「靴下で世界に幸せを」Happy Socks創業者のクリエイティブな生き方

左から、クリエイティブディレクターのヴィクトール・テルとCEOミカエル・ソーデリン(Photo by Rolling Stone Japan)

カラフル&ポップなデザインが世界中で愛されている、スウェーデン発のソックス&アンダーウェアのブランド「Happy Socks」から、ザ・ローリング・ストーンズとのコラボレーション商品が発売された。来日したブランド創設者である二人に話を聞いた。

ストーンズのトレードマークであるロゴ(Lips and Tongue)をモチーフに、Happy Socksの定番型や色とブレンドしたソックスは全部で6型。キッズコレクションと、ギフトボックスも同時に発売されストーンズファンの間でも話題を集めている。昨年はビートルズとのコラボレーションも行なったHappy Socksのデザインには、ロックミュージック〜ポップカルチャーと同様、自由と平和を尊重する精神が貫かれているのだ。

日常のありとあらゆるモノにインスパイアされ、遊び心たっぷりのデザインで人々を楽しませ続けるHappy Socks。そのクリエイティブにはどんな秘密が隠されているのだろうか。来日中のデザイナー、ヴィクトル・テルと、協同経営者のミカエル・ソーデリンに話を聞いた。

──元々はグラフィックデザイナー、イラストレーターとして活躍していたヴィクトルと、広告業界で長年活躍していたミカエルが、ソックス&アンダーウェアのブランド「Happy Socks」を共同で立ち上げたのは、どんな経緯だったのでしょうか。

ヴィクトル:仕事の関係上、グラフィックデザイナーをやっているときからアパレル業界にも出入りしてたんだけど、ソックスに関心がある人ってあまりいないし、そこに焦点を当てているブランドもすごく少ないってことに気づいたんだよね。これ、ひょっとしたら僕の持っているグラフィックデザイナーとしての特性を、ソックスのデザインに適用できるんじゃないかな? って閃いた。それで試し始めたのがキッカケだったんだ。

今では様々なブランドがソックスにもデザインを施すようになったけど、11年前は全く違う状況でね。かなりベーシックなデザインしかマーケットには存在していなかった。だから、僕らのやり始めたことはかなり先駆的だったんだ。

ミカエル:自分たちのライフスタイルや理想のイメージを、ソックスに反映させるなんてこと、当時は誰も思ってなかった。だからこそ僕は、そこに可能性を見出したんだ。ヴィクトルが僕のところにアイデアを持ち込んできて、そこから「Happy Socks」の立ち上げまではあっという間だったな。3週間で会社の登録も終わり、6000足のソックスを生産していたよ。

ただし、「カラフルなソックス」を世間に周知させるまではチャレンジの連続だったね。本当に小さなブティックからスタートして、デパート売場まで辿り着くのに長い時間がかかった。とにかくマーケットを変え、人々の認識を変えていくことは非常に困難だったし、同時にやりがいのあることでもあったよ。


東京・原宿にあるHappy Socks直営店

──「Happy Socks」が、他のソックス&アンダーウェアとは違う点はどんなところにありますか?

ヴィクトル:もちろん、まずは「デザイン」。そして、そこから「ライフスタイル」へと紐づけていくこと。僕らがソックスだけでなく、スイミングウェアやアンダーウェアも作っているのは「ライフスタイル」を提唱するためだ。そして、身に着ける人の中に「感情」を呼び起こしたということが、我々にとって何よりも重要だったと思っている。身に付けるだけで楽しい気持ちになるし、そうすると1日ハッピーでいられる。ユーザーを自然と笑顔にさせたのは、我々Happy Socksにしかできなかったことじゃないかな。

──基本的に他人があまり目にしないアンダーウェアやソックスに、「遊び心」を持たせるというアイデアが何よりユニークだなと思います。オシャレは他人のためでなく、自分のテンションを上げるためにあることを思い出させてくれるというか。

ヴィクトル:君のいう通りだよ。まずは自分自身の気持ちを高めることが大切なんだ。朝起きてカラフルなソックスを履いたり、カラフルなアンダーウェアを身に付けたりすると自然とハッピーな気持ちになれるよね。1日の始まりがハッピーなのは、とても素晴らしいことだと思わない? まずは自分がハッピーになる。それが、周りの人をもハッピーにもするんだ。

──ソックスのデザインは、ピザやハンバーガーのような食べ物から、犬、猫、ヒョウ柄といった動物まで、日常にある様々なものがモチーフになっていますが、アイデアはどいうところから閃くのでしょう。

ヴィクトル:僕は世界中を旅しているので、そこで出会った素敵な人たち、自然や建築物、そういったものにインスピレーションを受けている。もちろん、日々の暮らしの中で見つけた、本当に何気ないモノやコトがデザインになることだってあるよ。つまり、ありとあらゆるものがインスピレーションの源となるわけだから、何に対しても常にオープンでいることを心がけているんだ。

──アンディ・ウォーホルやキース・ヘリングなど、ポップアートの作品を彷彿とさせるデザインが多いですよね。

ヴィクトル:好きなアーティストやデザイナーを挙げていったらキリがない(笑)。ウォーホルやヘリングからの影響はもちろんある。僕の父も広告に携わっていたし、デザインスクールの校長でもあったので、子供の頃からアートやデザインが身近にあったんだよね。

あと、ビートルズも僕にとって重要な要素の一つだ。実は父がビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン』で、“Lucy in The Sky With Diamonds”のパートに携わっていたんだよね。全てが繋がっているんだ。


アンディ・ウォーホルの有名な“バナナ”をデザイン(Happy Socks)

ミカエル:ヴィクトルはアートやデザインのサラブレッドなんだよね(笑)。

彼がどのようなものに刺激を受け、どのようにアウトプットしているのか……本当に謎だよ。しかもすごいのは、彼の生み出すどのデザインがマーケットとの親和性も同時に高いということなんだ。色合いやパターンを見ていると、「これは売れる!」って毎回確信するんだよね。そこがHappy Socksの強みというか。だってみんなが好きになるデザインなのだからね。どんなソックスと並べても、ヴィクトルの手がけたデザインがずば抜けているのはそこなんだよ。

──クリエイティビティを磨く上で心がけていることはありますか?

