ドイツの偽令嬢、裁判の最終弁論でやり取りされた「方便」と「詐欺」の意味

最終弁論がいよいよ最高潮に達し、スポデック弁護士は元ヴァニティ・フェア誌のフォトエディターで、デルヴィー被告との関係を手記にしたレイチェル・デローチ・ウィリアムズ氏を、欲深い日和見主義者として描き出そうとした。先週デローチ・ウィリアムズ氏は目に涙を浮かべながら、被告が支払うと約束していたモロッコ旅行の旅費として6万ドル以上を騙しとられた経緯を法廷で語った。「ソロキンさんはしかるべき場所に、しかるべき知り合いがいました。そしてウィリアムズさんは、ソロキンさんの人生に加わりたかった……それからほどなく、ウィリアムズさんはソロキンさんの金で華々しい生活を謳歌しました」

スポデック弁護士はデローチ・ウィリアムズ氏の涙の証言を「オスカーもののパフォーマンス」と表現し、ウィリアムズ氏が被告との関係についての暴露本の出版契約をSimon & Schuster社と結んだこと、かつヴァニティ・フェア誌に掲載した手記の二次使用権をHBOに売ったことを挙げ、あらゆる機会を利用して友情を食い物にしている何よりの証拠だと述べた。「彼女は作家になりたがっていました。そしてびっくり仰天、何が起きたと思います? 処女作がヴァニティ・フェア誌に掲載されたのです」と言ってスポデック弁護士は、彼女が「目の前のあらゆる機会を利用した」ことを指摘した。

公判を通じてスポデック氏の弁護方針は、デルヴィー被告がシティ・ナショナル・バンクやフォートレス・インベストメント・グループから融資を受けるところまで至らなかったのだから、窃盗未遂では無罪だという事実を主なよりどころとしていた。「未遂の原則にしたがうなら、アナは犯罪すれすれの行動に出なくてはなりません」と、彼は先日ローリングストーン誌との取材で語った。「私の見解では、彼女がどんな行動をとったにせよ、罪を犯すところまでは至りませんでした。手続きの過程で次々と問題が生じたからです」

だが、検察側の最終弁論でキャサリン・マッキー検事はこうした弁論に反論し、デルヴィー被告が融資申請で提出した偽造書類こそが「あらゆる手段を講じて罪を犯そうとしていた」証拠だと指摘した。

マッキー検事は陪審員に全体をまとめたパワーポイントのプレゼンテーションを見せ、偽造パスポート、偽造免許書、偽造銀行残高証明書、偽造取引明細書など、デルヴィー被告融資申請の際に残した文書を順に説明していった。マッキー検事は、必死になったデルヴィー被告が融資申請の過程を早めようと送ったメールにもふれ、こう言った。「もし彼女がこの融資を受けるのは無理だと思ったなら、なぜ何度も何度もトライしたのでしょう?」

またマッキー検事は、銀行員とのメールのスレッドにもしばしば登場する「会計士」用に、デルヴィー被告が偽造メールドレスを作成しようとした際のGoogle検索の結果を陪審に見せた。架空の会計士「ベティナ・ワーグナー」のメールアドレスを作成しようとしたデルヴィー被告は、「追跡不能な偽造メールを送る」「実在しないメールが返送されないようにする」といった検索ワードでGoogleを検索していた。さらに被告はHushedというアプリを使って、偽の番号からフォートレス・インベストメント・グループに「会計士」のふりをして電話をかけたとみられる。「被告は考えたのでしょう――本気で信じていたんでしょうね――こうした手順を積み重ねていけば、難関を突破して融資を得られ、まんまと犯罪をやり遂げることができるだろうと」とマッキー検事。

Translated by Akiko Kato

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