ドラッグで自滅する凄腕ミュージシャンを見て、凡人は「なんでまた」と今日も嘆く

地元の友達に「ジャンキーのおじさんの写真を撮りたいんだけど、どこ行けばいるかな」って聞いたら「Mytle-Wickofの広場にいつもいる」と言うので来てみたのですが、厳冬期につき誰一人おらず。そりゃそうか。(Photo by Gen Karaki)

ニューヨークであてどないドサ回りに明け暮れる、元編集者の中年ミュージシャン。彼が目撃したのは、凄腕なのに仕事に恵まれない音楽家たちの姿でした。もちろんそこには理由がありまして……。

※この記事は3月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.06』内、「フロム・ジェントラル・パーク」に掲載されたものです。

ニューヨークの冬はお寒うございます。日照時間が減り、活動量も減り、陰鬱ムードに包まれがちなシーズン。ですが最近ようやく、仕事と呼べそうなものが少しずつ入りはじめて、相変わらずドサ回りというか街場のバーやパブでの演奏なんですが、ちょっとずつでも前進してるぞ、うん、してるしてる。と微かな手応えをよりどころに、折れそうな心に添え木を当てつつ暮らしています。

そんなレベルの自分からすると、「うわーもったいない」って気持ちでいっぱいになるのが、ミュージシャンのトラブルトーク。だいたいドラッグの話。ちょうど日本でもタイムリーなトピックだと思うので、アメリカに来てから自分の観測範囲で見たり聞いたりした、ミュージシャンの各種ドラッグ話を書いてみようと思います。

身近なところだと、日本にも何度か演奏しに行ってるピアニストのA。その腕前については疑いなく天才と誰もが認めるところなんだけど、どうしても仕事に恵まれない。具体的に言うと、NYローカルの仕事なら引っ張りだこなくらいなのに、そっから先、つまり電波メディアの仕事やツアー級の仕事には縁がない印象。

なんでかって言うと彼、来ない系の事故が多すぎるのだった。遅刻に対しての意識でいえば日本よりだいぶ寛容なアメリカではありますが、とはいえ現場に来ないことには天才っぷりを披露することもできないし、あと仕事の規模が大きくなればなるほど、関係者はリスクを排除したがる傾向にあるので、やっぱ怖くて頼めないんだと思う。

昨年末にもAは、2ステージある仕事の1ステージ目を遅刻して飛ばして、しかも終演3分前くらいに、すごい陽気なキャラクターだもんで「フォー! きょうは超満員だぜー!」って叫びながらステージに登場してきて。メンバーはみんな爆笑で迎え入れてたけど、あれ何人かは腹のなかでかなり怒ってたんじゃないかなー。

それでそのバンドのリーダーに「A大丈夫なの? ちょっと心配」って話を振ったところ、どうやらメンタル方面で不安定なところがあって、そのせいなのかどうか、ドラッグの量が増えてる、ドロドロになるまでやっちゃう、って話だった。ほんとに腕前は飛び抜けてすごい奴なんで、凡人の私からするとほんと、うーん、もったいない。

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