[ALEXANDROS]川上洋平の信念 「世界一のロックスターになる」という途方もない夢

[ALEXANDROS]川上洋平(Photo by OGATA for Rolling Stone Japan)

[ALEXANDROS]のロックには決まった方程式がない。ラフなところもあれば緻密なところもあるし、ザラついたところもあれば艶やかなところもある。軽やかに弾んだかと思えば、重厚な響きを放つ。「洋楽への憧れから音楽を始めた」と川上洋平(Vo, Gt)が語るように、多彩なバンド・サウンドの背景にあるのは「世界中の人に[ALEXANDROS]のロックを聴いてもらいたい!」という外に向けた衝動だ。その一方、彼らはバンドである以前に4人の“音楽仲間”である。この4人にしか生み出せない特別な空気感があり、それがバンドの核にもなっているはず。2018年11月21日にリリースされた最新アルバム『Sleepless in Brooklyn』は、[ALEXANDROS]海外進出の狼煙となる強烈な一枚であり、まさしく“心機一転”の作品となった。果たして彼らが立つ現在地点からは、どんな景色が見えるのだろうか?

※この記事は2018年9月25日に発売されたRolling Stone Japan vol.04に掲載されたものです。

川上洋平、
ロックのスタンダードを更新するリアリスト

「世界的なロックスターになりたい」――[ALEXANDROS]の川上洋平はバンド結成以来、このともすると虚勢にすら聞こえかねない途方もない夢を掲げ続けてきた。しかし、彼が瞳を輝かせながら語り・創り・奏でる音楽が2018年の今、時代にこれだけ求められるのはロックンロールの幻想、ロマンチシズムへの憧憬というような甘ったるい理由がすべてではない。約20年以上という、人一人の人生に置き換えても、決して少なくないまとまった時間を表現活動に注ぎ込み、着実に淡々と歩みを紡いできた[ALEXANDROS]の音楽を人々は切実に希求している。暗く澱んだ海の向こう側、微かに、しかし確かに輝く灯台の光にも似た心のともし火のように。

2018年秋、[ALEXANDROS]は2年ぶりのニューアルバムをリリースし、海外での活動を本格化させる。今回、ニューヨークでレコーディングを敢行し、ほぼすべて現地で書かれたという収録曲は世界基準のロックンロールの最新型でありながら、どこかオリエンタルで日本的な情緒も湛えた先鋭さとポップネスが同居する傑作である。だが、もはや聞き飽きた感もあるが、ロックンロールは不遇の時代である。ロックが音楽ジャンルの中でもカウンターとしての位置に再びある今、彼らは「世界的なロックスター」という失われた楽園に本気でたどり着けるのだろうか。知性と野性を兼ね備え、理想主義を掲げ現実主義を実践する、孤高にして異端の存在――[ALEXANDROS]・川上洋平、彼こそが世界を本当に変えるのかもしれない。

ーまず、2018年8月16日にZOZOマリンスタジアムで行われた「VIP PARTY 2018」について伺いたいんですけど、初のスタジアム・ワンマンだったわけじゃないですか? でも、驚くほど、皆さん、ステージ上で落ち着いていたように見えて。以前にイベントなどでプレイしたことのある会場とはいえど、バンドとしては記念碑的なライブだったと思うんですよね。

もちろん興奮みたいなものはありましたけど、4曲目の「She’s Very」を演奏しているときぐらいに、「あ、俺たち、まだまだ道の途中なんだ」ってことに気づいたんですよね。ヒロ(磯部)が「東京ドームとか、もっとデカいところでやりたいですね」とかMCで妙に冷静に語ってましたけど(笑)。スタジアムで今この瞬間やってるって感慨を、この先に何かが待っているっていう気持ちのほうが追い越していったんです。


Photo by 河本悠貴

ーセットリストは、インディーズ時代から今に至るまでのバンドの歴史を振り返っていくような内容でした。必然的に新曲群がライブのクライマックスで披露される構成になっていましたよね。

正直、ちょっとだけ不安だったんですけどね。「ワタリドリ」を披露したときと同じぐらい新曲の「LAST MINUTE」で自然に歓声が沸いたので、安心しました(笑)。セットリストに関しては、今の[ALEXANDROS]のファンの人たちの中には、僕らが[Champagne]ってバンドだったことや、ましてやインディーズ時代のことなんて知らない人も多いので、今のタイミングでやっぱり僕たちが歩んできた歴史を知ってほしいなって思いを込めて組んでみました。ここから新しい未来を描くためにも。

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