ビリー・アイリッシュ、兄と親の影響で育まれたアイコンの資質

2019年4月20日、カリフォルニア州インディゴで開催されたコーチェラ・フェスティバルに出演するビリー・アイリッシュ(Photo by Christopher Polk/REX/Shutterstock)

ビリー・アイリッシュは今もっとも注目すべきティーンエイジャーなだけではない。これまでさんざんやりつくされた定石を書き換える、未来のポップ界から送り込まれた最初の刺客なのだ。

作曲チームや一流プロデューサーを無視して、兄と2人で奇想天外な楽曲を作る反逆児。彼女は殺人や血なまぐさい話をネタに、ホラーじみたエレクトロ地獄絵巻をささやくような声で歌う。SoundCloudで「Ocean Eyes」がヒットして突然世に現れてから4年後、デビューアルバム『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』の大ヒットで彼女は音楽業界に殴り込みをかけた。彼女を真の偉大なるポップアーティストたらしめているのは、彼女の野望がどこまでも貪欲であるが故だ。この少女は世界を手に入れたがっている。それも今すぐに。

アイリッシュは今世紀に生まれた最初のヒットメイカーだ。彼女はiPodが出たのと同じ年に生まれた。きっとそのせいで、彼女は悪びれもせずさまざまな音楽スタイルにやみくもに飛びつくのだろう。ギャングスタ・ラップから、エモ、グランジ、ゴス系バラードまで何でもあり。ピンときたノイズを全部ごったまぜにする。最初に曲を作ったのは11歳のとき。『ウォーキング・デット』のサイドストーリーものだが、彼女の曲で語られる三流ホラーは、若い少女が成長過程で抱える怒りのはけ口を彼女なりに表現しているかのようだ。そうした心の叫びは、「私はあんたのベイビーじゃないわ」という彼女のうなり声や、2017年のミニアルバムのタイトル『Don’t Smile At Me』からも伺える。「ユー・シュッド・シー・ミー・イン・ア・クラウン(私を王として扱うべき)」の中でも彼女は暗に、他人から王冠をかぶせてもらうのを待つのはごめんだ、と歌っているのだ。

アイリッシュはインスパイアされたアーティストとして、タイラー・ザ・クリエイターといったラッパーたちをとかく絶賛する。「チャイルディッシュ・ガンビーノが私を形成したの」と彼女は言う。10代はいつの世も、自分がいかにヒップホップ好きかを熱く語ることが求められる(古くはニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックが、パブリック・エネミーを熱狂的に支持していた)。だがアイリッシュはラッパーたちの態度を真似るだけでなく、水面下での活動やミックステープ公開のタイミングなどを研究した。新参者がブレイクする定石のラジオ向けヒット曲にはまるで興味なし。代わりに、彼女は最高のアルバムアーティストとなった――専門家が口をそろえて、アルバムなんて時代遅れだと言う時代にだ。

Translated by Akiko Kato

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