野音ワンマン直前のクリトリック・リス、坂本慎太郎からの助言に対して「ボタンを押す人」オファー

坂本慎太郎と、4月20日日比谷野音でワンマンを開催するクリトリック・リス(Photo by RYUTARO SAITO)

―さっきスギムさんのブログを通して大阪シーンを知られてたっていう話が出ましたけど、それこそ音楽以外のカルチャーを坂本さんはどう捉えて、どういう気持ちで見てたのかも気になります。

坂本:ただ見ていただけですよ(笑)。

―坂本さんが作られるものは、音楽的に素晴らしいじゃないですか。それ以外のアティチュードみたいなものをどれくらい重要視されているのかなって。

坂本:あー。もちろん重要視しているんですけど、ロックだからとかパンクだからとか、そういう一言で言える感じじゃなくて。個人個人から感じるもので見ているかもしれないですね。こいつはチャラいとか、通だとか。

スギム:坂本さんは絵も描くし、トータルで表現をしようとしているじゃないですか。関西の人らは、割と音楽以外の別の部分も自分らで手を出して、トータルで自分をアピールしようとしている人は多いから、そこは共通するのかなって。

坂本:やっぱり顔とか佇まいとか、ちょっと喋った時の感触とか、そういう部分はすごく関係していると思うけど。顔が良ければいいって訳じゃなくて、いい感じの雰囲気ってあるじゃないですか? そこがおもしろくて興味を持ったり、もしくはこういうようなのは違うって思ったりと。そういうのはありますよ。

スギム:坂本さんが誰かを拒否したり受け入れないとか、そういうところは見たことがないですね。

坂本:俺は敏感に察知して、ダメだったらスッとそこからいなくなるから。

―スギムさんは活動を始める前から、ゆらゆら帝国を聴いていたわけで、こうやって対談していただけることはすごく大きい出来事なんじゃないですか?

スギム:それはもちろんそうですね。クリトリック・リスは、自分の聴いてきた音楽がアウトプットできないんですよね。10何年やっているんですけど。

坂本:例えば、どういう音楽を聴いてきたの? パンクとか?

スギム:パンクも聴いてきたし、サイケとかテクノとかも聴いてきたんですけど、それをアウトプットできないんですよ。自分でパソコンを使って曲を作っているけど、未だにコードとかも理解できていない。

坂本:いいんじゃないですか、それで。



―前、スギムさんのお家に伺ったら、壁一面CDがぶわーって並んでいて。音楽リスナーとして、本当にいろいろ聴いているんですよね。

坂本:読んだよブログで。服を買いに行ったら、革ジャンを売ってもらえなくて、その金でCD買え! って言われたって話。すごくいい話だよね。

スギム:初期パンクの服を「お前には着る資格がない」って言われて買えなかったんです笑)。中身が伴ってなかったんですね。今は作る際に音としてアウトプットができてないっていうそういうもどかしさの方。10年ギターとか弾き続けたらめちゃくちゃ上手くなると思うんですよね。

坂本:弾いてないからじゃない?

スギム:それはそうです。ギターはやろうとは思っていないですから笑)Macに入っていたフリーのガレージバンドでなんとなく作り始めたんですけど、未だにガレージバンドで、しかも使いこなせてない。

坂本:ライブが忙しすぎるんじゃない? 制作に当てる時間がない。

スギム:正直言うと、曲づくりもあまり好きじゃないんです。ライブで同じ曲を繰り返すのに飽きてきて、新しい曲が欲しいなと思ったときに作るんですよね。

坂本:家に帰らないんでしょ? ほとんど。

スギム:意外と帰っています。ほんまに自分が作らなあかんって追い込まないと作らないですね。坂本さんはどういうスタンスで作りますか? 曲作り。

坂本:最近ライブを始めちゃったから、全然作る暇がないですね。練習しなくちゃいけなくて。ライブをしてない時は全部時間を曲作りにかけられたから、結構じっくりできたけど。

―それこそイラストとかMVも作られたり、かなり制作に時間を費やされていましたけど、ライブが始まってくるとバランスがまたちょっと変わってきたと。

坂本:練習したり、アレンジを考えたりすると、作業も中断するし、1カ月間、それだけ朝から晩までやってればいいっていう状況じゃなくなってくるから。

―朝から晩まで制作できる時間っていうのは心地いい時間だったんですね。

坂本:かなり贅沢な環境だとは思います。没頭できている時は一番楽しいですよね。何も思い浮かばない時はダメだけど。

―それこそスギムさんは逆で、基本にライブがあって、アルバム制作は一気にそこで集中しましたもんね。ミックスも2ヶ月くらいかけて。

スギム:前回はメジャーに作ってもらった感があって。プロのミキサーの人や環境を与えてもらったんですけど、今回は僕自身がコントロールできる人を集めて作ったんですよ。前はガレージバンドで作ったちゃっちい音でも、プロのエンジニアさんがめちゃめちゃ抜けのいい音に仕上げてくれたんですよ。そういうのは身の丈に合うてないなと思った。前回は前回で良かったんですけど、今回はあえてローファイ宅録感を出したくって、そういうところを目指して作りましたね。

坂本:今は機材もいいから、なかなかそういうの出ないんじゃないの? 素人が作っても結構なクオリティになっちゃうんじゃない?

スギム:そうなんですよね。

坂本:昔は宅録って言ったら、もろ宅録の音だったけど、今はもうね。

スギム:録音とかミックスとか、分からんなりの強さってあるじゃないですか? シャグスみたいに、意識していないのに作り方が分からん中、みんなに愛される盤ができたみたいなところに踏み入りたいっていうか。プロの意見を敢て聞かずに自分でやれることを信じて作ろうと思ったんです。

Rolling Stone Japan 編集部

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