[ALEXANDROS]の強度を支える白井眞輝「ギターが減っても、その中で主体性を持って何ができるか考える」


自信をなくした時期とか苦労された時期の呪縛

ー「研ぎ澄ましていかないといけない」とか、そういうストイックなことを考えてしまいますよね。

そうです。甘い考えだとやっていけないぞ、みたいな。でも、そういう考え方って実はあんまり生産的じゃないんですよね。つまんない思いをして何かを成し遂げたところで、果たしてそれはみんなが面白いものになっているのかな、みたいな。

ー白井さんが以前のインタビューでおっしゃっていた自信をなくした時期とか苦労された時期の呪縛から解き放たれた感じがありますね。

そうですね。実際その時期も考えようによっては楽しむこともできたと思うんですよね。技術不足を指摘されてムカつくのはどこの国でも一緒だと思うし。「その音、いまいちだよ」と言われていい気持ちがする人はいないじゃないですか。でもそこでチャンスと捉えて、「あいつらを見返してやる」みたいな気持ちになれたら壁を乗り越えられるんじゃないかなぁって思えたら、アンプのつまみをひねる手の力も変わるというか。ものは考えようだなってアメリカに行って一番感じたことですね。現地でやってる他のバンドやオーディエンスを見ても刺激がありました。日本人なりの楽しみ方と現地の人たちの楽しみ方って違うんだなって。

ー日本だと様式美みたいな感じもありますしね。

日本はある種、形式張ってるのかなと思いましたよね。着替えてタオル巻いて準備してみたいな感じが。もちろん誰でも楽しみ方は自由なんでそこをどうこう言うつもりはないけれど。ステージの上から見ていると日本人は動きが一緒だなって思っちゃうし、それに対してアメリカ人は動きが自由だなって思うし。暴れているやつもいれば、静かに観ている人もいて、それがすごい発見で。楽しみに来ているんだなっていうのが伝わって来る。もちろん当日のアーティストの出来不出来によってリアクションが変わるから「クソつまらないじゃん、今日」みたいな正直な反応をすることもあるんでしょうけど。

ーでも確実に楽しみに来ている感じが伝わると。

そう。自分が好きなバンドを観に行くんだから、楽しいに決まってるじゃないですか。なんか初見で分かるんですよね。どんなもんかな、って僕たちを観てる感じが。でもあとは「今日楽しむために来てるんだ」って決まってる以上は、そのなかでどれだけ楽しむかの勝負みたいな。ステージの上に立ってる人も、オーディエンスもその感じがあったのは新しかったんですよ。日本にいながら、その感覚にはたどり着かなかったので。やっぱりオーディエンスによってステージの上の演者のモチベーションが変わってくるんですよね。お客さんが煽ってくれればこっちもそれだけ熱が入るし。こっちが開いていかないとお客さんも開いていかないし、みたいな。

ーじゃあ、マリンスタジアムでのライブで、堂々とメロイック・サインを掲げたりしたのも、まずは自分から楽しもうとした思いがあったと。

そうですね(笑)。俺が単純にその景色……自分のパフォーマンスをオーディエンスがつられてやるっていうのを見たかっただけなんですけどね(笑)。まあ、なんでも自分が思ったことを実現していくか、やりたいと思うことをやるか・やらないかの話だけだと思うので。例えば、誰かに「それ寒いからやめたほうがいいんじゃない?」って言われて、「じゃあ、やめようか……」というのはもったいない気がするんですよ。自分がいいと思えば、やる。それだけの話で。

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