小林雅明が論じる「リアリティTVラッパーの象徴的存在、カーディ・Bは本当に新しいのか否か?」

そして、インスタグラムやリアリティTVを通じ、彼女のイメージを明け透けで剽軽で嘘のつけない人として固めてきた人たちなら“got a bag and fixed my teeth(まとまったお金が入ったから歯を治してもらった)”とか“Rollie got charms. Look like frosted Look flakes”といった一節にも反応するだろう。後者は、ロレックスの腕時計に埋め込まれたダイヤの煌めきに、朝日を受けてキラキラするシリアルの表面の糖衣の粒を重ねあわせたのだろう。

「自分を最強のリリックの書き手として紹介したことは一度もない、みんな期待しすぎ」とカーディは言う。彼女は客演も積極的に行う人ではあるものの、確かに純粋にリリックに対してよりも、SNSで発信される性生活に至る極私的な些細な言動のほうにますます注目が集まり、メディアなどもその言動を裏づけるようなリリックをあとから探しているような流れとなっている。カーディ・Bほど、自分自身のリアリティTV化を推し進めているラッパーは他にいないだろう。

Edited by The Sign Magazine

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