往年の名曲で儲ける「カタログ・ビジネス」をレコード会社重役が解説

ーワーナーは膨大なバックカタログを所有していますよね。様々なジャンル、様々な楽曲ごとに対し、どのように戦略を適用しているのですか?

当然ながら、自分たちの強みを生かして、誰もが聴くであろうメジャー級のアーティストを、来る日も来る日もプッシュする。だが同時に、1990年代や2000年初期、しいて言うなら、大して長続きしなかったアーティストもいる。だけどそういうアーティストも2~3曲爆発的ヒット曲を抱えていて、ストリーミングでは今でも大人気だったりする。我々としては、そうしたヒット曲に注目して、ストリーミングでの人気を上げることが重要だ。どこでユーザーにこれらの曲を思い出させるか。最終的には、ファン層や持ち曲の人気度に応じて、楽曲ごと、アーティストごとに戦略を立てている。

ーCDやレコードの宣伝方法は、デジタルにどう活かされていますか?

我々はマーケットとともに進んでいくが、同時にマーケットよりも常に一歩先を行かなくてはいけないんだ。正しい人材配置をすることが大事になってくる。クリエイティヴな宣伝戦略や今日の消費者の動向、以前とは違うやり方で人々をどうエンゲージさせればいいか、しっかり理解できる人間を起用しながらね。アナログ盤のボックスセットを作ったとして、それをそのままストリーミングに移行しても上手くいくとは限らない。ユーザーの反応を予測して、どういう流れで商品をリリースするべきか、頭を使わないと。今年はレッド・ツェッペリンのプレイリスト・ジェネレイターを作ったけど、最近ではあれが一番成功した例だね。

ー以前よりも早いペースで取りかかるというのもポイントですね。

今は迅速に世の中に対応しなくてはならなくなった。楽曲がいきなり映画の予告編や、世界的に有名な広告に使われたり、あるいは流行のものと結びついたりするからね。我々の仕事は、そうした話題を大々的に拡散して、認知を高めることだ。例えば、ラモーンズの楽曲を使った広告がYouTubeで世界中に拡散して、何百万回も再生されたなら、広告のブランドと組んで、広告で流れている音楽が一体何なのか、彼らの顧客に伝える手段を考えることが重要になる。今では我々がしていることの大半が楽曲単位だ。ビッグな伝説的アーティストでも、はたまた一発屋で終わったアーティストでも、同じようなやり方だ。



去年はスピナーズの「ラバーバンド・マン」が『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の挿入曲として使われた。我々がそれを知ったのは日曜の夜で、月曜の昼にはすでに、スピナーズの新規プレイリストを作成して、いつでも公開できる状態だった。そのあと映画会社に協力してもらって、アーティストの名前を宣伝してもらった。楽曲もアーティストもマイナーだったからね。CDオンリーの時代にはこうはいかなかっただろう。今の時代だからこそ成り立つことだろうね。昔と比べると、旬の時期もあっという間に終わってしまうから、素早く立ち回らないとチャンスを逃してしまう。すぐに行動しなくてはならないんだ。

Translated by Akiko Kato

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