キング・クリムゾン50周年記者会見で明らかになった15の事実

6.初期の音楽的影響を受けたのはスコティ・ムーアとデューク・エリントン。

自分の過去を振り返りながらフリップは、彼と姉のパトリシアが小さな頃に一緒に誕生日を祝ったエピソードを語った。姉は4月生まれでフリップは5月だが、「私たちは年に2回プレゼントをもらっていた」という。フリップの11歳を祝う“2度の”誕生日の内の1回で、姉弟はエルヴィス・プレスリーの「冷たくしないで」とトミー・スティールの「Rock With the Caveman」の2枚のシングル盤をプレゼントされた。当時のフリップはギタリストを目指している訳ではなかったが、エルヴィスのレコードが彼をギターへと向かわせた。「エルヴィスのギタリストがスコティ・ムーアだった」とフリップは深く息をついて力説する。「グルーヴからエネルギーが湧き出てくる。強い信念とパワーに、純粋なセクシャリティのようなものを経験した」

また、フリップにとってもうひとつの大きな出来事が、イングランドのボーンマスで1965年2月に行われたデューク・エリントンのコンサートだった。「つい最近考えてみたが、デューク・エリントンに関して明らかな2つの事実がある。ひとつは、18歳の私にとってデュークはとても年上の人間だったこと。もうひとつは彼が黒人であること。そのどちらも私には関係なかった。デュークはあらゆる民族や階級を超越していたし、デュークは若かった。それは驚くべきことだった。キング・クリムゾンをデューク・エリントン&ザ・オーケストラと同じレベルに並べようとは思わないが、若者には、作品の作られた時代と関係なくキング・クリムゾンの音楽を聴きに来てほしいと思っている。私にとってのデュークと同様、彼らにとってひとつのきっかけになってほしい」

7.ジミ・ヘンドリックスと会った夜のことを振り返ると今も興奮する。

フリップは、自らが「マイ・ヘンドリックス・ストーリー」と呼ぶ話を何度も語ってきた。ストーリーのショートバージョンを紹介すると、1969年、キング・クリムゾンがライブを行っていたロンドンのメイフェア地区にあるレヴォリューションクラブに、ジミ・ヘンドリックスが姿を表したということ。最初のセットが終了した後、白いスーツに身を包み右腕を包帯で吊ったヘンドリックスが楽屋に入ってきた。フリップに歩み寄ったヘンドリックスは「左手で握手してくれ。そっちの方が俺のハートに近いから」と言ったという。フリップが当時のエピソードを紹介する際、“彼は光を放っていた”“彼は輝いていた”といった多彩な表現を使うが、この日はさらに珍しい事が起こった。“俺のハートに近い”というくだりでフリップは目を突然潤ませ、残りのエピソードを話すあいだ、涙をこらえていたように見えたのだ。

さらにフリップは、同夜のもうひとつのエピソードも再び披露した。フリップはステージ上でスツールに腰掛けてプレイするが、そうするようになったのはレヴォリューションクラブでのライブが最初だった。フリップの考えを耳にした当時のベーシスト兼シンガーのグレッグ・レイクは「座らない方がいい。ステージ上のキノコみたいに見える」と、当時のフリップのふわふわしたヘアスタイルとともに揶揄したという。そのあと、「多くのカルチャーで“キノコ”と言えば男のシンボルだ、ということは黙っていたけどね」と真面目な顔でフリップが言うと、この日2度目の爆笑に包まれた。


Translated by Smokva Tokyo

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