ヴィクトル:我々は2人組で、それぞれ違う視点から物事を見てきたんだよね。つまり、誰かとコラボレートすること、違う要素を組み合わせて見ることが、クリエイティヴにとってとても重要だと思う。

──お二人は、プライベートでもよく日本に来られるそうですが、どんなところが気に入っているのでしょうか。

ヴィクトル:僕ら本当に日本が大好きなんだよね。何かにつけて来られるチャンスを伺ってる(笑)。特に景観が最高だよね。すごく伝統的な建物の隣に、とってもクレイジーな家が建っていたりするじゃない? そういう、違う要素のミクスチャーが興味深い。あと、人口1000万人を超える大都会なのに、これほどまでに落ち着ける場所なのは一体どうなってるんだ? っていつも思う。

ミカエル:東京では隠れ家的な、小さなレストランを見つけるのも大好きだね。小さな入口をくぐると、カウンターだけのお店とか、外観と内観が全く正反対のお店とか、本当にエキサイティングなんだ。

ヴィクトル:何度訪れても必ず新しい驚きがある、数少ない場所だよね東京は。昨日は高円寺へ行ってトンカツを食べたよ(笑)。もう42年間もそこでお店をやっていて、2階に住むところがあるって教えてくれた。ローカルで、ホーミーで最高だったな。

──ところで、今回ローリング・ストーンズとのコラボレーション商品を3月に発売されましたね。

ヴィクトル:そうなんだ。会社がどんどん大きくなって、彼らのようなアイコニックな存在ともコラボレーションが出来るようになったことを本当に誇りに思ってる。しかも、最高のビジュアルイメージであるロゴ(Lips and Tongue)を、僕たちのデザインとして取り入れられるなんてね。やっていて本当に楽しいプロジェクトだったな。



──キッズサイズも展開していますが、どんな人たちに履いてほしいですか?

ミカエル:ストーンズに限らず、Happy Socksは「カラフルな人」に身につけてほしい。想像力や表現が豊かで、既成概念にとらわれない人たち。そして、常にハッピーでありたいと思っている人たちに身につけてほしいブランドなんだよね。


──昨年はビートルズともコラボレーションをしていますよね?

ミカエル:そう。ビートルズも、そして今回もストーンズも、LPと同じ大きさのギフトボックスを作ったんだ。これからもっともっと、僕らの憧れのアーティストとコラボレーションを続けていって、このギフトボックスをレコード棚に並べることが出来たら最高だなって思っているよ。

ヴィクトル:音楽は僕らにとって、最高のインスピレーション源だね。先日も恵比寿にある「Bar MARTHA」へ行って、そこのレコードコレクションを眺めながら「次はこの人たちとコラボしたいなあ」なんて考えていたよ(笑)。



──ちなみに、最近のミュージシャンで注目しているのは?

ヴィクトル:カート・ヴァイルは最高だね。LAに移住してから、常に新しい音楽をチェックしているよ。70年代ロックも好きだしヒップホップも……なんでも聞くんだ。

──ところで、こういうカラフルなデザインは国によってもリアクションの違いなどあるんですか?

ミカエル:それが不思議なのだけど、どの国でもそんなに変わらないんだよね。きっと「ハッピーになりたい」という気持ちは世界共通なんだろうね。

──では最後に、今後の展望についてお聞かせください。

ミカエル:今後もたくさんの小売店を、より良いロケーションにオープンしたい。日本においても、あと3店舗作るつもりだ。我々はHappy Socksを2008年に出してイノベーションを起こした。これからもイノベーションを起こし続けていく「先駆者」であり続けることが大事だと思っているよ。単に買い物をするだけでなく、店に訪れることそれ自体が「体験」となるような、そんな店舗を増やしていきたいね。


Happy Socks
カラフルなデザインのソックスというちょっとした⼩物を取り⼊れ、ライフスタイルの中でおしゃれなアクセントをつけていこう、というコンセプトのもと、2008年4月、スウェーデン・ストックホルムで設⽴されたブランド。昨年はブランド設⽴10周年を迎え、現在90ヵ国以上の国にて販売されている。https://www.happysocks.com/jp/


ザ・ローリング・ストーンズ コレクション 全6型 各1,500円+税
サイズ:23-25.5cm / 26-29.5cm
・3-PACK GIFT BOX 5,000円+税
・6-PACK GIFT BOX 10,000円+税

・キッズコレクション 全4型 各900円+税
  サイズ:9.5-11.5cm / 12-14cm / 14.5-16.5cm / 17-19cm / 19.5-21.5cm
・4-PACK KIDS GIFT BOX 4,000円+税
  サイズ: 9.5-11.5cm / 12-14cm / 14.5-16.5cm

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