HIROSHI:日本のeスポーツ実況の第一人者の方とお会いできるなんて、本当に嬉しいです。よろしくお願いします!

ーまず、HIROSHIくんはeスポーツという領域をどれくらい知っていたり、興味を持っていたりするんですか。

HIROSHI:そこまでは詳しくないんですけど、対戦型のゲームで行われて賞金が伴うイベントっていうイメージがあって。日本のゲームで言ったら『ストリートファイター』だったり、『大乱闘スマッシュブラザーズ』だったり。特に『フォートナイト』だったりは、大会がどんどん大きくなっていますよね。僕個人は、『フォートナイト』のビルドしながら戦うのが難しかったんですけど(苦笑)。



平岩:よく知ってらっしゃいますね。『フォートナイト』をはじめとして、まさに今盛り上がっているのが「バトルロイヤルゲーム」と呼ばれるジャンルで。どういうものか説明しておくと、オンラインで100人が武器を持って、最後のひとりになるまで戦うゲームなんです。まさに映画の『バトルロワイヤル』のような世界観なんですけど――その中でも特に人気のある『フォートナイト』の世界大会の予選が今始まったところで、7月に決勝戦がニューヨークであるんですよ。ちなみに、その大会の賞金の総額って、大体いくらかご存知ですか?

HIROSHI:110億円……でしたっけ。

平岩:そうなんです! もの凄い額ですよね。勝ち上がるごとに賞金が出ていって、世界各地での予選を経て決勝戦で勝てば15億円。その総額が110億円になるんです。eスポーツ全体の勢いを象徴する賞金総額かなっていう気がしますね。

HIROSHI:凄い……。僕が「バトルロイヤルゲーム」のことを知ったのはInstagramが最初だったんですよ。というのも、欧米のヒップホップの人たちが、最新ゲームの体験版をプレイできる「アーリーアクセス」の動画を投稿していて。そのゲームのキャラクターを踊らせる機能を使って、ヒップホップでキャラクターにダンスさせる動画だったんですね。で、ヒップホップの人たちがこれだけ熱中しているゲームってなんだろう?と思って調べたら、それが「バトルロイヤルゲーム」で、ドレイクやカニエ・ウェストもやっていて、めちゃくちゃ面白そうだなと。今世界でイケているヒップホップの人たちもそれだけゲームに注目しているし、決してナードの人たちだけのものではないんだなって改めて感じたんですよ。本当に、人を選ばず盛り上がっているんだなって。

ー平岩さんに凄く素朴な質問をすると、eスポーツはどうしてそこまで盛り上がってきたんですか。

平岩:簡単に言うと、スマホが世界中に広まったことで「誰もがゲーム機を持っている」という状態になったのが大きくて。老若男女がスマホを通じて同じゲームができるようになったし、世界的に見ても、『フォートナイト』のプロの選手はどれだけ上手いのか、それこそカニエ・ウェストがどんなプレイをしているのかを誰もが見られるようになった。さっきゲーム内のキャラクターにダンスをさせる話もありましたけど、サッカーのW杯で優勝したフランス代表の選手がゴールを決めた時に、「フォートナイト」で出てくるダンスを踊ったりしたんですよね。

HIROSHI:ああ、そうなんですね。そもそも僕が「バトルロイヤルゲーム」の存在を知ったプラットフォームも、ゲームの専門サイトとかではないわけで。ヒップホップのカッコいいアーティストのInstagramを通じて最新のゲームを知るっていうのも、いろんなもの、いろんな人が絡み合って、ひとつの大きなカルチャーが成り立っていることの表れだなって思います。日本にいるとどうしても日本特有のガラパゴス感がありますけど、海外だと特に、ゲームだけでゲームの文化になっているわけじゃない。


HIROSHI(FIVE NEW OLD)

平岩:本当にそうですよね。ゲームやeスポーツだけで独立したカルチャーというよりは、とても複合的なものだと思います。

HIROSHI:印象的だったのは……つい昨日までアジアツアーを回っていて。タイに行った時に、帯同してくれていたカメラマンがトゥクトゥクではしゃぎ過ぎてスマホを落としちゃったんですよ。そしたら日本に帰る直前にスマホのアイコンがパッと点いて、ローカルエリアの「ここ行って大丈夫か?」っていう場所にあるって出てきたんですよ。それでタクシーで取りに行ったら、細い裏路地にトゥクトゥクのドライバーが3人くらいいて、「日本人か、スマホ探してるのか」って言って携帯を返してくれたんです。そこでも、彼らは洗濯機を回しながら当たり前のように『PUBG』(世界4億人のプレイヤーを持つバトルロイヤルゲーム)をやっていて。ゲームが世界中の人にとって当たり前になってるんだなって改めて実感しましたね。



平岩:日本で言うと「ゲーム=オタク」みたいなイメージが残ってますけど、最近だとアイドルの方や俳優さんもゲームをやっているところをSNSに載っけたりしていますよね。もう、ゲームは「カッコいい人」とか「オタク」とか、最早そういう考え方とは違うカルチャーになり始めてるんですよ。たとえば本田翼さんのゲームの配信で、同じゲームのオンライン同時接続数が17万人までいったことがあったんですよ。それが、ゲーム関連動画としての日本記録なんです(笑)。何億円かけた幕張メッセの3万人のイベントも、一瞬でスコーンと抜かれたという。あれも、業界としては相当な話題になりましたね。

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