自己啓発団体「ネクセウム」指導者の裁判で明らかになった究極の性支配

ハジャール検事補は、ラニエール被告が組織を立ち上げたのは、自分の性的欲望を満たし、被害者たちに究極の支配力を行使するためだったと主張した。「彼は被害者のスケジュール、食事、外出先や交際相手などを管理していました」。また、女性メンバーの身体に入れられた焼印の写真を陪審に見せた。医療用レーザーペンで施された焼印は、入会の儀式の一つとして行われていたとみられる。検事補いわく、当時メンバーたちは焼印がラニエール被告のイニシャルから取ったものだとは知らなかった。

ハジャール検事補は、ラニエール被告が一部の女性メンバーの卑猥な写真を「何百も」保管していたことを明らかにした。写真はパソコンに保存されていた。「これらの写真は、組織内での強制と支配の道具になりました」と検事補は述べた。

被告側の冒頭陳述で、ラニエール被告の主任弁護士を務めるマーク・アニフォロ氏は、検察が列挙した事実の要点については異議を唱えず、むしろ陪審に向かって、被告の行動の裏にある動機に注目するよう訴えた。「私は最後の最後まで、彼の意思を弁護します。息絶えるまで、彼の善意を擁護するつもりです」

アニフォロ弁護士は、ラニエール被告がネクセウム組織内の女性たち性行為を重ねたという主張には反論しなかった。彼いわく、陪審が「『道徳的に間違っている』と考えるのは当然です……ですが、それは罪ではありません」。アニフォロ弁護士は、被告がメキシコ人一家の三姉妹と肉体関係を持ったとする検察の主張にも反論しなかった。ただし、被告が少女を無理やり監禁したという主張には異を唱え、少女はいつでも外に出られる状態だったと主張した。また、少女に与えられた罰は他の男性と関係を持ったからではなく、彼女がネクセウム運営事務所で働いていた際に会社の金を盗んだからだと主張した。

女性メンバーの卑猥な写真に関しては、メンバーが自分の行動に「自己責任」を持ち、各自の目標達成のための手段であると述べ、それらは実際には一度も公開されなかったことを付け加えた。彼女たちが本人の意思に反して焼印を入れられたとする主張にも反論し、「スポーツ選手や友愛会の会員」にも焼印を入れている人はいると述べた。

なによりもアニフォロ弁護士が陪審に訴えたのは、ネクセウムの元メンバーの視点で判断してほしい、ということだった。彼女たちは後日召喚され、ラニエール被告に不利な証言をすることになっているが、その中には組織で楽しい時間を過ごしたと言う者もいるだろう。この先証拠として提示されるメールやショートメッセージの中で、「こうした証人の多くが、ネクセウムは素晴らしい、ためになると言っています」とアニフォロ弁護士。さらに1万7000人近い人々がネクセウムのセミナーを受講した事実は、自己啓発組織が害を及ぼすどころか、益をもたらしていた何よりの証拠だと指摘し、「あらゆる形で成功を収めた人々」が受講していたと付け加えた。「彼らが受講したのは、そこから何かを得られるからです」

この主張を強調すべく、彼は古典小説『アラバマ物語』からの一節を引用した。彼は陪審に共感を求め、この先登場する証言をラニエール被告の視点から検討してほしいと訴えた。


Translated by Akiko Kato

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