人間椅子・和嶋慎治が「青春の情熱」のまま、一度も休まず30年間バンド活動できた理由

平成の頭にデビュー、平成とともに歩んできた

―そんな意味も込められていたんですね。人間椅子って、実は平成という時代とともに歩んできたバンドですよね。

和嶋:平成の頭にデビューして、決してメイン・カルチャーの中にいたわけではないですけど、僕らなりに平成とともに歩んできた感はあるかな。こういう歌詞を書いている我々が言うのも不思議ですけど、時代が新しくなることで、世の中が良くなればいいなぁという気持ちもありますね。平成は今ひとつ弾けきれないままに過ぎ去った時代だったのかなってちょっと思います。昭和の頃に比べたら、ずっとなんとなく景気が悪かった感じがするもんね。バブルの終焉とともに平成が始まって、まぁ、平成の前半はCDが爆発的に売れた時代もありましたけど。

―平成の年表と照らし合わせて聴くと、『新青年』がより味わい深いものになるかも。

和嶋:なんか、もうちょっと自由な時代が来ればいいなと思うけど、なかなか難しいですよね。平成はどんどん型にはめられる傾向が強くなってきたかなという気はします。昭和の頃の型破りな感じが許されない空気だからね。

―それは面白い視点です。「ロック」を掲げていても、どこかルールに則ってやらなくちゃいけなかったりします。

和嶋:もしかすると、ロックがどんどんやりづらくなっているのかもしれません。表現って常に必要なものだから、これからも残ってはいくんですけど、もう少し、自由に表現できる場が増えるといいですね。皆さんを楽しませる世の中になればいいなと。

―そこでお聞きしたいのですが、和嶋さんが表現をするうえで心がけていることは?

和嶋:どんなに暗いことやネガティブなことを言ったとしても、観てる人をつらい気持ちにはさせたくないなと思います。たとえば、極端な話ですけど、怖いことをやったとしても、お化け屋敷のようにしたいんですよね。エンターテインメントというか、楽しくなるような感じ。ホラーだとしても、すごく不快になるものと、観ててカタルシスを得るものとがあると思うんですけど。あまり後味の悪いものにはしたくないですね。「こういう世界もあるんだ」ということを提示したいというか、日々生きることの大切さを伝えられればいいなというのが根底にはあります。それで、「毎日ってすごい大切なんだよ」とか、「ちゃんとしたほうがいいよ」っていうのをストレートに言うのは、あまり自分たちのスタイルではないというか。自分もそんなにたいしたことのない人間なので、偉そうなことは言えませんから、それを別の方向から言いたいというのがあります。でも、きっとそういうのがアートなんじゃないかなと思いますけどね。「こうすべきだ」をストレートに言うのは宗教の分野。それをいろんな視点で言えるのが芸術なんじゃないかな。

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