Amazon Music、ひっそりと無料版をスタート

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AmazonがAlexaユーザー限定の広告付き無料音楽ストリーミングサービスを開始した。

米Amazonの無料音楽ストリーミングサービスが米国でスタートした。それなのに、世界的大企業Amazonは大々的な宣伝活動を一切行っていない。今回の広告付き無料音楽ストリーミングサービスは、米現地時間4月18日にAmazonのスマートスピーカーEchoに搭載された音声コントロール技術Alexaを介してひっそりと開始されたのだ。これこそまさに、Amazonが無料音楽配信においてSpotifyの強烈なライバルとして立ちはだかるのではなく、自社開発ソフト&ハードウェアによる製品ラインナップを拡大させるのに興味を持っている証拠だ。

「Amazon Musicの開始によって、お客様は声というシンプルな魔法を使って音楽を斬新かつ楽しい方法でリクエストできるようになりました」と同社は米現地時間4月18日木曜日にブログ投稿し、音楽と音声という発想のつながりを強調した。「そして本日より、まだAmazon Primeの会員になっていない、あるいはAmazon Music Unlimitedに加入していない米国のお客様も、Alexaを搭載したデバイスでAmazon Musicの様々な人気プレイリストとステーションが広告付きのサービスを通して無料でお楽しみいただけます」。

米Amazonの創業者およびCEOのジェフ・ベゾス氏がまもなく無料の音楽ストリーミングサービスを開始するかもしれない、という噂が数日前から広まると、多くの人々はすでに飽和状態の音楽ストリーミング業界に強力な新ライバルが登場すると予測し、その結果としてSpotifyの株価が下がる事態にまでなった。しかし、サービス名さえない、今回のAlexaユーザー限定の控えめなサービスの開始には、単なるEchoデバイスの販売促進と広告収入という狙いしか見出せない。

メディアおよびテクノロジーの分析を専門とする英MIDia Research社のアナリスト、マーク・マリガン氏は、今回のような新製品はハイテク広告と収入に対するAmazonの高まりつつある野心と呼応している、とブログに投稿した。「Amazonをめぐる噂に対してSpotifyの投資家たちが落ち着かない気持ちでいたのは当然である。でも、今回の件はFacebookの投資家たちがもっと注目しなければいけないことだ」とマリガン氏は指摘しながらAmazonの広告ビジネスがこの2年間において29億ドルから101億ドルへと成長してきた事実を強調した(Facebookは2018年に500億ドルの収益を得た)。

米金融ニュースメディアMarketWatchのアナリスト、ラス・クルップニック氏はAmazonの新しい無料サービスが音楽業界の「大きな変化の発端」とはならないだろう、と米ヴァラエティ誌に語った。「既存のサービスには多少の影響を与えるかもしれません。Spotifyは忠実なリスナーをたくさん抱えていますし、タダだから、という理由だけで人々がAmazonに殺到するとは考えにくいのです」とクルップニック氏は言った。「Amazonのオーディエンスはもっとカジュアルです。人数は多いのですが、Amazon というプラットフォームで過ごす時間はずっと少なく、音楽とのつながりも比較的希薄です」。

Alexaユーザー限定の無料サービスのほかにも、同社はAmazon Musicより広告なしのプレミアムサービスを提供している。プライム会員になって200万曲が楽しめるこのサービスには、月額780円で6500万曲が聴き放題のAmazon Music Unlimitedも含まれている。


Translated by Shoko Natori

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