ドレスコーズ・志磨遼平の創作論「罪深い人の罪深い作品に僕らは共感する」

志磨遼平(ドレスコーズ)(Courtesy of キングレコード)



僕はめちゃくちゃ俯瞰的

―音楽をはじめとするアートは、本来、法律や道徳の外側にあるものです。だから、薬物事件を起こしたピエール瀧さんの音楽を法や道徳で裁いて、販売停止にするのは愚かな行為です。そして、法や道徳の奴隷になってしまっている現代の日本人こそ、法や道徳の外にあるアートを享受したほうがいいし、そうした音楽を聴くことが滅ばないための唯一の手段だとさえ思っています。そして、志磨さんがこのテーマを音楽でやっていること自体が大きなメッセージなんだと思います。

確かに、それこそキリスト教じゃないですけど、誰もがある程度の罪を犯しながら生きていると僕は思っているんです。「作品に罪はない」っていうセリフをあの事件のタイミングでよく聞いたじゃないですか。でも全然罪はあるんですよ。良い作品っていうのは絶対に罪をはらんでいて、罪深い人の罪深い作品に僕らは共感するんであって。自分にも思い当たるわけです。だから作品っていうものがとても綺麗なものだとは、音楽は無罪だとは、僕は思わない。音楽こそ、その人の全部の表現であるべきなので。音楽っていうのはすごく万能、ちょっと言い過ぎですけど、すごく便利なものなので。僕はそれを「メッセージを伝える手段」というよりは記録媒体として捉えているんですよね。だからメッセージがあるかというと、自分では分からないんです。やっていること自体、僕が音楽をやるっていう姿勢自体が、人から見た時に何がしかのメッセージに見えるかもしれないけれど。でも僕個人は何かの主張をする時の、キャンバスみたいなものとしては使わない。もっとレポート用紙とか、それこそ記録=レコードですよね。自分たちは今こういうムードの中で生きているっていうのを、たぶんこのアルバムもそうだし、あまり自分の主観を入れないように気をつけて作っている気がしているんですよね、昔から。

―なるほど。アルバムのテーマに話を戻すと、人類の滅亡後の次のステージとして、志磨さんはどんなものを想像しているんですか?

どうなるのかなと思っていろんな本を読んだんです。すごくバカ売れしたユヴァル・ノア・ハラリさんの『サピエンス全史』も斜め読みしました。まぁいろいろ読んだけど、大体書いてあることは一緒で、とにかく医学とか遺伝子工学がどこを目指しているのかっていうと、不老不死だっていう。そりゃ究極はそうだわなと。で、もし不老不死の生命が本当に実現するとしたら、それはもう人類、ホモ・サピエンスとは呼ばない、別の進化した種なんじゃないの?みたいな話なんです。だからホモ・サピエンスというのは一旦滅びて、死なない新しい種として新人類がこの後誕生するんじゃないかって。そこまでいくと自分が神と呼んだ存在に近いので、それをホモ・デウスと名付けようとハラリさんは言ってましたね。だから、僕らは人類の最後の世代になるかもしれないというところで、ちょっとテンションが上がったんですよ。そうか、これは書くしかないなと。これだけ続いた人類が、地球の地表を我がもの顔でのし歩いていた種族が、衰退していく瞬間に自分が立ち会っているとしたら、自分はアートをやっているわけだから作品にするしかないっしょ、っていう感じですね。

―実際に、自分の子供を自分の理想の子供にするために、遺伝子操作を行う“デザイナーベビー”が2015年に中国で誕生して物議を醸しました。人類の滅亡は既に具体的に始まっている状態とも言えます。

ハラリさんは、あと100年、200年のうちに不老不死は実現できるって書いているんです。そしたらリアルに僕らが、死ぬ最後の世代かもしれない。その後の世代は「死ぬって何?」っていう感じです。「死ぬって概念が昔あったらしいけど、ヤバくない? 無くなるんでしょ、消えて」って会話をするような時代がもうすぐ来る。それは、僕らが今戦争を知らずに「戦争してたってヤバいよね?」っていうのと一緒なんですよね。「戦争を知らない子供たち」って歌がありますけど、「死を知らない子供たち」がもうすぐ現れる。そういう空想ですね。

―そんな空想のもとで制作されたアルバム『ジャズ』のラストの曲が「人間とジャズ」。この曲はズバリ、人間が滅びゆく瞬間の曲なんでしょうか?

