ゲームは世界をどう繋いでいるのか? HIROSHI(FIVE NEW OLD)・平岩康佑氏対談

左からHIROSHI(FIVE NEW OLD)、平岩康佑氏(Photo by Takuro Ueno)



eスポーツ元年はいつ?

ーそれくらいまでeスポーツの市場が拡大してきたのは、どれくらいの期間をかけてのことなんですか。

平岩:5年前くらいに、eスポーツ元年がきたとは言われてたんです。だけど実際のところは、2018年に一気にきましたね。去年だけで、市場規模として13倍にまで伸びたんです。

HIROSHI:1年で13倍!?

平岩:ナショナルクライアントと呼ばれるコカ・コーラやトヨタもeスポーツに出資し始めたのが去年で。その結果として、今年の秋には国体の競技にeスポーツが入ったり。コカ・コーラの冠で『STAGE:0(ステージゼロ)』っていうゲームの甲子園みたいなイベントが開催されたり。去年はeスポーツのプロリーグも多く発足しましたし……。本当のeスポーツ元年が去年やってきた感覚はかなり強かったですね。



HIROSHI:日本でそこまで一気に市場規模が大きくなった要因って、なんですか?

平岩:先ほど『フォートナイト』というゲームの世界大会の賞金総額が110億円だという話をしましたけど、去年、『DOTA』っていうゲームで賞金総額が28億円の大会が海外であったんです。その規模になってくると、日本でもその動きは見過ごせなくなってくるんですよね。そこから徐々に日本でもeスポーツに火がつき始めて。それが、ここにきて市場規模が一気に伸びた要因だと思います。



ーゲームそのもの以上に、ゲームがスポーツになることで生まれてきた新しい魅力もあるんでしょうか。

平岩:ああ、そうですね。これは従来のスポーツでも同じだと思うんですけど、結局は選手が魅力的なんですよね。「スポーツマンシップがないから、eスポーツなんてスポーツじゃない」って言う人もいるんですけど……たとえば去年、『Shadowverse(シャドウバース)』っていうゲームの高校生の甲子園で実況をしたんです。それで負けたチームにインタビューをしたんですけど、3人1組のチームでチームメイトに迷惑をかけてしまったプレイヤーが涙をこらえて俯いて、ひと言も喋れなかったんです。だけどインタビューが終わった後、その泣きそうだった彼が、誰も促していないのに勝ったチームのプレイヤーの肩を叩いて握手して出て行ったんですよ。悔しくてたまらないはずなのに。



HIROSHI:うわ、その話だけでジーンときて泣きそうです……。従来のスポーツだろうと、eスポーツというプラットフォームを介していようと、そこにあるドラマは変わらないですよね。

平岩:そうなんですよ。その姿を見るだけでもう、「eスポーツがスポーツかどうか」っていう議論が要らないと思うんですよ。やっぱり選手にeスポーツの魅力が詰まっていて。それに、誰もが同じ土台の上で戦えるのがeスポーツなんです。プロもアマチュアも、男女の区別も、健常者と障害者の区別もない。全員が同じところで楽しめて、戦えて。それも大きな魅力だと思うんです。実際の野球だったら、どうしても男と女で競技を分けなくちゃいけないじゃないですか。 eスポーツでは、それがないので。

ーちゃんと今の時代性がそこにあるんですね。

平岩:そうなんですよ! 平等性と多様性がそこにある。たとえば17歳の女の子と38歳のプロゲーマーが戦っていたりすると、会場の空気って変わってくるわけですよ(笑)。17歳がプロを倒すのか、やっぱりプロが強いのか……誰しもがヒーローになれる、その土台が揃っているんですよ。

HIROSHI:年齢の話で言うと、ゲームって選手寿命はある意味無制限なのかなって思うんですけど、実際はどういう感じなんですか?

平岩:平等性のあるスポーツだとは話しましたし、実際、いつまでも続けていけるものではあるんですけど……でも実は、選手寿命が短いと言われてるんです。

HIROSHI:え、そうなんですか!

平岩:特に「バトルロイヤルゲーム」で言うと、何しろシビアな反射神経が必要になってくる。そうなると、ピークで言うと16歳から24歳くらいなんです。たとえば「ここに水がある、手に取ろう」って思ってから指先が動くまでがどんどん遅くなっていくんですね、人間って。それは10年で0.000026秒くらいのものではあるんですけど、ゲームの試合になると、「仲間を回復しなきゃ」とか、「この敵に攻撃しなきゃ」とか、とにかくタスクが多い。で、20分の試合になると、その0.000026秒が積み重なって20秒くらいになるんです。その20秒は絶対に取り返せないものなので、年齢とともに衰えていく反射神経はゲームにとって凄くシビアなものなんですよ。実際のスポーツは経験でカヴァーできるところがありますけど、eスポーツの場合は、伝達力がそのままの形で影響するんですよね。だから逆に言うと、プロゲーマーのセカンドキャリアをどうするかっていう問題も浮かび上がってきているんですね。コーチになる、解説に回るっていう道もありますけど……それでも引退後の受け皿は足りていない状況なんです。それは課題ですね。


平岩康佑氏

HIROSHI:なるほど……今人気のあるジャンルっていうのはやっぱり「バトルロイヤル」ですよね。そのジャンルで圧倒的に強いのは韓国だと思うんですけど、韓国はなんでそこまで強くなったんですか?

