[ALEXANDROS]川上洋平の信念 「世界一のロックスターになる」という途方もない夢


日本のバンドなんだし、完全に海外に寄せてもツマんない

ーそういう日本的な部分は敢えて「封印」していたと過去のインタビューでおっしゃっていましたよね。


海外という環境に身を置くことによって、自分の得意とするところがわかってきたんです。「LAST MINUTE」が、そのきっかけですね。あの曲は英語詞でずっと進めていたんですよ。ザ・ウィークエンドとかマイケル・ジャクソンっぽいメロディでR&Bとかソウルのノリに近い感じだった。でも、最後の最後に日本語詞の方が合うかもと思って、書き直したんです。活きのいい曲を作ってやろうと意気込みすぎて背伸びしていたことに気づいた(笑)。

ー「VIP PARTY 2018」では、新曲の歌詞をスクリーンに投影していましたよね。あれって、今までなかったことなんじゃないかと。正直、驚きました。しかも、英語ではなく、日本語詞だけ。

初めてですね。単純に今の歳になって歌詞を聴いてほしいんだ、読んでほしいんだって思うようになったんですよね。一番時間かけてるし(笑)。日本語ってロックに合わないとか、メロディに乗せると英語で歌うのには敵わないって言われてますけど、字面にすると美しいし、一語一語のインパクトは英語よりもあるんじゃないかな、と思うんです。先ほど挙げた日本のアーティストの皆さんのように、メロディの譜割は少ないながらも、そのインパクトが活きている楽曲の作り方にはずっと憧れていて、自分もそういうロックンロールをやりたいなと。

ーでも、海外、特にアメリカは英語で歌われていない音楽に対して厳しいですよね。PSYの「江南スタイル」はヒットしましたけど、基本的に音やリリックに中毒性があって、アーティストのキャラクターも奇抜で……ってものじゃないとウケない。

英語詞よりも日本語詞を受け入れてくれる土壌っていうのもアメリカではあると思うんですよ。ある種のオリエンタリズムへの憧れというか。そういう部分をオリジナリティとして出しつつ、甘んずるところなく英語詞で真っ正面から挑戦していきたいなという思いもあって。活動していればいいバランスが見えてくる感じがするんですよね。日本のバンドなんだし、完全に海外に寄せてもツマんないよなって思うし。逆に「日本人です!」って過度にアピールするのも、それはそれでめちゃくちゃダサい。


Photo by OGATA for Rolling Stone Japan

ー先ほどの自分たちの「強み」の話につながってきますね。日本のバンドとして海外で活動していく上での指針がレコーディングを通して徐々に見えてきたんでしょうか。


そうですね。実際に海外の音楽文化に生でどっぷり触れたことによって見えてきたものがたくさんあったんですよね。以前は勝手にアメリカって国とかニューヨークって街は「人種のるつぼ」って言われるぐらいだし、いろんなものの垣根が取っ払われた場所だと思ってたんですよ。例えば、コンサートに行ったら人種のダイバーシティは様々だけど、みんな一つの音楽で盛り上がっているというようなイメージを持っていた。でも、実際は全然違う。サグいヒップホップのライブに行ったら、アフリカン・アメリカンの人たちが多かったし、イマジン・ドラゴンとかクイーンみたいなロックンロールのショーだと、やっぱり白人の人が多い。ってことは……。

ー自分たち海外でライブをやればアジア人が多くなることも、想像がつくということでしょうか?

そうなってもおかしくないし、現実を見るならその可能性のほうが高いと思うべきで。実際、日本のバンドがアメリカでライブをやると必ず「日本人ばっかりだった」って話が出てくるじゃないですか。昔は「絶対、俺らはそんな風なバンドにはなりたくない!」って思ってましたけど、やっぱり冷静に考えてみると、それも現実なんだよなって思って。究極的なことを言うと音楽って、地域密着型のカルチャーであるとも言えるから、本当は海外進出なんかせずに、自分たちの身の回りの人たちに楽しんでもらえればいいんじゃないかって思ったりもするんです……でも、やっぱり、洋楽への憧れから音楽を始めているので、世界中の人に聴いてもらいたいって思いは捨てられないんですよね。とは言いつつ頭でっかちでも仕方ないですから。とりあえず「これが俺らが作った最高にカッコいいサウンドだから」って聴いてもらうところから始まるのかな、と。

ー「日本のバンドが海外で活動をする」ということの意味合いもこの数年で変わりましたし。常識を[ALEXANDROS]が変える可能性は十分ありますよね。

確かに、それに日本の洋楽をめぐる国内の状況も大分、変わりましたからね。懺悔みたいになっちゃいますけど、僕らの1stシングルの「city」って実は当時流行っていたいわゆる「邦ロック」というものを思いっきり揶揄して作った曲なんです(笑)。「今、日本で流行ってるバンドって、こんな感じのサウンドで、こんな感じの歌詞だよね」っていう。10年ぐらい前の俺みたいないわゆる「洋楽厨」は当時の日本のロック・シーンに対して、そういうスノッブな見方をしていた。それぐらい洋楽のリスナーと邦楽のリスナーの間の分断は深かったわけですよ

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