絆がスーパーパワーの源、『アベンジャーズ/エンドゲーム』映画評(ネタバレ無し)

『アベンジャーズ/エンドゲーム』より(© Marvel Studios 2019)

サノスは私の沈黙を必要とした。だからもしネタバレが欲しいのだったら、このページから抜け出してほしい。

ルッソ兄弟の監督作『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、作品累計190億ドルもの興行収入を誇る人気シリーズの完結編として、素晴らしいエンディングを迎える。我々のハートを銃で撃ち抜くようなエモーショナルな瞬間もあるし、2008年の『アイアンマン』からスタートした22本のMCU映画の中で、『アベンジャーズ/エンドゲーム』には個人的な想いを重ねてしまう。心を奪われるような絆こそが、スーパーパワーになるのだ。

2018年の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では、サノス(一流の俳優ジョシュ・ブローリンは、CGで合成されたこの悪役にあり得ないほどのサイズ感を与えている)が、この地球上にいる半分の生物を破滅に追い込んだ。そしてオリジナル・アベンジャーズのメンバーで残ったのは、たった6人。ソー(クリス・ヘムズワース)、トニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)、ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、クリント・バートン/ホークアイ (ジェレミー・レナー)、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、そしてブルース・バナー/ハルク(マーク・ラファロ)のみ。さらにジェームズ・ローズ/ウォーマシン(ドン・チードル)、ロケット・ラクーン(声はブラッドリー・クーパーによるもの)、キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)、そしてスーパーヴィランの義理の娘でありながら心を入れ替えたネビュラ(カレン・ギラン)の姿もある。

彼ら自身もその運命を受け入れている、不可能と思しきミッションは、多くの死と破滅を招いたサノスに復讐をし、究極の支配を司る6つのインフィニティ・ストーンを取り戻すこと。そして秩序を回復する道を見つけることだ。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では、ルッソ兄弟の手により、ストーリーは衝撃的な展開を迎えた。悪が信じる道を貫き、愛されたキャラクター達が灰となってしまったからだ。『アベンジャーズ/エンドゲーム』においては、脚本家のクリストファー・マーカスとスティーヴン・マクフィーリーを始め、製作者達は、誰が死に、誰が生き残るのか、ファンには全く予想のつかない展開を紡いでいる。

映画は凄まじいアクションが炸裂し、クライマックスに向かって最高潮に達して行くのだが、物語の冒頭は意外と静かに動き始める。前作でサノスが指を鳴らしたことによって、地球の人口の半分は灰となり、それによってアベンジャーたちは全員が傷を負うことになるのだ。

その一方、キャプテン・アメリカがユニフォームのボディラインについてからかわれたりするように、ルッソ兄弟は意図して、随所にクスリと笑えるシーンを挟み込んでいる。そしてマーク・ラファロとクリス・ヘムズワースはキャラクターを犠牲にせず、一番の笑いを手にした。ロバート・ダウニー・Jrは、スターク特有の皮肉な態度を抑えることで、より豊かな人間味を与えている。

何人かのキャラクターは彼らが手にいれるべきものを手中にするが、何人かはただの傍観者だ。また、労せず大きな瞬間を目の当たりにしているキャラクターがいるのも気になる。

とはいえ、そんなことはどうだっていい。この長いお別れは、あなたの感情を揺り動かすはずだ。変革をもたらした『ブラックパンサー』のような存在にはなりえないだろうし、アカデミー作品賞にノミネートされることもないかもしれない。しかし、だからなんだ? 観客はアクションに興奮し、スリルを味わい、ドラマに笑い泣く。そして誰しもが、これが最後だと信じはしないだろう。

Translated by Leyna Shibuya

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