エルトンやピンクも御用達のファッションデザイナー、ボブ・マッキーが語る「伝説の12着」

1975年8月9日、カリフォルニア州ロサンゼルスで開催された第1回ロックミュージック・アウォードにて。バックステージで記念撮影するシェール、エルトン・ジョン、ダイアナ・ロス。(Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images)

ブロードウェイミュージカル『The Cher Show』でトニー賞初ノミネートとなったファッションデザイナー、ボブ・マッキー。象徴的な12着のドレスをデザイナー本人が振り返った。

この50年間、マッキーは歌手のシェールと仕事を続けてきた。今回、シェールの半生を描いたブロードウェイミュージカル『The Cher Show』でもマッキー節が炸裂。の手の込んだ自己主張の強いデザインがさながらファッションショーのように登場する。彼はこの舞台の衣装で、トニー賞に初ノミネート。最優秀衣装デザイン部門に選ばれている。

マッキーはシェールの他にも、伝説的ポップ・アーティストの衣装を手がけてきた。エルトン・ジョンからピンクまで、自分の個性とマッチする服を求める野心的なパフォーマーたちの御用達デザイナーとなった。

「彼らはみな強烈な個性の持ち主。ただ単に着飾って終わりじゃない」と、マッキーはローリングストーン誌の取材に答えた。「ショウを特別なものにするにはどんなルックスで、どんな仕掛けが必要か。そういうことを常に考えている。パフォーマー本人をカッコよく見せるのと同時に、観客を視覚的に楽しませることも大事なんだ」

彼のキャリアを代表する「伝説の12着」を本人に解説してもらった。

・アン=マーグレット:金のスパンコールのフリンジ


Courtesy of Bob Mackie

1978年の彼女のラスベガス公演の衣装。アン=マーグレットはグラマラスでセクシーだった。とにかく素敵だった。それに彼女は出演映画のイメージをそっくりラスベガスのステージで再現した。超セクシーな女性として有名だったし、実際あの赤髪が見た目にも華やかだった。踊るときはワイルドなんだよ。彼女が動きやすいものがいいと思って作った。たしか一時期、この衣装を着た彼女の巨大ビルボードがサンセット大通りに飾られていたと思う。

・ダイアナ・ロス&ザ・シュープリームス


Courtesy of Bob Mackie

とにもかくにもパフォーマー重視。TVだろうと、アカデミー賞だろうと、ダイアナ・ロス&ザ・シュープリームスの特別番組だろうとね。この衣装は1969年の特番用。彼女たちはグラマーなのが売りだったし、アメリカの他の女性グループよりもおしゃれだった。そうした魅力で彼女たちは有名になったんだ。ダイアナがリーダー格だったから、まずは彼女に気に入ってもらわないといけなかった。当時はダイアナ・ロス&ザ・シュープリームスという名前だったね。ダイアナが脱退してソロになる直前で、この特番のすぐ後に脱退した。

・マドンナ:アカデミー賞授賞式「スーナー・オア・レイター」での衣装


Courtesy of Bob Mackie

このドレスのサンプルを着た彼女の写真があるよ。当時の僕のコレクションの1着で、それを着た写真がヴァニティフェア誌の表紙を飾った。彼女から「アカデミー賞に着ていくドレスが欲しいの」って言われてね。作品は『ディック・トレイシー』で、彼女は髪型から何から全部マリリン・モンローっぽい雰囲気だった。彼女が「これいいわね」って言うと、スタイリストが「ボブ・マッキーに電話なさいよ、彼なら1着作ってくれるわよ」って言ったらしい。僕らはマドンナ用に1着用意して、彼女はそれを着て式に出席した。いろんなパーティでも着てくれたよ。その日彼女の同伴はマイケル・ジャクソンだったから、いろんな媒体で取り上げられたね。

・ピンクからフレディ・マーキュリーへ敬礼


Courtesy of Bob Mackie

彼女はクイーンとフレディ・マーキュリーへの追悼として、メドレーをやった。僕はフレディの衣装をいくつかチェックして、そこからインスピレーションを得た。彼はこんな感じのジャケットを着てたね。市松模様のプリントものも着てた。これはそのコンビネーション。たしか彼女はこれを着て宙吊りをしたんじゃなかったかな。宙づりとか、いつも彼女がやるようなワイルドなことをね。ショウの後半では、すごく大きな白黒のオストリッチのフェザースカートを履いてたよ。ショウの進行とともに、衣装全体が七変化していったんだ。

・グラミー賞でのピンク(「グリッター・イン・ジ・エアー」)


Courtesy of Bob Mackie

彼女がグラミー賞に出演したときの衣装だ。彼女は宙づりになって、そこでドレスを脱ぎ捨てると、このストライプ風の衣装が現れる。空中で回転したあと、巨大なプールにダイブして、水ぶきがあたり一帯に広がる。よくある月並みな歌やダンスとは全然違ってたよ。宙づりでパフォーマンスするときは相当神経を使わなきゃいけないんだ。僕にとっては本当に恐ろしいよ。すべてが完璧じゃないといけない。ひとつのミスも許されない。あんな風に宙づりになった状態では、ほんのささいな衣装の不具合で、たちまち大惨事になりかねないからね。実際に現場で彼女を見たら肝をつぶすね。

・ベット・ミドラーのオウムの衣装


Courtesy of Bob Mackie

これは彼女のツアー用の衣装。ベットの場合、とてもじゃないけど普通のドレスなんか作れない。この衣装は、最初胸のあたりを覆うようになっていているんだ。オウムがタイトスカートを履いている感じ。覆いがぱっと取り払われると、こんな感じの衣装が現れるって寸法。彼女は当時ニューヨークに住んでいて、僕はLA在住だった。彼女はこのドレスの色違いを作ったけど、最初の1着は僕の作品だ。


シェール(左)、ボブ・マッキー(右) ニューヨークのニール・サイモン劇場でのブロードウェイミュージカル『The Cher Show』こけら落とし公演にて。(Photo by Evan Agostini/Invision/AP/REX/Shutterstock)

Translated by Akiko Kato

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