音楽のビジネスモデルを変えた「iTunes」、いよいよ終了か

2004年、iTunes Music Storeを発表するスティーヴ・ジョブス(Photo by Ray Tang/REX/Shutterstock)

一つの音楽の時代が終わる。発売から約20年が経過し、小売店でのアルバム発売という伝統的なビジネスモデルを刷新したiTunes。Appleがこのサービスを終了させる準備に入ったとブルームバーグが報じた。

現地時間6月3日にカリフォルニア州サンノゼで開催されるワールドワイド・デヴェロッパーズ・カンファレンス(WWDC)のソフトウェア・キーノートで、テック企業の巨人AppleはiTunesを独立型の音楽アプリ、テレビアプリ、ポッドキャストアプリに置き換えることを発表する予定だ。

この動きは何年も前から噂されていたものだが、これによってAppleはメディア戦略全体を調整するものと見られる。すなわち、すでにiPhoneとiPadではiTunesの代わりとなる音楽アプリ、テレビアプリ、ポッドキャストアプリが提供されている一方で、MacとMacBookでは集中型のiTunesアプリが現在も使用されている。今後、ユーザーは現在のiTunesの機能の一部、例えば楽曲の購買やスマートフォンとの同期などを引き継いだ新たな音楽アプリの登場を期待でき、洗練されたインターフェースのアプリが、Appleの音楽配信サービスApple Musicと抱き合わせで販売されることが予想される。

iTunesの音楽、テレビ、ポッドキャストのサービスを3つの個別のプラットフォームに分けることによって、Appleはあからさまに多角的なエンターテイメントサービスの提供企業として人々の関心を集めることになるだろう。多種多様なアプリの一つでたまたまエンターテイメント・コンテンツを販売しているハードウェア企業という現在のイメージを一新するはずだ。

これはAppleの将来にとって非常に重要なことで、Appleとしてはサービス部門の積極的な成長を促して、停滞するiPhone販売に対抗する構えなのだ。今年のWWDCでAppleがBooks、Messages、Mailを含む他のアプリの進化も発表する計画だと、多数のメディアが報じている。また、Appleは数カ月前にリース・ウィザースプーンやスティーヴ・カレルをフィーチャーしたオリジナル動画プログラムという野心的な計画を発表しており、エンターテイメント業界でのAppleコンテンツの存在感を高めることを目指している。

iTunesに不満を持っていたユーザーはiTunesの終了を歓迎するだろう。しかし、このソフトが2000年代初頭に起こした革命的現象は未来永劫、語り継がれるはずだ。iTunesの登場前、音楽業界はNapsterで行われていた違法の音楽ファイル交換を撲滅するために頭を抱えていた。そこに、ジョブズは新たな製品と共に、デジタル時代で最初の持続可能でユーザーフレンドリーな音楽鑑賞方法を提案した。

当時のソニーやマイクロソフトなどの企業はデジタルレコードストアというアイデアをぞんざいに扱っており、彼らは「ディスクプレーヤーやハードウェアの製造に精通したテック企業で、ソフト面でAppleほどの洗練さを実証したことがなかった」と、2013年のローリングストーン誌でワーナーミュージックの副社長ポール・ヴィディックが、iTunes Storeの10周年記念に関連して当時を思い出して語っていた。「ソフトとハードの両面を上手く橋渡しながら、顧客にとって魅力的な製品を生み出すには、一つの会社が持てる力をすべてつぎ込む必要があった」と。

Translated by Miki Nakayama

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