この曲を書いた時、ちょうどアルバムのアートワークの制作も同時に進めていて、ジャケットと同様、顔の消されたいろんな人の肖像画を何個か作ってもらったんですよ。で、その中にジプシーっぽい装束を付けた女の人の顔がヌルってなくなってる写真があって、それがポンって家のテーブルに置いてあったんです。で、その大昔のジプシーの女の人になったつもりで歌詞を書いてみたんですけど。

―人類滅亡がテーマのアルバムで最後の締めはどうくるんだろうって、聴くまでかなりドキドキしました。そして実際聴いてしばらく動けなかったです。

ありがとうございます。最後の曲、すごく綺麗ですよね。しかも最後の最後は今にも途切れそうな音で。あの最後、ちょっとしたトリックがあって。あのアウトロのピアノって3テイクぐらい録ったんですよ。で、どれも良いからテイクが選べなくて、3本全部同時に鳴らしてみたんです。そのうちの1テイクだけ、わざと半拍ぐらいずらしたんですよ。同じコードの中なので不協和音にはならないんですけど、あからさまに違和感があるそのリズムだったり、その音の並び方だったりがオルゴールみたいに聴こえるんです。オルゴールってゼンマイなので、最初は綺麗なテンポで鳴るんですけど、途中でテンポがどんどん落ちていって、トン、ト、トン……、トン―――、みたいに止まるじゃないですか。最後はああいう風にしましょうってなって。だから聴いていると、もう止まりそうな風に聴こえるのがすごく感動的で、本当にまさに今息絶えるっていう感じで。

―本当に感動的なんですけど、志磨さんの精神状態は大丈夫かなって(笑)。

アハハハハ。僕は全然健康的ですよ。こういうのを全部俯瞰できるので。そこに埋没する人ってたぶんいると思うんですけど、僕めちゃくちゃ俯瞰的なので。「人類滅亡するの? うわーやばい、曲作ろう」ってノリなんで。

―御身内が亡くなったとか、彼女と別れたとか、そういうキッカケから妄想が始まって、志磨さんはだいぶ追い込まれているのかなぁって(笑)。

意外と僕、アウトボード、外付けのHDみたいな部分が頭の中にあって。全部覚えてるタイプじゃなくて、何がしかの他の外付けのHDに記録してあるのを必要な時に引っ張り出す感じというか。あんまりオーバーロードみたいにならないほうではありますね。

―リリース日は去る5月1日、つまり令和元年の初日でしたが、これにも何か深い意味があるんですか?

レコーディングの終わりが見えてきた頃、“このままいくと4月末のリリースだな”っていう話になったんです。でも、「あれ? ちょっと待ってくださいね。5月1日、水曜日っす」みたいな話になって。「あれ? じゃあ新元号の初日に出せるじゃん」っていう。これもまた後付け。じゃあ乗っかっとこうかな?みたいな(笑)。







<INFORMATION>


『ジャズ』
ドレスコーズ
キングレコード
発売中

<初回限定盤(CD+DVD)>
<通常盤(CD+DVD)>
<LP盤(初回限定生産)>

[CD]全12曲収録 ※全形態共通
1. でっどえんど
2. ニューエラ
3. エリ・エリ・レマ・サバクタニ
4. チルってる
5. カーゴカルト
6. 銃・病原菌・鉄
7. もろびとほろびて
8. わらの犬
9. プロメテウスのばか
10. Bon Voyage(ドラマ「やじ×きた」主題歌)
11. クレイドル・ソング
12. 人間とジャズ

[DVD]「12月23日のドレスコーズ」LIVE映像収録
「12月23日のドレスコーズ」収録曲
1. 復活の日
2. この悪魔め
3. 人間不信
4. 或るGIRLの死
5. Lily
6. レモンツリー
7. a little song(ギターパンダ  提供曲)
8. おおハレルヤ
9. シスターマン
10. 宗教
11. JUBILEE
12. あなたには(舞台「三文オペラ」より)
13. 愛のテーマ
14. 1954
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En.1 Bon Voyage
En.2愛に気をつけてね
En.3 クリスマス・グリーティング

the dresscodes TOUR 2019
6月6日(木)東京 キネマ倶楽部 *SOLD OUT
6月9日(土) 札幌 cube garden
6月15日(土) 仙台 SENDAI CLUB JUNK BOX
6月16日(日) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK
6月22日(土) 福岡 BEAT STATION
6月23日(日) 岡山 YEBISU YA PRO
6月29日(土) 大阪 BIG CAT
6月30日(日) 名古屋 CLUB QUATTRO
7月6日(土) 横浜 BAY HALL
チケット料金 4,300円(ドリンク代別)
*小学生以上はチケット必要。
*小学生未満は保護者同伴に限り入場可。
https://dresscodes.jp/

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