個人的な悲しみを「時代の声」へ昇華させたアリアナ・グランデの歩み、いくつもの傷跡と涙を再検証

アリアナ・グランデ(Courtesy of UNIVERSAL MUSIC)

ニコロデオン出身のティーンアイドルだったアリアナ・グランデが、これほど華麗な脱皮を遂げるとは誰が想像できていただろうか? マンチェスターでの痛ましいテロ事件や、元恋人マック・ミラーの死を乗り越え、彼女は生まれ変わった。今やアリアナは同世代の女性の声であると同時に、時代の無意識を代弁する「みんなの声」だ。それを証明するかのように、「サンキュー、ネクスト」は7週間、「7リングス」は8週間にわたって全米1位を独占するという怒涛の快進撃を見せたのも記憶に新しい。果たして彼女は、どのような紆余曲折を経て時代のトップランナーへと躍り出ることになったのか? その歩みをライターの照沼健太が検証する。

「テイラー・スウィフトは本物だが、アリアナ・グランデはニセモノである」

今となっては笑い話だが、数年前までこんな言説は珍しいものではなかった。テイラーが恋愛よりも友人や自らのキャリアを優先し“強い女”像を押し出すようになったのに対し、アリアナは常に恋愛に右往左往している“女子”的なイメージであり続けたのもその一因だっただろう。女性向けメディアではアリアナ・グランデ風メイクが取り上げられるなど、女子たちが親近感と憧れの両方を抱くポップアイコンとして強力なファンベースを築いたアリアナだが、それと同時にちょっとした態度や悪ふざけを槍玉に挙げられ“嫌いな有名人”の代表格としてとしても吊るし上げられ、作り物のポップスター扱いをされていた。

しかし、“アイドルから本物のアーティストへ”という道のりがアメリカのポップミュージックシーンには用意されているのだ。古くはマイケル・ジャクソンに始まり、ジャスティン・ティンバーレイク、ジャスティン・ビーバーらが歩んできたこの道を、アリアナは幸か不幸か突き進むことになる。

その大きなきっかけとなったのが、テロだ。脱いい子宣言をした3rdアルバム『デンジャラス・ウーマン』をひっさげた2017年ツアー、そのマンチェスター公演が自爆テロ事件の標的となり、ファンが命を落とし、アリアナ自身もPTSDを発症。痛ましい事件に誰もが心を痛める中、なんとアリアナは間髪入れずにチャリティコンサートを開催し、25億円以上の寄付金を集める結果を出した。



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