OGRE YOU ASSHOLE×コナン・モカシン対談:両者の考える「サイケデリック」

左からコナン・モカシン、OGRE YOU ASSHOLEの出戸学(Photo by Takanori Kuroda)

OGRE YOU ASSHOLE(以下、オウガ)とコナン・モカシンによるツーマン・ライブ『DELAY』が4月13日、東京・代官山UNITで開催され満員のうちに幕を閉じた。

『DELAY』はオウガがホストを務め、これまでマーク・マグワイア(エメラルズ)やミヒャエル・ローター(ノイ!/ハルモニア)ら、海外アーティストを招いて行ってきた自主企画。ニュージーランド出身のコナンは2010年のデビュー以来、レディオヘッドのツアーサポートやシャルロット・ゲンズブールのプロデュースなど、多岐にわたる活動でカルト的な人気を構築し、昨年は3rdアルバム『ジャズバスターズ』をリリースし話題となった。

この日のパフォーマンスは各人各様で、サポート・メンバーを率いて現れたコナンはソフトサイケからR&BそしてジャズやAORまで取り入れた妖しくも煌びやかなサウンドでオーディエンスを魅了、時折「小芝居」を散りばめるなど百戦錬磨の余裕を見せた。迎え撃つオウガも、15分に及ぶインプロビゼーションを展開した圧巻の新曲をはじめ、唯一無二のアンサンブルで時空を切り裂いていった。

今回RSJでは、興奮冷めやらぬライブの翌日に出戸学とコナンによる対談を敢行。お互いのライブやサウンドのこと、「最もサイケデリックだった体験」など、様々なトピックについてざっくばらんに語り合ってもらった。


─出戸さんはコナンの『ジャズバスターズ』を、年間アルバムのベスト1位に選んでいたんですよね。

出戸:そうなんです。楽曲やバンドの演奏ももちろん素晴らしかったんですけど、シンプルにコナンの声が好きで。

コナン:アリガト!(笑)



出戸:英語の出来る友人が、「このアルバムは音楽教師と生徒の禁断の愛がテーマで、しかも男同士の話だ」と言ってたんですけど、それは合っていますか?

コナン:もともと『ジャズバスターズ』は、幼馴染のブレイク・プレイヤーと僕の兄貴と一緒に『Bostyn’n Dobsyn』という映像作品とコミックを作り始めたところから始まっているんだ。もう20年も前の話だけど、今回その映画版を作ることを思いついてね。

ストーリーは君の言った通り。ドブソンという成績の悪い生徒が、単位を取るため教師のボストンに色仕掛けをするのだけど、ボストンはドブソンが女性だと勘違いして本気になっちゃう話なんだ。幼馴染がドブソンを、僕がボストンを演じていて、「ジャズバスターズ」というのはボストンが組んでいるバンドの名前なんだよ。で、このアルバムは『Bostyn’n Dobsyn』と連動した作品ということで、このバンド名とタイトルにした。なので、アルバムのレコーディングはいつも1人でやっているんだけど、今回は初めてツアー・メンバーとスタジオに入ったんだよ。


コナン・モカシン率いるジャズバスターズ、UNITの楽屋で撮影。(Photo by Yuki Kikuchi)

─夕べはコナンとオウガのツーマン・ライブでしたが、お互いの演奏はどうでした?

コナン:いや、それが終わってすぐ演奏を聴きたかったんだけどフロアがパンパンでさ。落ち着いて観る場所をなかなか探せなかった上に、色んな人に声をかけられたりしてちゃんと観る事が出来なかったんだ。ゴメン、次の機会を楽しみにしてるよ。

出戸:僕も出番前で準備もあって、半分ちょっとしか観られなかったんですけど、でも日本のバンドにはないテイストを感じましたね。例えば、演奏のテンションをグーっと落としてルーズにしていくところでも、アンサンブルとしてはちゃんと成り立っているのってすごいなと。あれだけ落とせるからメリハリがさらに付いているんでしょうね。「こういうやり方もあるんだな」と、すごく勉強になりました。