平岩:2000年台初頭に韓国の産業――サムスンやLGが不安定になった頃に、国として次の産業を育てようとして見つけたのがeスポーツで。国家プロジェクトとして、国全体を上げてeスポーツの市場を育ててきたんですよね。街の至るところに「PCバン」っていうネットカフェに近いものを作って、いつでもオンラインでゲームができるようにしてるんですよ。そうなってくると、韓国のチームやプレイヤーが世界大会を5連覇するようなゲームも多くなってきて。この前もあるゲームの世界大会でロンドンの「ロンドンスピットファイヤー」というチームが優勝したんですけど、そのチームは全員韓国人でしたからね。

HIROSHI:2000年代初期に僕の周りでオンラインゲームを早めにしている友達が多くて、「それはどこのゲーム?」って訊いたら、韓国のゲームであることが多かったんですよ。その頃から今に繋がる下地ができていたと。これはなんとなくのイメージではありますけど、アメリカや欧米の方々はプレイヤー主導でゲームが広がったり、それを見た人が面白そうだと思ったりっていう動きがありますよね。それに対して、韓国を象徴にしてアジアの国は国家主導でゲームの市場が広がっていく。

平岩:それこそ中国は、一攫千金のチャンスとしてプロゲーマーになる方が増えてるみたいなんですね。タイなんかもそうですけど、まだ貧富の差が大きい国では特に、スマホを誰もが持てる時代だからこそひたすらゲームを練習して、ゲームの大会で優勝することを目指す人が多いみたいなんですよ。世界として本当に面白いことになってきていると思いますね。

HIROSHI:平岩さんがeスポーツ専門のアナウンサーになろうと思ったのは、スポーツとしての魅力と同時に、それくらい市場規模が大きくなるという先見もあったんですか?

平岩:元々はただゲームが大好きで、結果としては朝日放送にアナウンサーとして入社しましたけど、そうでなければ任天堂に行く予定だったんですよ。学生の頃もずっと『Call of Duty』っていうFPSゲームに没頭していたし、ゲームの仕事をしたいと思ってたんです。でも、自分がやりたいと思った仕事のチャンスとタイミングをいただいたのでアナウンサーになったんですけど……でも僕が迷っているうちに、もし他の誰かが「ゲーム実況の第一人者」になってしまったら絶対に嫌だと思って。それで、eスポーツの実況をするために朝日放送を飛び出しました。……朝日放送のアナウンサーの頃も休みの日は16時間くらいゲームをやってたんですよ(笑)。お酒も絶対に飲まなかったですね、だって酔っ払ったらゲームで勝てないので。



HIROSHI:はははははは。先ほどおっしゃっていたeスポーツの魅力だったり、選手の面白さだったりは元々知っていたんですか?

平岩:いや、それは実際に現場に行くようになってからわかったことでした。ただ、オンラインゲームをやっていると、顔も見えないし素性もわからないからこそ、凄くフラットな関係で助け合いがあったりするじゃないですか。それがちゃんと生の現場でも存在しているんだなっていうことに感激したんですよね。

HIROSHI:わかります! たとえば最近アジアツアー中に現地のコーディネーターにもらった『デビルメイクライ5』をやっていたんですけど、元々はひとりプレイのゲームなのに、オンラインで人に見てもらえるようになってるんですね。いいプレイがあったら「いいね」を送り合える仕組みができていて。今までだったらひとりだけでやっていたゲームも、国境を越えた共通言語になりつつあるんだなって思ったんですよ。たとえば難しくて有名な『ダークソウル』っていうゲームをやっている時も、いろんな人が助けてくれてようやくボスに勝てたりするわけで。あれが素敵ですよね。



平岩:『ダークソウル』って、難易度が高くて有名なゲームですよね。解説しておくと、マリオで言うクリボーにボコボコにされてしまうくらい難しいアクションゲームで。だから、普通に戦ってもボスの足元にも及ばないんです。だけど、たまにオンラインで誰かが入ってきてくれて、助けてくれる。

HIROSHI:そもそも協力し合う前提で作られているゲームですよね。でも、プレイヤー同士の会話はなくて、キャラクター同士のお辞儀だけで、助けてくれてボスを倒したらサッと消えていくんですよね。そのサラッとしたコミュニケーションが逆にいいというか。同時多発的にいろんな問題が起こっている世の中ですけど、だからこそ、優しさとか思いやりとか、助け合いとか、そういうものがゲームの中で感じられることがうれしかったりすると思うんですよ。eスポーツの話にもありましたけど、そもそもゲームの中ではボーダレスな世界なわけだから。

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