ケイジ・ジ・エレファント、プレイリスト時代に勝ち取ったロックンロールの未来

ケイジ・ジ・エレファント(Courtesy of ソニーミュージック)

マット・シュルツ率いる米ケンタッキー州出身のロック・バンド、ケイジ・ジ・エレファントが通算5作目となるニューアルバム『Social Cues』を発表した。ベックとのコラボレーションも話題の本作について、荒野政寿(「クロスビート」元編集長/シンコーミュージック書籍編集部)に解説してもらった。

2009年のフジロック、2011年のサマーソニックと2度来日を果たしているケイジ・ジ・エレファントだが、単独での来日が実現しないこともあってか、日本での知名度は本国ほど上がらないままの状況が続いており、実にもどかしい。彼らが日本でデビューした2009年は2000年代初頭からのガレージ・ロック・リバイバルもすっかり落ち着き、無頼なロックンロールを鳴らすギター・バンドにとって生きにくい時代に入っていた。追い風がない中でのデビューだった、と記憶している。

このバンドにとって最大の武器は、ストゥージズやマッドハニーに憧れていたというシンガー=マット・シュルツの、後先など考えない爆発的なパフォーマンスにある。ボディ・ランゲージよろしく身をよじり、やたらとジャンプし、踊り狂いながら歌うマットは、日本の舞踏もパフォーマンスに取り入れているそうだ。2009年のフジロックでは完全燃焼とまでいかなかったが、2011年のサマソニではマットが3回も客席へ突入、熱狂するオーディエンスの頭上を満足気な表情で泳いでいく勇姿が忘れられない。

ひと度ステージに立つとワイルドなフロントマンに変貌するマットだが、オフステージでは意外と謙虚で屈託がない、極めてフレンドリーな男。2011年にドラマーのジャレド・チャンピオンが急病で倒れた際、助っ人としての参加を大先輩のデイヴ・グロールが買って出たのも、周りから好かれるマットの人柄があってこそ、と思う。




彼らが所属するマネージメント会社、Qプライムのピーター・メンチ(AC/DC、メタリカ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ等と組んできた敏腕マネージャー)は、最近musicweek.comのインタビューでケイジ・ジ・エレファントと出会った際の衝撃を改めて振り返り、「マット・シュルツは僕のミック・ジャガー」と手放しでベタ褒めした。それが大袈裟に思えないほどライブ・アクトとしての実力は群を抜いており、決定代となるヒットさえ出ればいつでもトップクラスに躍進できるはず…というポジションに長いこといる。

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