ローリングストーン誌が発売当初に酷評した名アルバム10選

ボブ・ディラン 『Blood on the Tracks(血の轍)』(1975年)
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“ニュー・ディラン”と称されたブルース・スプリングスティーンと仕事を始めた頃、ジョン・ランドーは“オールド・ディラン”の最新アルバムを聴いたが、気に入らなかった。ローリングストーン誌に掲載された問題あるレビューが改訂されるまでに数十年を要することも、時にはある。しかし本アルバムの場合、全く同じタイミングで異なる2つのレビューが掲載された。ジョナサン・コットによるレビューの方は、かなりポジティブなものだった。

ジョン・ランドーのバージョン:ディランの極端な世界観の中にどっちつかずの場所があるとすれば、私は『Blood on the Tracks』をそこに位置付ける。『Blonde on Blonde(ブロンド・オン・ブロンド)』以来のヒットアルバムだが、前作品には程遠い。「Forever Young」のセカンドヴァージョンほど酷い楽曲が収録されていないにしろ、「Tangled Up in Blue(ブルーにこんがらがって)」だけが「One of Us Must Know (Sooner or Later)(スーナー・オア・レイター)」に匹敵する作品だ。そもそもニューアルバム『Blood on the Tracks』を『Blonde on Blonde』と比較するということは、人々が同アルバムを『Blonde』同様に深く、長く愛することを意味するのかと言えば、そうではないだろう。

ジョナサン・コットのバージョン(ランドーのレビューと同時掲載):
『Blood on the Tracks』ほど、ディランの存在感が大きく感動的な作品はない。どんな雰囲気の曲でも、ディランは曲に合わせた豊かで、優しく、悩ましく、時には怒りに満ちた歌を聴かせる。(中略)クリーンできらめく非人間的なサウンドが完璧に、ディランによる光り輝く素晴らしいハーモニカ、マンドリン、ギターのプレイと、美しくつなぎ合わされた熱い歌詞とを機能的に支えている。彼の歌詞の持つパワーは、「Tangled Up in Blue」にも歌われている13世紀の詩のようだ。「ひとつひとつの言葉が真実に聞こえた/そして燃える石炭のように真っ赤に輝いた/1ページ1ページから流れ出る/まるで俺の魂に書きつけられているように/俺から君へ/ブルーにこんがらがって」

AC/DC 『High Voltage』(1976年)
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1976年当時、生意気そうなオーストラリアのグループによる「She’s Got Balls」などという曲を含むニューアルバムをデスクの上に放り投げられた時のことを想像してみて欲しい。しかもメンバーのひとりは、気の狂った小学生のような格好をしている。まさかそのグループが、2人のアイコン的なリードシンガーを失った後もなおスタジアムを満杯にできるような史上最高クラスのハードロックバンドに成長しようとは、その時点で想像もできなかっただろう。誰もがきっと、ビリー・アルトマンのような見方をするに違いない。

ビリー・アルトマンによるオリジナル:ハードロックの将来を心配する者は、オーストラリアから来た不快王の集団による米国での初リリースアルバムが、ハードロック界で紛れもない史上最低記録を打ち立てているニュースに安堵することだろう。状況はここから良い方向にしか向かわない(少なくとも私はそう信じている)。ビーニー帽に半ズボンという小学生の格好でライヴに登場し、いやらしい目つきで威嚇するリードギタリスト(アンガス・ヤング)を擁するAC/DCに対し、音楽的にコメントすることは何もない(何も考えずに弾けるスリーコードに乗せて2人のギタリスト、ベース、ドラムがグースステップを踏んでいる)。歌詞的に見ると、彼らの世界は全て「I」で始まり「me」や「mine」で終わる。リードシンガーのボン・スコットは、本当にイライラする攻撃性をもって歌を吐き出している。毎晩セックスできるスターになることだけを目指す唯一の方法なのだろうと思う。本アルバムでは全体を通じてそんなことがテーマになっている。バカバカしい。計画的な愚行に怒りを覚える。

デヴィッド・フリッケによる改訂版:2つ星『ローリングストーン・レコードガイド』(1983年)
オーストリアで結成されたブギーバンドがアルバム『High Voltage』(オーストラリアでリリースされた2枚のアルバムのコンピレーション)で米国にデビューして以降、痛烈で時には中傷するようなレビューがつきまとってきた。しかしどの批評家も知らないことを、このヘヴィメタルキッズは理解している。スコットランド出身の頑強なギター使いであるアンガスとマルコムのヤング兄弟率いるAC/DCは、ロックンロール・パーティサンダーにほかならない。リフ&リズムの戦車隊が現実離れした110デシベルを発射し、小学生の制服に身を包んだ狂犬のような目つきのアンガスが汗まみれになって跳ね回る。そしてオリジナルシンガーのボン・スコットが挑発的な唸り声を上げている。

Translated by Smokva Tokyo

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