証拠がなくても一斉捜査、米警察当局が性労働者を狙う理由

米フロリダ州ジュピターのスパ「Orchids of Asia」(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

今年2月、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の覇者、ニューイングランド・ペイトリオッツのオーナー、ロバート・クラフト氏が買春容疑で逮捕・起訴された。フロリダ州のマッサージ店で性的行為に及んだとされるクラフト氏。事件は、フロリダ州のマッサージ店に対し、約半年にわたる人身売買の調査の中で明らかになった。

先週金曜日、州検察は起訴を取り下げ、捜査対象のひとつであるフロリダ州ジュピターのスパ「Orchids of Asia」で人身売買が行われていた証拠はないと、法廷審問で認めた。

この日おこなわれたのは、クラフト氏が写っているスパの監視カメラ映像の公開差し止め請求に関する審問会。クラフト氏の弁護士は、警察は人身売買の証拠がないとわかっていたにも関わらず、スパに隠しカメラを設置したと主張した。また、フロリダ警察がマッサージ店への隠しカメラを設置するために判事を誘導して令状を取ったとし、令状は憲法違反だと主張した。

グレッグ・クリドス州検事捕はこの主張に異論を唱え、スパには人身売買の「証拠が揃っており」、令状請求が正当であった証拠はあったと主張した。だが、スパの女性従業員が自らの意思に反して勤めていたことを示す十分な証拠がなかったことも認めた。「人身売買で起訴される者は誰もおりません。今回の捜査から、人身売買の事実は浮かび上がりませんでした」と検事補。

この発言は、2月にクラフト氏逮捕の第一報が報じられた際のフロリダ警察のコメントとはまったく対照的だ。記者会見で逮捕が発表された際、デイヴ・アーロンバーグ州検事は人身売買を「我々の中に潜む悪魔」と表現した。捜査対象のひとつ「Orchids of Asia」では女性たちが買春行為をおこなっているとみられ、しかも自らの意思に反して働かされていると述べた。「人身売買は、金儲けのために他人の自由を奪う行為です」と、アーロンバーグ検事。「どこで起きていてもおかしくない。フロリダ州ジュピターのような平和なエリアでもです」。 だがアーロンバーグ検事はまた、検挙者には人身売買の嫌疑はかけられていないと述べたものの、後日あらためて起訴される可能性をほのめかした。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE