デビュー40周年のASKA、「万里の河」をめぐる出会いのストーリー

―改めて、デビュー40周年ということで、デビュー当時の話も聞かせてください。

ASKA:はい。1979年8月25日がCHAGE and ASKAのレコードデビューの日です。

―当日のこと、覚えていますか?

ASKA:覚えていますね。札幌にいたんですよ、その日。それで、すすきのの小さなレコードショップに入って、本当に自分のデビュー曲「ひとり咲き」のEPレコードがあるかどうかを確かめたんです。所謂“えさ箱”の中に4、5枚あるのを見て、デビューしたんだなって実感はそこで沸きましたね。僕らはヤマハからデビューしたんですけど、当時はヤマハのパワーがすごくて、そのヤマハが総力を挙げて宣伝してくれたんですよ。異例のデビューですよね。それで発売直後は10何位までは行ったんだけど続かなくて、75、76位になったんです。そしたら突然『夜のヒットスタジオ』から連絡があって、来週番組に出演出来ると。『夜のヒットスタジオ』って月曜の夜10時からの1時間番組だったんだけど、ものすごい視聴率で、ヒットチャート50位以内に入っていないと出られないというルールのようなものがありましたからね。でも、俺達70位代なわけで……何が起こったんだろうと思って。レコード会社もビックリしているわけ(笑)。

―ええ(笑)。

ASKA:で、当日、当時のプロデューサーが「初めまして。よろしくお願いします」ってことで、リハに臨みました。デビュー間もない新人でしたが、なんと4分半のTVサイズをもらいました。新人で4分半はどう考えても異例。そして歌った直後に「フルサイズの譜面はないのか?」と。「ありますが、持って来ていません」と、当時のレコード会社の担当が答えると、「取ってこい!」と。慌ててそれを取りに帰りましたね。リハーサルはTVサイズでやったんですけど、ランスルーは急遽フルサイズでやったんです。で、本番。歌う僕らに雪がバンバン降るわの(笑)、すごい演出で。なぜ「ひとり咲き」で雪なのか分からなかったけど、とに角、新人で初出演でフルサイズの5分半。それで、翌日からレコードが一気に動き始めた。そこで初めて全国区になったんです。で、何でそのことが起きたかというと吉田拓郎さんがドタキャンしたらしく、拓郎さんが歌う予定だったのが「外は白い雪の夜」(笑)。

―それで雪だったと(笑)。

ASKA:そう(笑)。拓郎さんが1週間前にドタキャンして、5分半に合う曲はどれだって探した結果が「ひとり咲き」。あの曲、5分27秒の曲で、ほぼ尺が一緒だった。それで、じゃあチャゲアスで!って出演出来たわけです。拓郎さんがその後、「俺のドタキャンも新人のためになるんだな」って(笑)。

―(笑)。でも、先日発売になったASKAさんの散文詩詩集『ASKA書きおろし詩集』の発売を記念して行われた谷川俊太郎さんとの対談の中でも言っていましたけど、ASKAさんはデビューした時から絶対売れるっていう自信はあったんですよね?

ASKA:売れる自信はありました。僕はずっと剣道をやっていて、日体大、国士舘、専修大学など、そうそうたる大学の剣道部からお誘いを受けていました。しかし、そこは行かなかった。もう歌い始めていましたし、どこかで「剣道に縛られたくない」という気持ちがあったんですね。自衛官だった親父は何とか警察官か自衛官か教員のどれかになってほしかったみたいです。僕も子どもの頃からそうなるものだと思って生きてきたけど、ところが歌を歌い始めて、全てが変わってしまった。それで、音楽でプロになるために、東京に行くと父親を説得する時、「心配しないでくれ。必ず売れるから行かせてくれよ」って言い切った。それぐらい売れるという確信しかなかった。実際、「ひとり咲き」で名前が知られて、「万里の河」でいわゆるヒット曲の仲間入りをさせてもらいました。でも、その後は、売れるなんてことは忘れていましたね。常にスケジュールが3年先まで決まっていたから。だから自分達の活動がどこかで止まるっていう不安がなかったので、売れることを考えなくなりましたね。

―もしかしたら売れないなかもという不安は全然なかったんですか?

ASKA:それはなかったですね。売れないわけがないと思っていたので。

―それは歌に自信があったということですか?

ASKA:うーん、何だろう。子どもの頃から根拠のない自信みたいなものがあったんですよ。これはこうなる、みたいなのが自分の中にあって、で、本当にそうなってきたんです。歌をやり始めたら、売れるっていうことしか考えてなかったから、それはもう絶対に売れるだろうって。で、今になってそれをまた実践してます。あの時の気持ちをもう一回取り返して、「こうなるんだ』」っていう風に決めて、自分をコントロールしていこうと思っています。

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