Snapchatが音楽ビジネスに参入、「ユーザーコンテンツ」が活性化の鍵

Advertising Week EuropeでのSnapchatのブース(Photo by AWEurope/REX/Shutterstock)

いまや誰もがミュージシャンの時代――その傾向はIT企業にも言えるようだ。先週、音楽業界の最新動向を示すニュースが2本登場した。ひとつは、TikTokの親会社が有料ストリーミングサービスを始めたこと、もうひとつは、ユーザーが音楽を投稿できるSnapchatの新機能が提供されたことだ。

先週20日、ブルームバーグが動画アプリTikTokを所有する中国企業ByteDanceが、有料音楽ストリーミングサービスを立ち上げると報道した。まずは年内にいくつかの新興国で展開し、その後他の国々へ拡大していく計画だという。さらに24日、今度はウォール・ストリート・ジャーナル紙が、シリコンバレーの人気者Snapchatがユニバーサル・ミュージックグループ、ワーナー・ミュージックグループ、ソニー・ミュージックグループとライセンス契約の交渉中だと報じた。「同社の基幹アプリSpapchatで、ユーザーの投稿に音楽を追加できる機能を拡大」するのが狙いと言う。これにより何千曲もの楽曲のフレーズが、同社のウリである消える写真や動画で使用可能になる。

SnapchatとByteDanceの目的はそれぞれ異なるものの、いずれも音楽業界が急速にIT界へ転じている現象を如実に物語っている――数年前の予想とはまったく逆の流れだ。2017年、ストリーミングがポピュラーなリスニング体験となった時、音楽業界の多くの人々は、IT企業が大挙してSpotifyの類似品を世に送り出し、マーケットでのシェアを独占しにかかるだろうと予測していた(YouTubeのように、まさにそのような手に出た企業もある)。だが音楽との関係性に関しては、ソーシャルメディア・アプリのほうが一枚上手だった。

昨年Facebookは、子会社アプリのInstagramとOculusとともに、三大レコード会社と包括的契約を締結。独立した音楽コンテンツを立ち上げるのではなく、ユーザーコンテンツに音楽を組み込む道を選んだ。Snapchatの交渉もこうした流れに沿ったものとみられる。ByteDanceも同様に、アーティストの楽曲を数秒間TikTokの動画に使用した場合の著作権の料金体系について、三大レーベルと活発な議論を交わしたと言われ、いずれByteDanceが立ち上げる有料音楽サービスの実情にも影響することになるだろう。こうした交渉がケースバイケースで行われている事実は、ユーザーコンテンツ企業との著作権交渉に際し、音楽業界がいまだ標準化したモデルを確立していないということでもある。だが、このまま歩み寄りが続いていけば、近々解決策を見つけなければならないだろう。

Translated by Akiko Kato

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