セルフスタイリングで被っていたハット
ーああ、そうなんだ。トレードマークだったとも言えるハットとかも自分で用意してたんですか?
野田:そう。そういう意味ではこだわりがあったんだろうね(笑)。自分に似合う服は少ない気がしていて。だから、スタイリストに服を持ってこられるとほんとに“着せられてる感”があって。せめて自分に似合う服をと思って探してたら、「面白い服の着方をするね」って言ってもらえるようになって。たとえば「おしゃかしゃま」のMVでCOMME des GARCONSのスカートとかNUMBER(N)INEのニットとかを着てるんだけど。そういう服のチョイスを面白がってもらえたり。
ーさっきも言いましたけど、ハットが洋次郎くんのトレードマークになっていたところがあるじゃないですか。
野田:そうそう。俺の真似をする人もだいたいハットを被っておけばなんとかなると思ってる感じがちょっとある(笑)。でも、俺自身はハットを被らなくなってからけっこう時間が経つんですけどね。最近は撮影のときもだいたい帽子はかぶらないようになりましたね。プライベートではキャップを被ることが多くて。
ーでも、なんでハットをチョイスしたんですかね?
野田:なんか恥ずかしかったんじゃないかな? 素顔をさらけ出すのが。内気な性格だったし、あんまり人と目を合わせて話すことができなかったから。それもあって。だから期せずしてハットが自分のアイコンになったのが面白いなと思って。当時は意外とハットキャラがいなかったと思うし。
ーたしかに。そこから自分のマインドがどんどん開かれていった結果、ハットを脱いだところもあると思いますか?
野田:ああ、そうかもしれない。
ープライベートで付き合いのあるファッション関係の友人は人が人を呼んでいくように繋がっていったんですか?
野田:自然とかな。ただ、俺はアートワークにも自分で積極的に関わってるじゃないですか。そういうのもあって、アートディレクターの永戸鉄也さんとか、いろんな写真家の方とか、MV監督とか、俺にとってすごく影響を受ける世代があって。今の年齢で言うと、なぜか43、44歳くらいの人たちとすごく仲よくなる傾向があるんですよ。そのちょっと上の先輩が盾さんの世代で。で、盾さんのさらに上の世代にHYSTERIC GLAMOURのノブ(北村信彦)さんとか、スタイリストの馬場(圭介)さんとかがいて。その人たちとご飯を食べたり遊んだりしていると、俺が一番後輩になるじゃないですか。その後輩感によって好き勝手やれるという居心地のよさがあるんですよ。自分が若造でいられるというか(笑)。
ー安心感がある。
野田:ある。やっぱり俺は末っ子気質なんだなって思いますね。だからバンドにいるときはちゃんとしないといけないから大変(笑)。
ー先輩たちといると背負ってるものを一回おろせるような感覚があるんですかね?
野田:そう。すごくかわいがってもらえるから楽しいし、知らないことをいっぱい知ってるから勉強にもなるし。
ークリエイティヴにおいて刺激を受けることもたくさんあるだろうし。
野田:めっちゃありますね。不思議なのはどのジャンルでどんなことをやってる人でもみんな音楽に対する特別な思いがそれぞれにあるんですよ。音楽へのリスペクトと、音楽への憧れをクリエイティヴのモチベーションにして表現している。音楽の影響力って大きいんだなと思います。
ーたとえばファッションブランドのコレクションのテーマがグランジだったり、そういうことは往々にしてあって。
野田:そうそう。盾さんも絶対に音楽にインスパイアされてるって言うし、HYSTERIC GLAMOURなんてまさにブランドのテーマがずっと音楽そのものというか。他の友達のファッションブランドも基本的にはやっぱり音楽からの影響があって。そうやってファッションを通して音楽を知るというのも面白いなと思いますね。
ーあとは、コレクションで流れてる音楽が気になったりもするだろうし。
野田:うん。sulvamという友達のブランドは今年のパリコリでillionの曲を使いたいって言うから「いいよ」って言って使ってもらったんです。俺も会場にいたんだけど、ずっと俺の曲が流れてるから不思議だなって思いながら(笑)。「ほんとにこれでいいのかな?」って。
ーillionはそうやって実際にファッションのフィールドとナチュラルにリンクしてるじゃないですか。そこでちょうど洋次郎くんに聞きたいことがあって。とにかく日本のバンド音楽、それを取り巻くシーンってファッションやその他のカルチャーと断絶してるじゃないですか。ガラパゴスの中のさらにガラパゴスみたいな。
野田:うん、そうだよね。
ー洋次郎くんはそのあたりをどう思ってるのかなって気になる。
野田:それはけっこう根深い問題ではあるよね。まずファッションとリンクしていく音楽というのは日本語に対する抵抗感がすごくあると思うんですよ。
ー間違いないと思います。
野田:そこは難しい問題だと思う。海外でも“J-ROCK”という括られ方をしているし、実際にアジアに行くと“J-ROCKバンド、RADWIMPS”って紹介されたりするのは不思議な感覚で。でも、俺はその暗黙の空気感をどう突破して崩していこうかなという面白さを今は感じでいるんですね。