Apple最新のイノベーションはiPod、なぜいま?

5月28日に発表された最新のApple iPod touch(Apple)

iPodを覚えている? もし忘れたなら、Appleがあなたの記憶を呼び起こしてくれるはず。5月28日、最大手テック企業Appleから驚きの新型iPod touchが発表された。2015年以来4年ぶりに予想外の新製品を発表した。

この「新製品」にはA10 Fusionチップが搭載されており、Appleのプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのグレッグ・ジョズウィアックによると、このチップによって「従来モデルの2倍のパフォーマンス」が32GB、128GB、256GBの各モデルで実現された。価格は32GBが199ドル(21,800円)、128GBが299ドル(32,800円)、256GBが399ドル(43,800円)となっている。アップグレードされたスペックは最小限に抑えられており、新型iPod touchはTouch IDやFace IDをサポートしておらず、画面サイズもiPhoneの前世代モデルやiPodの従来モデルと同じ4インチのままだ。また、3.5mmのヘッドフォンジャックも従来通り付いている(数年前にiPhoneからヘッドフォンジャックが消えたときにAppleを罵ったオーディオファンには朗報だろう)。ただし、従来の2倍の速度のチップのおかげで、新型iPod touchではFacetimeのグループコールが可能になった。くわえて拡張現実(AR)アプリを使ったAR体験も可能だ。カラーは全7色。256GBモデルのストレージ容量はiPod史上最大となっている。

しかし、どうして今更iPodなのか、という疑問はある。その答えはAppleの会計報告書にあった。iPhoneの価格が1,000ドル台(日本では10万円台)に値上がりしたことを受けて、iPhoneの売れ行きがここしばらくスランプに陥っている。そのため、Apple NewsやApple Musicという人気アプリが含まれるAppleサービス部門での利益と成長が今後最も期待されるのだが、そのためにはこの部門の成長を促すためのハードウェアが必要なのだ。新型iPod touchは通話機能のないスマートフォンを使いたい子どもや大人のユーザーにもってこいのモデルで、これを市場に投入することで、Appleは既存の音楽、動画、ニュースの配信サービスを向上させ、今秋に予定されているApple Arcadeというゲームサブスクリプション製品のリリースに向けてゲームプラットフォームを整える目論見だ。

今の今までAppleはiPodから完全撤退したと思っていた人たちも多いだろう。確かに2017年に生産中止したiPod nanoとiPod shuffle、2014年に廃盤となった白いスピンホイール付きのiPod Classicが、今後市場に復活する確率は少ないかもしれない。

Translated by Miki Nakayama

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