[ALEXANDROS]の強度を支える白井眞輝「ギターが減っても、その中で主体性を持って何ができるか考える」


「世界一のロックスター」という幻影のようなもの

ー[ALEXANDROS]のここ何年かの歩みって本当に劇的なものだったと思うんです。CMや街頭で流れているのを耳にする機会も増えましたし。こういうラディカルな状況の変化を白井さんは、どんな風に受け止められているんでしょうか?

いや、めちゃくちゃ楽しいっすよ。普通に一般のサラリーマンとして働いていて、それからロック・バンドとしてデビューして、8年でこんな状況になったっていうのは……人生、面白いなぁって思います(笑)。これからも変わらない部分と変化していく部分をもって自分らしさを発揮していきたいなぁって思うし。そういう意味でいうと、今回のアルバムは今まで以上に海外を意識して作ったし、「これが[ALEXANDROS]なんだ!」と、世界に自信を持って宣言できる、また新たなファースト・アルバムが作れたんじゃないかなって思います。作ってるときから、ずっとワクワクしてましたもん、常に。すごく手応えがありました。

ー海外に行くことって、大きな変化じゃないですか。「売れちゃったね」「なんか違うね」というようにファンがこの大きな変化の最中に離れて行っちゃう恐怖みたいなものってないんですか?

あんまりないですね。僕らは売れたいですし、セールスが好調なのは大歓迎ですよ(笑)。やりたくてやってるし。一番自分に問いかけなきゃいけないのは、人の目を気にして、それを中心においてやって、なんとか成功しても……それが、実際のところ、本当にうれしいのかってことなんですよ。うれしいんだったら、それはその人の人生なんでいいと思うんですけど。ただ、俺らは誰かに過剰にウケるために曲を書きたくはない。「ウケるように書いたんだから、それはウケるでしょ」ってなっちゃう気がする。

ーそうなるとつまらなくなっちゃいますよね。

クリエイティヴィティがだんだん下がってきちゃうんで。そうなってくると結局、行き着くところは、ただ単に続けていくか、どっかで飽きたら「終わり!」ってなるかどっちかだと思うんで。バンドが日の目を見なくてつらかった時期はありましたけど、バンドを続けていくなかで、退屈に思ったことは一度もないんです。楽しい方向にだけベクトルが向いてればなんでもいいですから。

ーメンバーの皆さんについても伺いたいんですが。白井さんは高校時代から、川上さんのことをよく知っていて。変化みたいなものって、何か気づくことありますか?

変わってないですねー! 体重の増減はありますけどね(笑)。言ってること自体は、まったく変わってないです、本当に。高校生の頃は、単なるオアシスのコピーバンドでしたから、まだ[Champagne]でも、プロ目指すバンドでもなんでもなかったですけど、その頃から随分こだわりが強い人だなぁーって思ってました。ここ数年で変わったことがあるとすれば、年々自分のやりたいことへの忠実さは強くなってきている感じはしますね。どんどん明確になって研ぎ澄まされてきている感じ。

ー磯部さん、庄村さんに関してはいかがですか? お二人のことはどう見えてます?

ヒロ(磯部)はあんまり変わらないタイプです。実は洋平よりもずっと芯が硬い感じがするんですよ。今は物腰柔らかくなりましたけど、出会った当初はもっと尖っていて。洋平もヒロもあんまり自分の周りにはいないタイプだなって思うんですよね。バンド・メンバーからはすごく影響を受けているなって思います。庄村に関しては、逆にけっこう変わったかもしれないですね。すべてのことに関してなんですけど、音楽的な課題にぶつかってメンバーに厳しく言われて、そこを乗り越えた上での「今」があるから、強くなったというか。目つきも変わったなって思いますしね、昔はもっと優しい目をしてたんですけど、今は鋭いですね。最近も身体を鍛えはじめたりとかして。今よりもずっとパワーヒッターになろうとしているのかも。ドラムを叩きまくってるせいなのか、それとも筋トレの成果が出ているのか、どっちかははわからないですけど、体格もがっちりしてきて、頼もしいドラマーになってきたなと思います。

ーなるほど。自分自身のことってなかなか見えにくいとは思うんですけど、ご自身は変わったと思われますか? なかなか答えにくい質問かもしれないですが。

俺はどうですかね。古い友人に会っても「あんまり変わらないね」って言われるんですけど。でも逆にいうと自分は自分で変わったと思ってるんですよ。さっき言ったアメリカナイズの話もそうですし。あとは鍛えるようになったり……。

ー音楽への向き合い方も変ったんじゃないかと思うんですけど、どうですか?

変わりましたね。デビュー当時は、パンク精神がベースで「当たって砕けろ!」みたいなところでやってたので。ギター歴が極端に短いのに、いきなりデビューって、そんなことないじゃないですか、普通。周りにはすごいテクニカルなギターを弾ける人がいて。そいつらに「どうやって勝っていこう……」みたいな。「いや、いいから練習しろよ!」って話なんですけどね(笑)。もちろん練習もしたんですけど、どうしても当たって砕けろ的な極度にパンキッシュなライブばっかりやってたんで(笑)。そういう時代もあったし、そこを経てちゃんと弾こうって思った時期もあったし。今はもうちょっと弾きたいように弾こうっていう気持ちですね。

ー初期のスタンスに近いところがあるけれど、きちんと積み上がっているものがある。

そうですね。螺旋階段と一緒で、高さは違うけど同じ位置に戻ってきた感じですね。

ーいろいろとお話を伺ってまいりましたが、最後に白井さんがいま考える「世界一のロックスター」ってなんですか?

世界中のみんなが知っていて、オーディエンスを必ず熱狂させるようなバンドってことですかね。俺はレッチリを世界一のバンドだと思うし、メタリカも世界一のバンドだと思う。メディアも勝手に彼らを世界一のバンドだって無責任に言う。だけど、本人たちや彼らのファンは「これが世界一のバンドだ!」って思いながらやったり、見てたりしないですよね、おそらく。そこを目指してはいるけれど。その冠は幻影みたいなもので、たどり着こうと思ってもたどり着かない。そんなことより、ひたすら自分を磨いて、チャレンジしていけば、気がついたらそうなっている……というだけの話じゃないですかね。

MASAKI SHIRAI (白井眞輝)
クリーントーンを活かした繊細なプレイも歪みのきいたバッキングも得意とする[ALEXANDROS]のギター。 神奈川県出身。川上と庄村とは高校が同じで在学時には、オアシスのコピーバンドをやっていた。2007年、路上ライブをしていた当時のメンバーに出会ったことがきっかけで、バンドに加入。





「Pray」
[ALEXANDROS]
※映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』日本版主題歌
ユニバーサルJ
配信中

Sleepless in Japan Tour
6月15日 埼玉県  さいたまスーパーアリーナ
6月16日 埼玉県  さいたまスーパーアリーナ

・Asia Tour
Sleepless in Shanghai
6月21日 上海 MODERN SKY LAB

Sleepless in Beijing
6月23日 北京 Beijing Omni Space

Sleepless in Jakarta
6月28日 ジャカルタ To be Announced

Sleepless in Bangkok
6月30日 バンコク Moon Star Studio 1

Sleepless in Hong Kong
7月5日 香港 Music Zone @ E-Max

Sleepless in Taipei
7月7日 台北 Legacy Taipei

Sleepless in Kuala Lumpur
7月19日 クアラルンプール Bentley Music Auditorium

Sleepless in Seoul
7月21日 ソウル MUV HALL

[ALEXANDROS] オフィシャルHP
https://alexandros.jp


Rolling Stone Japan vol.04掲載

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