キング・クリムゾン50周年記者会見で明らかになった15の事実

13.フリップはキング・クリムゾンの美学をとことん守ろうとしている。

キング・クリムゾンは長年の活動の中で、さまざまな分派を生んでいる。新旧メンバーによるフリップ抜きのクリムゾン分家が、違う名前でキング・クリムゾンの楽曲をプレイしてきた。フリップがそれらの活動に協力することも多い。例えばマクドナルド、ジャイルズ、そして後にクリムゾンへ加入するジャクスジクらが結成した21stセンチュリー・スキッツォイド・バンドの名付け親は、フリップだ。しかしフリップが、スティック・メン(現メンバーのトニー・レヴィンとパット・マステロットのバンド)とエイドリアン・ブリュー・パワー・トリオによるCrimson ProjeKCtツアーに対する不快感を露わにしたのは、この日の最も印象的なシーンのひとつだった。フリップは、2014年3月にロンドンのシェパーズ・ブッシュ・エンパイアで行われた彼らのライブを観に行った。「とてもエキサイティングだった」と感じ「『スキッツォイド・マン』を求めてジャンプし叫ぼうとしていた」というが、その気持ちもやがて冷めた。

「スティック・メンとエイドリアン・ブリュー・パワー・トリオの素晴らしいメンバーがプレイするキング・クリムゾンの楽曲は、音符の羅列であり、音楽ではなかった」とフリップは言う。「言い換えれば、キング・クリムゾンは建物を離れなかったということ。キング・クリムゾンは建物に入りすらしていなかった。私は怒りを感じた」と彼は、全く笑えない状況に対する怒りに歯ぎしりし、繰り返す。「私は怒った」

「そして私は、キング・クリムゾンの曲は二度とプレイしたくないと思いながらシェパーズ・ブッシュ・エンパイアを出た。酷かった。2組のトリオは素晴らしかったがキング・クリムゾンとは何の繋がりもなかった」と彼は証言する。もちろん彼はその後、クリムゾンを再び始めることになる。しかし「厳しい選択だった。なぜなら私は本当に打ちのめされたから」という。



14.フリップとレスター・バングスの素直でウィットに富んだやり取り。

フリップによる“素直な耳”キャンペーンと併せ、彼は2019年を、バンドに対する“誤解された見方”を蹴散らし訂正するチャンスと捉えている。ここで前出の「プログレッシブ・ロックの池に浮かぶ藻が皆をがっかりさせようとしている」のフレーズが飛び出す。この日フリップは、メディアによる容赦ないさまざまな描写を分類した。彼は、1971年のアルバム『アイランズ』に対するCreem誌に掲載されたレスター・バングスによるレヴューを引き合いに出す。フリップによると、バングスはインストゥルメンタル室内音楽「かもめの歌」について「ヴァギナ用消臭剤のコマーシャル曲のようだ」と評価したという。当然、会場は爆笑した。「私はそれに対して個人的に不快感を示したことはない」と彼は言う。「いつ聞いても面白い。他の人にも彼のコメントを楽しんでほしい」

フリップはまた、ブライアン・イーノがプロデュースし、フリップがゲスト参加したトーキング・ヘッズのアルバム『フィア・オブ・ミュージック』のセッション中にバングスと会った時のことも話した。バングスはコントロールルームの外でフリップにコメントを求めた。バングスはフリップに「私はあなたの作品をとても気に入っているが、キング・クリムゾンでの作品は全く好きになれなかった」と言ったという。フリップはバングスを“尊敬できる人”と表現し、「その批評家に対し悪意は抱いていない」と再度強調した。フリップには後日、皮肉をこめて反撃するチャンスがあったという。「その後ほどなくしてレスターのバンドで歌う機会があり、彼と実際に会った。本当に酷かった。その後彼と少し話したが、彼も気づいていたと思う」

15.完璧主義者だと評判のフリップは、ミスも大好き。

キング・クリムゾンの根幹をなす特徴である、「正確さと自然さという一見相反するものをどのようにバランス取るか」という質問が投げかけられた。フリップは、キング・クリムゾンに関する限り「正確さは“相対的な言葉”だ」と指摘する。彼はジャクスジクがバンドに加わった時のことを例に挙げた。彼はよくミスをしていると思う一方で、フリップ曰く「ロバートは負けた」という。「個人的に、私は優れたミュージシャンがミスしても気にならない。むしろ大好きだ」と彼は続けた。「なぜなら、例えば2000人のオーディエンスの前でミスをした時に対応するミュージシャンの本質を見ているのだから。おそらくオーディエンスの大半は、ミュージシャン本人よりも楽曲をよく知っている。」

実際の例として彼は、2017年に行ったニュージャージーでのライブを挙げた。曲のある箇所でベースのトニー・レヴィンが2拍早く入ってしまった。プレイしていたのは2000年の壮大な曲「ザ・コンストラクション・オブ・ライト」で、各メンバーが違うタイミングでプレイしていたという致命的なミスだった。同ライブの録音を聴き返したフリップは、この時のパフォーマンスは、これはこれで不思議な魅力があると感じた。「時折発生するメンバー同士のリエンゲージメントのようなもの。『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』の学ぶところの多いバージョンは、無料で視聴できるようにした」

Translated by Smokva Tokyo

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