はしかの大流行で、サイエントロジー教会所有のクルーズ船が検疫対象に

サイエントロジー教会所有の商船Freewinds号 幹部信者が修練施設として使用しているとの噂も。(Photo by Arnold Drapkin/ZUMAPRESS)

米サイエントロジー教会が所有するクルーザー船Freewinds号が、はしかの感染が確認されたため、カリブ海のセントルシア島で検疫を受けたと報道された。

セントルシア島の医療当局を統括するマーレン・フレデリックス-ジェイムズ博士によると、現地時間4月30日にセントルシア側ははしかの感染が確認されたとの報告を受けた。セントルシア国内外の医療機関と協議した結果、「感染者のみならず、他の乗船客からも感染が広がる危険があるため、万が一を考えて下船を許可しないことに決定いたしました」と、博士は二か国語のビデオ・メッセージで述べた。その後セントルシア島民には、出国の際にワクチン接種証明書を提示するよう勧告した。



ビデオ・メッセージの中で、フレデリックス-ジェイムズ博士はどの船が検疫を受けたかについては言及していないが、のちにセントルシア沿岸警備隊の隊員の1人がMSNBCの取材に対し、はしかに感染したのは、カリブ外海を航行していたサイエントロジー教会所有の船、Freewinds号の女性乗組員だったと認めた。教会のオフィシャルサイトによるとFreewinds号は、幹部信者にスピリチュアル・カウンセリングを行う全長440フィートの船。サイエントロジー教会でもっとも著名な信者、トム・クルーズの42歳の誕生日パーティが行われたことで特に有名だ。

「サイエントロジーの信者にとって、Freewinds号に乗船することは、精神に深く分け入る旅の頂点となります」とサイトに書かれている。「何年ものトレーニングやオーディティングによって、この究極の頂点に到達します。それは人生における最も重要な精神的達成であり、自己の不滅性に対する完全な認識をもたらします」

サイエントロジー教会からは検疫に関する公式声明は出ていない。ローリングストーン誌がコメントを求めたものの、教会の代表者から返答は得られなかった。

子どもの病気の代表格として知られるはしかは感染率が高く、発熱、咳、鼻水、のどの痛みといった症状の後、視認できる赤い発疹が全身に現れる。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、1963年に初めてワクチンが導入される以前、アメリカでは毎年3~400万人がはしかに感染し、4~500人が感染から重度の合併症を起こして死亡したという。

はしかワクチンが開発され、2000年にCDCはアメリカ国内でのはしか絶滅を宣言したものの、ワクチン接種率が減少したことで、アメリカ各地ではしかが急激に猛威を振るっている。ごく最近では、ニューヨーク州ロックランド郡でもはしかが大流行。ここは正統派ユダヤ教徒が多く暮らすエリアで、信者の大半がワクチンに反対している。大勢の医療施設の職員が、最近のはしか流行はいわゆる「反ワクチン派(anti-vaxxer)」に原因があるとみている。彼らはワクチンが体に害を及ぼすと吹聴しているが、徹底した研究によって事実無根であることが指摘されている。FacebookやPinterestといったソーシャルメディアは昨今の状況を受けて、反ワクチン的なコメントを検閲、または禁止する措置を取っている。

サイエントロジー教会はワクチンに関して正式な立場を表明していないが、オフィシャルサイトによると、信者は資格のある医師の治療を受けてはならない、という教えはしていない。とはいえ、カースティ・アレイやジェナ・エルフマンといった敬虔な有名信者らは公然と、ワクチン接種義務化に反対の声をあげている。

Translated by Akiko Kato

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