『ゲット・アウト』の監督が教える「悪夢」のつくりかた

ローリングストーンUS版1324号で表紙を飾ったジョーダン・ピール。(Photo by Frank Ockenfels 3 for Rolling Stone )



シャマランが送ったメッセージ

ユニバーサルのオフィスに戻り、ピールは『ゲット・アウト』の次回作における課題について語り始めた。彼の背後に立つ等身大のヴェロキラプトルの模型(アニマトロニックだが、着ぐるみのようにも見える)は、今にも動き出してうなり声を上げそうなほどリアルであり、まるでピールの空想の世界に迷い込んでしまったかのようだ。「似たような恐竜の着ぐるみを使って無防備なサラリーマンたちを驚かせるっていう、日本のドッキリ番組が最高なんだ」。彼はそう話し、ある若者が飛び上がって驚くYouTube動画を見せてくれた。彼は滅多に人前で笑わないが、このときは腹を抱えて爆笑していた。「本物だって信じてなきゃ、このリアクションは到底できないよ」

『Us』を撮るにあたって、彼はそのサラリーマンのように怯えてはいなかったが、2作目のジンクスに対する不安は感じていたという(巨大な予算がつぎ込まれた大作を撮る話もあったが、彼は全て辞退している。「時間は限られてるからね」)。「前作が絵に描いたような成功を収めただけに、次回作へのプレッシャーはひしひしと感じてた」。彼はどこか淡々とそう話す。尊敬する映画監督たちの2作目に絞って研究を重ねたという彼は、M・ナイト・シャマランの『シックス・センス』(厳密には処女作ではないが、そう捉えて差し支えないだろう)から『アンブレイカブル』への流れにとりわけ感銘を受けたという。また彼は『レザボア・ドッグス』で名を馳せたクエンティン・タランティーノが、『パルプ・フィクション』で遂げた進化についても触れていた。
 シャマラン自身もピールに共感していると語っており、『ゲット・アウト』と『スプリット』でプロデューサーを務めた共通の友人ジェイソン・ブラムを介し、彼に次のようなメッセージを送っている。「伝えたい物語をありのままに伝えればいい。外野の声に耳を傾けず、常に初心を忘れないことだ」


ピールと『ブルックリン・ナイン-ナイン』で知られる女優/コメディアンのチェルシー・ペレッティ。2人は結婚して2年になる。(Photo by Chelsea Lauren/REX/Shutterstock)

マリファナ漬けだった頃、彼はキャリアの大半を占めるであろう量のアイデアを生み出した(「ハイだった自分に感謝さ」)。最近では、『ゲット・アウト』の系譜に連なるソーシャル・スリラー作品のアイデアを4つ考えついたという。『Us』はそのひとつが元になっているが、ホラーとしての要素が濃くなるにつれてそのカテゴリーから逸脱していった。そのインスピレーションが、彼が子どもの頃に観た『トワイライト・ゾーン』のエピソード『Mirror Image』であったことは疑いない。そのエピソードでは、ある女性がバス停で自分に瓜ふたつの人間と出会い、相手が自分の人生を乗っ取るために並行世界からやってきたのだと思い込む。「恐ろしくも美しい、ものすごくエレガントなストーリーテリングなんだ」。ピールはそう話す。「視界がパッと広がるっていうのかな。すごく想像力を刺激するんだ」。彼は6カ月間に渡って脚本のアイデアを練り続け、執筆作業にさらに6カ月を費やした。『ゲット・アウト』と比べれば、同作は遥かに短い期間内に完成したことになる。

Translated by Masaaki Yoshida

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