キング・クリムゾン50周年記者会見で明らかになった15の事実

8.間もなく公開されるキング・クリムゾンのドキュメンタリーには“プログレッシブ・ロックの修道女”も登場する

フリップによる長い2つのセッションの合間に、監督のトビー・エイミスがドキュメンタリー『Cosmic F*Kc』から数本のビデオクリップを紹介した。同映画は、フリップとシングルトンが管理するバンドの独立レーベルDGMもサポートしている。しかしこの日エイミスは、よくあるお決まりのロックドキュメンタリーにする気は全くなかったことを強調した。同映画には、ライブパフォーマンスやインタビューを惜しみなく収録しているという。この日エイミスが紹介したビデオクリップの中には、同ドキュメンタリーのために特別に行った現在のラインナップによるプライベートコンサートの模様や、エイドリアン・ブリューやビル・ブルーフォードらかつてのメンバーによる裏話などがあった。また、ヨーロッパツアー中に撮影された、夜の閑散とした街を襲った暴風雨の幻想的なシーンも紹介された。

最も魅力的で意外だったプレヴュークリップは、オスロ在住のドミニコ会修道女シスター・ダナ・ベネディクタのインタビューだった。たまたまキング・クリムゾンの大ファンとなった彼女はチャペルの中で、バンドの音楽が彼女に与えた影響の大きさについて語っている。「『レッド』に収録された『スターレス』などの曲を聴いた時、自分の中にある別の一面に気づかされたのです」と彼女は証言する。エイミスはビデオを上映した後で「彼女は“プログレッシブ・ロックの修道女”として有名だ」と解説。さらに彼は、シンガー&ギタリストのジャッコ・ジャクスジクがあるライブ中に、オーディエンスの中にいた彼女の胸に何か白く光るものを見つけたエピソードも紹介した。当初ジャクスジクは十字架かと思ったが、よく見るとそれはバックステージパスだったという。



9.フリップは公の場で自分の頭脳の一部を披露した。

フリップはプレゼンテーションの冒頭の方で、参加者の多くの方が自分よりもキング・クリムゾンについて知っているだろう、と認めている。実際に参加者の中には何人かの熱狂的なファンもいた。中でも突出していたのはジャーナリストとして経験豊かなシド・スミスだった。彼は2001年に本格的なバイオグラフィー『In the Court of King Crimson』を執筆し、2019年には内容を増強・更新した改訂版が予定されている。彼はバンドの各リイシューにも貢献している。フリップ自身も言う通り、彼の頭の中にあるクリムゾンの歴史に関して「詳細を語るのを止める許可を自分に与えた」という。つまり、過去のエピソードにまつわる日付を思い出さねばならない時、例えば、「ウェットン、クロス、ブルーフォードのメンバーによる最後のライブはいつか」とか「ニューヨークのセントラルパークでライブを行った日はいつか」、「ヘンドリックスと会った日は」などの日付について、「シド、いつだっけ?」とフリップはその都度彼に尋ねた。それに対しスミスは、即座に正確な日付を答えていた。

10.フリップはかつて、デヴィッド・ボウイのツアーハットを空港のトイレに忘れたことがある。

質疑応答の時間にフリップは質問者を無作為に指名したが、1985年から開講しているギター教室Guitar Craftのセッションに参加する受講者を選ぶ際も、よく同じ方法を採用しているという。ある年に彼らが使ったハットがどれほど貴重なコレクターズアイテムだったかを振り返った。元々のハットは、フリップのコラボレーターだったデヴィッド・ボウイが1983年に行ったシリアス・ムーンライト・ツアーのドイツ公演時にかぶっていたものだった。Guitar Craftのスタッフのひとりがデヴィッド・ボウイの同ツアーで警備の仕事に就いていた関係で、記念品としてボウイのハットをもらった。その後スタッフはそのハットをフリップに譲り渡した。ただ新たなオーナーは、そう長くハットを持っていられなかった。「イングランドへかぶって帰ったが、ヒースロー空港のトイレで脱いでそのまま置き忘れてしまった」とフリップは明かす。「だから全く知らない誰かがどこかで、eBayなんかで高く売れるアイテムを手にしているんだ」

Translated by Smokva Tokyo

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