ローリングストーン誌が発売当初に酷評した名アルバム10選

クイーン 『Jazz(ジャズ)』(1979年)
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ある批評家が特定のバンドを極端に過小評価しているように思えることもある。デイヴ・マーシュとクイーンの場合がそうだった。マーシュのレビューから数年後、バンドのアルバム『Jazz』は『ローリングストーン・アルバムガイド』で、今回は“ファシスト”呼ばわりされることもなく、もう少しましな評価を受けた。

デイヴ・マーシュによるオリジナル:ジャズ或いはクイーンの名が汚されるのではないか、とやきもきさせられた両方のファンに念のため言っておくと、クイーンのニューアルバムのどこにも“ジャズ”は見当たらない。クイーンには、ジャズをプレイしようというイメージはない。さらに言うと、クイーンにはロックンロールをプレイしようというイメージもない。アルバム『Jazz』は、このブリティッシュ・スーパーグループによる過去の作品の単調で退屈な寄せ集め以上の何ものでもない。ありふれたヘヴィメタルのタイトなギター、ベース、ドラムに、ややクラシック寄りのピアノ、ザ・フォー・フレッシュメンをファンキーにしたような四声合唱のハーモニー、そしてフレディ・マーキュリーによる喉を引っ掻くようなリードヴォーカル…(中略)何と言おうがクイーンは楽しませるつもりはない。同グループは、誰が上に立ち誰が下位かをはっきりさせようとしてきた。代表作の「We Will Rock You(ウィ・ウィル・ロック・ユー)」でも「お前らは俺たちの心を動かせないだろう。俺たちがお前らを感動させてやる」という態度だ。とにかくクイーンは、本物のファシストによる初のロックバンドなのかもしれない。なぜ皆がこんな気味の悪さや汚らわしい考えを許しているのか、私には全くわからない。

マーク・コールマンによる改訂版:2つ星『ローリングストーン・アルバムガイド』(2004年)
アルバム『Jazz』から衰退が始まる。しかし即席オペレッタ「Bicycle Race(バイシクル・レース)」を含む同作品も、それ以外は完全なジャイヴだ。

ニルヴァーナ 『Nevermind(ネヴァーマインド)』(1991年)
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アイラ・ロビンスによる『Nevermind』に対する3つ星評価は、ローリングストーン誌の1990年代における最も悪名高いレビューかもしれない。しかし今になって読み返してみると、ロビンスが同アルバムを本当に満喫していたのは明らかだ。内容は4つ星のレビューのようである。彼はニルヴァーナの影響力を正当に理解し、時代のコンテキストに沿ってバンドを評価した。この取るに足らないアルバムがその後の世界を変えることになろうとは、彼には知る由もなかっただろう。

アイラ・ロビンスによるオリジナル:ダイナミックにミックスされた歪んだパワーコード、熱狂的なエネルギー、抑制したサウンドで、ニルヴァーナはがっちりとしたメロディ構造を組み上げている。ザ・リプレイスメンツ、ピクシーズ、ソニック・ユース等のバンドに代表される口ずさみたいハードロックだ。ニルヴァーナの場合はさらに、熱狂的なシャウトと破壊的なギターで攻撃してくる。(中略)準備不足のままレコーディングに力を浪費するアンダーグランドのバンドがあまりに多い。そして、苦労の多いツアーでエネルギーやインスピレーションを使い果たしてしまう。『Nevermind』でニルヴァーナは岐路に立った。ガレージ国の向こう意気の強い戦士たちは、巨人の国を目指している。

チャールズ・M・ヤングによる改訂版:5つ星『ローリングストーン・アルバムガイド』(2004年)
注目すべきは、15年前にヒットしたボストンの「More Than a Feeling(宇宙の彼方へ)」にも見られる断続的なコード進行。ニルヴァーナは、トレードマークであるラウド&ソフトのダイナミックとダークかつシュールなムードでそれを完全に変換した。詩人エズラ・パウンドの戦闘準備司令にコバーンは新たな解釈を加えた。トーキング・ヘッズの言うことに従い、コバーンは道理を通すのを止めた。さらに彼は、彼の疎外感を共有する人々に完全に理解させようとする努力を止めた。映画『理由なき反抗』におけるジェームズ・ディーン、「Subterranean Homesick Blues」を歌ったボブ・ディラン、「Summertime Blues」のエディ・コクラン、「Pretty Vacant」のジョニー・ロットンらを全員ひとまとめにし、ボサボサの金髪で美しい目をしたひとりの少年に押し込んだような感じだ。「mulatto」、「albino」、「mosquito」、「libido」などの言葉の意味に少しでも疑問があれば、MTV史上最も魅惑的な3分間のビデオがある。ラストではハイスクールの壮行会が地獄の様相を呈している。ストレス障害を経験した多くの人々が、すぐに共感を覚えた。アルバムの他の部分は容赦ないモンスターリフと恐るべきイメージの連続で、それを実現するのは間違いなくレッド・ツェッペリン以来となるロックにおける最高のリズムセクションだ。

Translated by Smokva Tokyo

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