ダニエル役の俳優が語る、80年代人気映画『ベスト・キッド』の知られざる秘話

ーところで、ご存知かどうかわかりませんが、80年代にギターをプレイしていた人間にとって映画『クロスロード』(1986年/同作でマッチオは天才ギタリスト役を演じた)は大きな存在なんですよ。

だよね。ローリングストーン誌だもんな!

ーそう、まさに。あの指使いをマスターするために、ギターを相当練習したんでしょうね?

そうなんだ。どうすればそう見えるかをマスターした。でも、あの音が出せたかって? そう上手くはいかないんだな。今でもあのテレキャスターは持ってるよ。すごくカッコいいギターだよね。あのギター欲しさに、とんでもないオファーをしてくるミュージシャンもいたな。『ベスト・キッド』で使われた47年型フォードのコンバーチブルも持ってて、今のドラマにも登場するよ。



ーギターと空手、どっちもダメなんですね?

達人レベルまでは行ってない。シーズン2ではいくつか対決シーンがあって、その中で1~2本かなりいいキックが出てくるけど、あれは全部僕がやっている。

ー『クロスロード』の撮影で一番思い出に残っていることは何ですか?

ギターバトルのシーンかな。映画のラストシーンで、生まれて初めて観客を入れての撮影だった。アシスタントディレクターがみんなを盛り上げてて、いよいよお待ちかねの人物の登場ですよ、悪魔の登場です、とか言ってた。カメラ5台で、ノーカットで撮影したんだ。僕にとっては、夢のロックスターになったような気分だった。でも実際には、「メリーさんの羊」すら弾けなかったんだ!

ー最後の質問です。映画『いとこのビニー』(1992年)を見た後、あの映画でのあなたの実力が、派手な笑いのパフォーマンスに埋もれて過小評価されていると感じずにはいられませんでした。

あの2人(ジョー・ペシ&マリア・トメイ)の役には相当気を配らないとね。でないと、笑えるネタも本来の半分も面白くなくなってしまう。人を引き付ける重力というか、魅力を失ってしまうんだ。あれは見るたびに面白くなる映画だね。『いとこのビニー』のすごいところは、仕込んだものがすべて見事に笑いにつながったところ。しかも、想定以上にね。来るな、とわかっていても、さらに面白くなる。僕はあの映画を「ちょっと遅めの夕食ムービー」って呼んでるんだ。いったん見始めると止まらなくなるから、晩御飯を食べるのがつい遅くなるだろ。もう1シーン、もう1シーンだけ、ってね。

『アウトサイダー』にしても『クロスロード』にしても『ベスト・キッド』にしてもそうさ。あの短い期間に、時を超えてもなお記憶に残り、いまも見てもらえる映画があるなんて。そんなことはそうそうあるもんじゃない。僕は幸運だよ。


YouTubeプレミアムのドラマ『コブラ会』でダニエル・ラルーソーを演じるラルフ・マッチオ。(Photo by Guy D’Alema/YouTube/Sony Pictures Television)

Translated by Akiko Kato

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