ドラッグで自滅する凄腕ミュージシャンを見て、凡人は「なんでまた」と今日も嘆く

地元の友達に「ジャンキーのおじさんの写真を撮りたいんだけど、どこ行けばいるかな」って聞いたら「Mytle-Wickofの広場にいつもいる」と言うので来てみたのですが、厳冬期につき誰一人おらず。そりゃそうか。(Photo by Gen Karaki)



あと来ない系でいうと、グラミー賞タイトルでも演奏経験のあるベーシストのB。日本にいるときから名前を知っていたビッグネームで、一時はアリーナクラスのツアーミュージシャンだったのに、いまは街場の、へたしたら私と競合するくらいの仕事をしているので、なんでだろうとは思っていた。それで最近、生徒さんを取って講師業を始めたんだけど、その評判がどうにも芳しくない。

友達が生徒になったんで様子を聞いてみたら、メールの返事が返ってこない、待ち合わせに来ない、もう無理、みたいな。Aと違ってマリファナとお酒だけみたいだけど、酔っ払ってる状態がデフォルトになっちゃってるらしくて、ドラッグと仕事減少、どっちが卵でどっちが鶏なのかはわからないけれど、バッドスパイラルに入ってる感じは否めない。もしあの腕前が自分にあったら正直、無敵だと思うんだけど。もったいない。

もしくはNYのシーンではブッキングクイーンとして有名なCちゃん。主催イベントは続いてるのに彼女の姿が見えないので聞いてみたら、薬物中毒の更生プログラムに参加しているとのこと。えーあんな快活だったのに、と意外だったのだけれど、それ以上に意外に思ったのは、彼女が治療を受けているのがアルコール中毒だったこと。

ここブルックリンでは4年前からマリファナが非犯罪化(違法だけど逮捕・起訴しませんと司法が宣言した状態)されて、事実上の解禁となっているし、各種イリーガルだって、手に入れたければより取り見取りだっていうのに、なんでまた、アルコールなんかで……。と思わなくもないのだけれど、やっぱりアルコールってドラッグのなかでも危険で強力な部類に入る薬物なのだった。それを再認識させられる出来事だった。

「なんでまた」といえばコデインだ。自分の直接の知り合いでは、Jっていうラッパーの奴しかやってるのをみたことがないけれど、全米規模でいえばたぶん、2010年代にもっとも流行ったドラッグとして記録されることだろう。簡単に言えば咳止めシロップをスプライトで割って飲むんだけど、トラップのPVや歌詞に登場するせいで、かっこいいものとして人気が拡大した。

このリーンとかシザップとかダブルカップとか呼ばれているコデイン、どうして「なんでまた」案件なのかといえば、なんのことはない、自分が中高生のとき、ひとつ上の世代で流行した新ブロン液と同じ成分なのだった。あのころ高校がある駅前の薬局には軒並み、「未成年にはブロン販売しません」って貼り紙が掲出されたりして、そしてハマった先輩たちは全員受験に失敗していた。

21世紀にアメリカくんだりまで来て、いちばんイケてるドラッグとしてメディアを賑わせているのが、30年も前に極東の子どものあいだで流行ってたチャチなドラッグだったのだから、「なんでまた」って気分にもなろうってもんです。ほんとはオピオイドや合成カンナビノイドの話も書きたかったけど、字数が尽きましたので、またいつか。




唐木 元
ミュージシャン、ベース奏者。2015年まで株式会社ナターシャ取締役を務めたのち渡米。バークリー音楽大学を卒業後、ブルックリンに拠点を移して「ROOTSY」名義で活動中。twitter : @rootsy

◾️バックナンバー
Vol.1「アメリカのバンドマンが居酒屋バイトをしないわけ、もしくは『ラ・ラ・ランド』に物申す」
Vol.2「職場としてのチャーチ、苗床としてのチャーチ」
Vol.3「地方都市から全米にミュージシャンを輩出し続ける登竜門に、飛び込んではみたのだが」
Vol.4「ディープな黒人音楽ファンのつもりが、ただのサブカルくそ野郎とバレてしまった夜」
Vol.5「ドラッグで自滅する凄腕ミュージシャンを見て、凡人は『なんでまた』と今日も嘆く」
Vol.6「満員御礼のクラブイベント『レッスンGK』は、ほんとに公開レッスンの場所だった」

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