コナン:ほんと? 嬉しいな。いつも僕ら、セットリストとかあまり細かく決め込まずに、その場でやりたいことを選んで演奏しているんだよね。曲の構成もそれと一緒で、尺とかちゃんと決めてないからこそ「小芝居」なんかも挟む事ができるんだ(笑)。

出戸:そうそう! リズム隊に散々「盛り上げろ」って煽っておいて、コナンはその間にギタープレイヤーとお喋りしていたりして(笑)。そんな小芝居やルーズなパートをアドリブで作ったりできるのは、コナンの気持ちとバンドメンバーがすごく同調しているからこそ出来るんじゃないかなと。

コナン:何だろう、テレパシーみたいなものかな(笑)。今のメンバーとはかなり長く一緒にやってきたから、言わなくても通じる部分はあるのかも知れない。演奏が終わって、「次はこの曲をやるよ」とすら言わなくても、ちょっとさわりのギターを弾き始めたら「あ、次はこれだな」ってみんな分かってくれているからね。お互いを信頼し合っているんだ。

─そういう意味ではオウガも、PAエンジニアの中村宗一郎さんとまさに「阿吽の呼吸」というか。構成など細かく決め込まず、その場のノリで中村さんが「飛び道具」的にかけたディレイなどに反応して、バンドはバンドで自由にセッションのようなことをしていますよね。

コナン:へえ! そんな事してるの?すごい。PAブースにそんな「メンバー」がいたとは(笑)。

─中盤にやっていた新曲も、途中でめちゃくちゃ長いインプロビゼーションがあって……あれって15分くらいやっていたような。

コナン:演奏しててどんな気分だった?

出戸:お客さんの前で、あの曲を演奏するのは初めてだったんですけど、おっしゃったように「15分」を目指して演奏してたから(笑)、まあなんとか上手くいったかなって思います。

コナン:僕らもたまに、1曲を延々と伸ばすような事もしてるよ。最近はやってないけど。その時、どのくらい自分が酔っ払っているかによって尺が変わるっていう(笑)。30分くらいやった事もあるかな。お客さんは退屈だったかも知れないけど。

─これは完全に僕の個人的な話なんですが、オウガとコナンがツーマンをやると聞いて、まず頭に浮かんだのは「豪雨」なんです(笑)。オウガは去年、日比谷野音でゲリラ豪雨の中ライブをやり続けました。コナンは僕、去年の「デザート・デイズ」で観るのを楽しみにしていたのですが、突然の落雷により中止になってしまいましたよね?

コナン:ああ、あの時ね! 僕は雷が大嫌いだから、中止になって本当よかったよ……(笑)。だって怖いじゃん! あの日の夜も、遠くの方からものすごい雨雲が近づいてきて。「やりたくないなあ」ってテンションだだ下がりだったから、「中止」って聞いて本当にホッとした。すぐ控え室のあるトレーラーに避難したよ。もちろん、来てくれたファンには申し訳なかったけど。

「デザート・デイズ」に出演するのはあれが2回目だったんだけどさ、スタッフがみんなLSDやらマジック・マッシュルームやらでキマりまくってて(笑)。帰り、そのトレーラーまで車を運転してくれる人がずっと会場の周りをグルグル回ってて、歩いて帰れる距離だったのに一向に到着しなくて本当に参ったよ。

─オウガの雨の野音もすごかったですよね。

出戸:雷も鳴ってましたしね。怖かった(笑)。とはいえ、もう演奏始まっちゃってたから逃げるわけにもいかないし……。

コナン:嫌だよね、雷は。特に日本はゲリラ豪雨があるから大変だ。でも、それがいい演出にもなったんじゃない?

出戸:それはよく言われるんですけど、逆に雨のことしか言われないから「なんだかなあ」って(笑)。

Translated by Kana Tsuji

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