オピオイドを過剰に処方していた医師や看護師ほか、60名が逮捕される

アメリカでは、オピオイド危機で何十万人もの命が失われている。(Photo by Education Images/UIG/Getty Images)

アメリカ時間17日、7つの州で医療関係者を対象にした一斉捜査の一環で、医師、看護師、薬剤師合わせて60名が逮捕された。彼らは時に驚くほど破廉恥な状況で、患者に不法にオピオイドを処方していた。当局は、「一度の捜査としては史上最大規模の、処方オピオイドに関する刑事捜査」と呼んだ。

シンシナティ裁判所で公開された起訴状によると、医師31名、薬剤師7名、看護師8名がおよそ35万件のオピオイド処方箋をむやみやたらに出していたとして起訴された。そのうち何人かは空白の処方せん用紙をばらまいたり、中にはFaccebook上で処方せんを提供していた者もいた。容疑は規制薬物の不法分布から、健康詐欺共謀罪にまで及ぶ。

おそらく今回の起訴でもっとも衝撃的だったのは、性行為と引き換えに薬物を提供したとして起訴されている医療関係者の人数だ。ある医師は自分の診療所を「お楽しみ部屋」と呼び、定期的に「売春婦や若い女性を呼び寄せて性的関係を持ち」、命の危険となりうる処方薬を提供していた疑いがもたれている。またテネシー州の診療看護師は、性的行為と引き換えに何十万錠ものオピオイドを処方していたとみられる。

今回の起訴は、アパラチア地域処方オピオイド対策本部による何カ月にもわたる捜査のたまもの。捜査はこの地域の高いオピオイド処方率を取り締まる目的で行われた。逮捕された医療関係者の多くは、テネシー州、オハイオ州、ケンタッキー州、ペンシルヴェニア州、ウェストヴァージニア州など、アパラチア地域の州に勤務していた(アラバマ州やルイジアナ州からも逮捕者が出た)。

中央アパラチア地域はオピオイド危機が最も深刻な地域のひとつ。なかでもウェストヴァージニア州は全米でもとくにオピオイドの過剰摂取率が高く、中毒者の割合が全米平均が10万人中14.7人なのに対し、ウェストヴァージニア州は10万人中35.5人にのぼっている。

アメリカでは、オピオイド危機で何十万人もの命が失われている。米国国立薬害研究所(NIDA)が公開しているデータによると、2017年のオピオイド過剰摂取による死亡者数は4万7000人。オキシコンチンを製造するPurdue製薬を所有するサクラー一族をはじめ、製薬会社は現在どこも訴訟に巻き込まれ、中毒性があると知っていながらオキシコドンの処方を医師に勧めていたとして、非難の矢面に立たされている。

Translated by Akiko Kato

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