ハリウッドが生んだ変人、ジョン・マルコヴィッチの貴重なインタビュー

Netflixのオリジナルムービー『ベルベット・バズソー:血塗られたギャラリー(原題:Velvet Buzzsaw)』に出演したジョン・マルコヴィッチ(Claudette Barius/Netflix)


キャリアの初期から続くマルコヴィッチの演技を、「凶暴なヴィジョンの虜となった、冷酷で妄想的な美学だ」と、彼に魅了されたある評論家は表現した。『危険な関係(Dangerous Liaisons)』(1988年)で演じた冷酷な色魔は当たり役だった。『ザ・シークレット・サービス(In the Line of Fire)』(1993年)でのカメレオン的な暗殺者役は、オスカーにノミネートされている。ジェリー・ブラッカイマー製作の『コン・エアー(Con Air)』(1997年)で演じたシリアルキラーのサイラス・ザ・ヴァイラスは、仲間の殺人犯に「お前の仕事を気に入った」と言う。また時には、『アートスクール・コンフィデンシャル(Art School Confidential)』の変わったアーティスト、『ザッツ★マジックアワー ダメ男ハワードのステキな人生(The Great Buck Howard)』の風変わりな奇術師、コーエン兄弟の『バーン・アフター・リーディング(Burn After Reading)』で演じた変わり者のように、邪悪さを抑えて変人さを強調した役も演じている。そしてチャーリ・カウフマン脚本、スパイク・ジョーンズ監督のシュールな『マルコヴィッチの穴(Being John Malkovich)』(1999年)は、自分自身を演じるという珍しい作品だった。「マルコヴィッチ意外に考えられなかった。彼は不可知な存在で、作品にフィットすると思った。彼の目を直視することができず、彼の頭の中で何が起きているかもわからない。遮断されてしまうのだ」とカウフマンは言う。彼は正に、シチュエーションや映画作品にかかわらず、ハリウッドの生んだ代表的な変人といえる。

サンプル
『危険な関係』で共演したミシェル・ファイファーと
photo: Snap/REX/Shutterstock

しかし実際に彼を目の当たりにすると、彼の印象はやや異なる。かつての農場を利用した彼の家は、飾り気がなく広々としている。ステンレスで作ったキッチンやタイル張りの大きな暖炉付きのダイニングルームがあり、寒いとまでは言わないが涼しい感じがする。玄関ホールから彼は、キッチン、エスプレッソマシン、マールボロライトの箱、裏庭のパティオに目を移す。パティオでは、20年来のパートナーであるイタリア系フランス人のニコレッタ・ペイランとランチを共にする。アジア文化の学者でもあるペイランは1989年、『シェルタリング・スカイ(The Sheltering Sky)』の撮影現場で監督のベルナルド・ベルトルッチのアシスタントをしていた時にマルコヴィッチと出会った。彼らの2人のティーンエイジの子どもたちアマンディンとルーイも、パティオに姿を現す。彼はとても上品かつ礼儀正しく、誰も耳にしたことがないような言葉で時折優しく話しかける。「私の部屋にスズメバチがいるの」と訴えるアマンディンに対して彼は、「ああハニー、どうすればいいかわかるだろ? 懐中電灯で叩いて殺してしまえばいいんだよ」と答える。彼の言葉の中には、暴力的な響きは全く感じられなかった。

彼は普段着でインタヴューに応じた。今日は着慣れたルーズなジーンズの裾を折り返し、白のソックスにブルーのオールスターのハイカットスニーカーを履いている。上はゆったりとしたグレーのTシャツで、カジュアルなスタイルだ。赤ワインを好むが、飲む量は人並みだ。「毎日少し飲んでいるかって? それが“少し”かどうかわからない。ボトル半分ぐらいか? それで満足できる夜もあるが、もっと進む夜もある」とマルコヴィッチは言う。数年間禁煙していた彼だが、2008年のある晩、ネットサーフィンをしながら悪徳投資家バーニー・マドフが手錠をかけられた写真を見つけた。「ちょっと出かけてくる」と妻に告げると、車で店に行きタバコを1箱買って帰った。彼はマドフに多額の金を預けていたのだ。マドフの事件は、マルコヴィッチに喫煙を再開させただけでなく、もっと仕事を増やす効果もあった。「クアラルンプールかどこかで演じるように、軽い感じで仕事に取り組んでいる場合ではなかった。」

米国? 彼はその考えを気に入らないだろう。ナンセンスだ。「米国は何から何まで不快だ。多くの文化的な不協和音、政党同士の誠意のない意見交換、そして礼儀の悪さ。あるテレビ番組で2人が怒鳴り合っていた。あれでは問題は解決しない。一種の病気といえる。ある種の奇妙な精神病だ。私の言っているのはある意味で戯言かもしれない。私はテレビを見ないし新聞も読まず、投票にも行かないから。しかし本当に、どう嫌いになればいいのだろう? 29歳の時、私はワーナー・ブラザースにオフィスを構えていたし。」

あらゆる意味で、彼は葛藤を乗り越えて活動しているようだ。時には高尚なレベルに達し、どんなものからも酸素を絞り出せるなどと彼は過去に言ったかもしれない。例えば彼はかつて「一般大衆に認識されているものはクソだ。彼らの考えにも吐き気がする。映画は金のためだけにやっている」と発言したという。しかし今日の彼は「そんなことは言っていないと思う」と言うと黙り込み、それ以上は口を開かなかった。元妻のグレン・ヘドリーについてはどうだろうか。ヘドリーは、マルコヴィッチが『危険な関係』で共演したミシェル・ファイファーと不倫を始めたため、彼の下を去った。ヘドリーはマルコヴィッチを「諸悪の根源」と表現したという。「ああ、ただの皮肉だろうと思った」と彼はのんきに語る。「ミシェル・ファイファーが私に挨拶したとは信じがたい。彼女が印象的でないという訳ではないが、神のみぞ知る、だ。私はある意味遮断した。つまり、私が他人のことを考える時、自分が相手に関わっているとはみなさない。私が他人を堕落させることはない。私の存在で相手に迷惑をかけることはない、ということだ」と彼は言う。「おそらくその言葉通りだが、自分のことを堕落の根源だと思っているかというと、全く違う。たぶん辛辣なんだろう。しかし我々は時折、フォークナーの言うように、一連の出来事とそれが引き起こす悪影響についてよく考えるべきだ。」

Translated by Smokva Tokyo

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