テイラー・スウィフト新曲から考察する「先行シングル」の出し方

テイラー・スウィフトとパニック!アット・ザ・ディスコのブレンドン・ユーリーがデュエットした新曲「ME!」(Photo by TAS Rights Management)

アメリカ時間25日の真夜中、テイラー・スウィフトは公式に『レピュテーション』時代を封印し、新たな時代へと突入した。テイラーにとって7作目のメタモルフォーゼともいえる新曲「ME!」が公開されたのだ。

これはパニック!アット・ザ・ディスコのブレンドン・ユーリーとのデュエット曲で、ミュージック・ビデオには目まぐるしいほど多くの要素が盛り込まれている。パステルカラー、虹、フランス語のセリフ、壁にかかった額入りのディキシー・チックスの写真、コラース部分の足元で存在感を放つゴーゴーブーツ。

古めかしいのにポップで陽気、インタールードがしゃべり言葉で(「hey kids, spelling is fun!(子どもたち、スペリングは楽しいよ!の意)」)、仲間内でしか通じない冗談満載……なミュージック・ビデオは、これこそがスウィフトの「先行シングル」というカードの標準仕様である。



ただ、スウィフトの新作において最初のシングルはアルバムの一つの側面しか示していない、ということを忘れてはいけない。アルバム『スピーク・ナウ』のシングル「イノセント」(2010年のMTVビデオ・ミュージック・アワードで初公開)、『レッド』の「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」、『1989』の「シェイク・イット・オフ〜気にしてなんかいられないっ!!」、『レピュテーション』の「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ〜私にこんなマネ、させるなんて」に共通していることは、全曲とも収録されているアルバムの音楽とはかけ離れている点だ。どのシングルもスウィフトのパブリック・イメージをメインテーマにしている。つまりスウィフト個人ではなく、セレブとしての彼女を描いているわけだ。

その中でも「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ〜私にこんなマネ、させるなんて」を見てみよう。このシングルを聴いた誰もが、『レピュテーション』は全曲セレブの陰の側面を描いた楽曲になるだろうと予想した。しかし実際は収録曲15曲中2曲だけ。その他はまったく違うタイプの曲だった。



議論の余地はあるかもしれないが、ファンの目をくらますという点でこのシングルは効果を発揮したと言える。この曲がもたらした本来の『レピュテーション』とは異なるイメージは、このアルバムがラブソングを収録した作品だと(かなり明確に)公表された後も、ファンの頭から消えないほど強烈だった。

一方、今回のシングル「ME!」はかなり陽気なイメージだが、「I know that I went psycho on the phone(「電話でキレたって知ってるわ」の意)」のようにスウィフト自身のイメージをからかうような部分もある。

Translated by Miki Nakayama

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